*藤袴 -thoroughwort-*
☆次回イベント予定☆ ★2017.8.20.SCC関西23 ふじおりさくら(ゴーストハント)★
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ザァァァァァァァァ
窓を挟んでいるというのに雨の音が耳障りな程大きく聞こえる。
「はぁ....嫌になるわね」
零れた言葉は水の音に混じって誰に届くことな消えた。
憂鬱そうに窓の外を眺めるのは松崎綾子。実に稀な、本物の樹の巫女である彼女。
条件さえ揃えばその能力の素晴らしさは、かのオリヴァー・デイビス博士も認める所であ。
まぁ、彼女の場合、その条件が揃うこと自体稀なのだが.....
そんな事はさておき、ここは彼女のマンションの自室。
ベッド脇のテーブルにはワインの空き瓶が数本転がり、薄暗い部屋の中で存在を主張している。
普段ならば実に活動的な彼女の事、彼氏やら男友達やらを呼び出し食事やショッピングを楽しんでいるはずである。
しかし今日は到底そんな気分にはなれず携帯も電源を切ったまま放置している。
原因は昨晩のニュース。最近いやに増えた自然災害の情報だった。
崖崩れが起こったと.....それだけだったなら特別気にはしなかった。
しかし綾子は聞いてしまった、人ならざるものの声を....
聞きなれた優しい、優しい声にそれは酷似していて綾子の心をより深く抉った。
そう、崩れた崖の上の方には、きっちり祀られた御社があったのだ。
その地を護り慈しんできた存在が消えた。
否、大惨事にも関わらす死者が出ていないのは彼女がきっと護って下さったのだろう。
遠く、遠く離れた土地での事.......でも綾子は聞いてしまった。
自分に何が出来た訳でもない。それでも、それでも願わずにはいられない。
どうか安らかに、どうか穏やかに、どうか.....
ピンポ~ォン
綾子の思考を一気に奪い取る、間の抜けた音が響いた。
「..........誰かしら?」
今は誰にも会いたくない。
一瞬眉を顰めた綾子は訪問者を無かった事に決め込んだ。
再び波にゆたうように思考に戻った、否、戻ろうとした。
ピンポ~ォンピンポ~ォンピンポ~ォンピンポ~ォンピンポ~ォンピンポ~ォンピンポ~ォンピンポ~ォン
「.........五月蠅い!!」
額に青筋を浮かべた綾子は一直線に玄関に向かう。
一体こんな非常識なインターホンの鳴らし方をするのはどこのどいつだ!!
と、覗き窓から確認もせず勢いよくドアを開ける。
「誰よ!!こんな非常し...き......」
ドアの勢いと同じくらいの問い詰める声は途中で消えた。
目の前に佇むのは某心霊研究事務所の敏腕事務&調査員の青年。
手に持った傘から落ちる雨の雫と少し湿った服から雨足は結構激しいのだと思い至る。
「こんにちは、松崎さん」
「少年? .........何してるの?」
「最近、お顔を拝見してなかったなぁ〜と思い至り寂しくなって逢いに来ました」
「....はぁ.....悪いけど私、今日は誰とも話す気分じゃないの」
にこりと笑う安原に幽霊でも見たかの様にパチパチと瞬きを繰り返した。
やっとこ事で絞り出した言葉に返って来たふざけた物言いに綾子は大きく溜め息を吐き「じゃぁ」と扉を閉ざそうとした。
「判ってます」
先ほどまでの声音が嘘のような静かな声。
外からドアノブを掴まれ、扉はピクリとも動かない。
「何が?」
「昨日の崖崩れに巻き込まれた樹をご覧になられたのでしょう?」
質問の形は取っているが断言する声に綾子の心は震える。
「だったら何?」
「一人で、泣いてらっしゃるのかと思って」
「莫迦にしないでちょうだい」
「泣けないのでしたら、僕の胸をお貸ししますよ」
「いい加減にして!!」
「でも沈んでらっしゃるのは事実でしょう?」
叫ぶ綾子にまったく動じる事なく、安原は言葉を続ける。
まるで綾子が何を言うか予測していたかのように........
「あぁ、あと傷心な松崎さんを慰めてですね〜、少しは僕を意識して頂こうかな〜と思いまして」
「........冗談はやめて頂戴よ。私は玉の輿を狙ってるんだから」
「あれ?僕って稼ぎ悪そうに見えます?」
「.......」
再びふざけたような声の調子に戻った安原に綾子も肩の力が抜ける。
そして、にこやかに笑いながら告げられた言葉に、綾子は瞳を瞬き考える。
目の前の喰えない笑みを浮かべた少年は.....
なんというか、定職に就いていなかったとしても、どっからともなくお金を稼いできそうではある。
綾子の思考を読んだかのように自信ありげに笑う少年。
「ね?僕といればお金にも人生にも困らないと思いません?自分で言うのも何ですが、結構お買い得だと思うんですけど、僕」
にこにこにこ
一見、人畜無害そうな笑顔。しかしその裏に何かある事は今までの経験上知っている。
言葉を返さない綾子に焦れたのか、カタンっという音と共に一歩安原が玄関に踏み込む。
変わらずに浮かべられる笑みが綾子の心に限りない安堵と、少しの不安を呼び起こす。
「し、少年.....」
「僕の名前、ご存知です?」
「は?」
「僕の、名前、です」
殊更ゆっくりと区切って告げられた言葉。
目の前に居る“少年”だったはずの人は、もうずっと前に一人の青年へと成長していた。
もちろん知っていたが今更その事実を突き付けられた気分だ。
「や、安原 修...でしょ?何を今更...」
「えぇ、今更です。ですが、僕には結構大事な事です......松崎さん」
かの瞳に映りこむのは自分だけ......
伸びてきた安原の腕を綾子は振り払わなかった、否、振り払えなかった。
「僕は、ずっと貴女を見ていました」
頬を撫でる大きな手にそのまま身を委ねてしまえればどれだけ楽だろう。
「余計な事、考えてらっしゃいますね?ダメですよ。僕を捕らえたのは貴女なんですから、責任取って下さい」
言葉は何とも自己中心的だが優しく労わるように肩に触れた手と、にっこりではなくふわりと微笑んだ顔。
「逃がしませんよ」と耳元で囁く声。そのどれもが綾子をいとも簡単に絡め捕る。
動けない綾子に笑みを深めた安原は真っ直ぐと綾子を見つめ小さな声で囁いた。
「松崎さん、僕は貴女が好きです」
end
♪ Happy Birthday ♪ LSさんへ捧げる、初☆安綾です。
既に付き合ってる甘々な2人が想像できなかったので、安原の告白(越後屋風味/笑)
な話になりました。どうかお納め下さい^^
今、私が沢山の方と仲良くなれたのは、偏にLSさんが悪☆オンを主催下さったからです。
どんなに感謝して感謝して感謝しても伝え切れない思いでいっぱいです。
これからも宜しくお願い致します。
最近、何かとお忙しいLSさんの癒しになれば幸いです(ぺこり)
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「なー、リンさんや?」
「何でしょうか、滝川さん?」
「あの2人は付き合ってるんじゃなかったか?」
「.......そのハズ、ですが」
どこか呆れたような声で訊ねるのは滝川。
それに答えるリンの声も些か固い。
それもそのハズ、先ほどから聞こえて来る言葉の応酬の数々。
大声で叫んで怒っているのは笑顔の可愛い事務所の看板娘である谷山麻衣。対するは静かな声ながらも言っている内容は子供よりも子供っぽい自他共に認める天才博士様。
彼らが何を言い合っているか?
それはもう犬でも喰わないアレな会話な数々....本人たちに自覚の無い辺りが更に質の悪い事この上無い。
「だから!! いい加減に本読むのやめなさーーーいっ!!」
「静かにして頂けませんか?」
「叫ばせてるのは誰だーーーっ!!」
「他人に構ってらっしゃる谷山さんはお仕事お済みなんでしょうね?」
子供だ....大きな子供が居る。
まったく同じ事を思った2人は頬を引き攣らせ目を合わせると大きく溜め息を吐く。
あれでは麻衣がナルの母親のようだ。
「なぁ...いつも、あぁなのか?」
「聞かないで下さい滝川さん」
目を逸らすリンに滝川は問いの答を知った。
不憫よのぉ、娘や......滝川が麻衣を見つめる視線に同情の色が濃く浮かぶ。
「麻衣、お茶」
「休憩されない方には必要ないんじゃーありません?」
にっこりと小首を傾げながら浮かべられた麻衣の笑顔は非常に可愛い...
可愛いがそれを見た者の背筋にゾクゾクしたものが走る。
あのナルも咄嗟に言葉を返せないでいる。
「休憩、する?」
わざと区切って強調された麻衣の言葉に、大きな溜め息と共にナルは手元の本を閉じた。
「麻衣、お茶」
「はーい♪」
パタパタと機嫌良く給湯室へ向かう麻衣。
相変わらずな2人の様子に大きな溜め息と共に呆れたようにリンは呟く。
「はぁ...ナルも初めから素直に休憩すれば良いものを」
「まったくだな。どーせ麻衣にゃ〜勝てんのになぁ」
「本当に」
「そうだリン、この前良い感じの店見っけたんだけど、飲みに行かねーか?」
「辛気くせー気分取っ払おうぜ」と、いつもの飲み会兼保護者会の誘いを掛け、リンの肩を叩いた滝川。
数回、瞳を瞬いたリンは「そうですね」と同様の苦笑を零した。
そんな彼らの視線の先には、温かく穏やかな空間が広がっていた。
<おまけ>
仕事も終わり夜の銀座へと繰り出した2人。
落着いたバーのカウンターに陣取り既にかなりの酒を消費している。
「しっかし、あいつ等が俺たちの息子と娘だとするなら父親は俺?いや、リンか?」
ポツリと呟かれた言葉にグラスを傾けていたリンは盛大に咽せる。
「でも俺、麻衣産めねーしなぁ」と呟いている滝川にリンは恨めしい視線を送った。
end
月羽さん、遅くなってゴメンなさーい><
ナル麻衣?な代物になりましたがどうかお納め下さいませ。
「キライだよ、冬は....」
ポッリと呟かれた言葉。その時垣間見えた横顔がとても哀しそうだった。
「待ってよ〜、麻衣〜」
「早く! 早く!! ほらほら雪! 雪だよ、ジーン!!!」
うわぁぁぁ!!っと瞳を輝かせる麻衣をジーンは微笑ましい想いで見つめる。
白く舞落ちる雪の花の中で真っ赤なコートをひるがえすその姿は実に鮮やかで目が離せない。
先日リビングで紅茶を飲んでる時に麻衣が漏らした小さな本音。
両手で包み込むようにカップを持ち、ソファーに膝を抱えるように座り窓の外を見る少女。
ぼんやりと外を見ている彼女の意識は今ここには無い。
きっと無意識に零れてしまったのだろう言葉。
否、だからこそ本音なのだろうと思う。
雪が...否、冬がキライだと言う彼女が少しでも冬が好きになるようにという想いを込め
ルエラとマーティンが悩みに悩んでプレゼントしたその赤いコートはとても麻衣に似合っている。
本当は僕がプレゼントしたかったんだけど....
両親が麻衣へとコートを渡した瞬間、そんな想いが過ったジーンだったが、両親の優しい瞳と
それを受け取った時の麻衣の嬉しそうな顔に「まぁいいっか」と思い直した。
代わりに麻衣にそのコートを着せて一緒に遊びに行こうと連れ出した。
どうやらそれは正解だったらしい。
雪を見てはしゃぎ、笑う麻衣にジーンは安堵する。
やっぱり麻衣には笑顔が良く似合う。
ジーンは雪に向かって伸ばされていた麻衣の左手を取ると自分のコートのポケットに突っ込んだ。
「寒いね」
「うん、寒いね....」
「でもこれでちょっとマシになるかな?」
悪戯っぽく微笑むジーンに麻衣も笑う。
「麻衣」と小さく呼ぶとジーンはもう片方の手も優しく包み込むように握った。
はぁぁ息を吹きかけると白い息が2人の間に浮かんで消える。
そして今度はコツンとおデコをくっつけた。
いきなりのジーンの行動に麻衣は頬を染め、慌てておデコを離す。
「ど、ど、ど、どうしたの!?」
「べーつーにー、ふふふ。寒いしそろそろ家に帰ろっか?」
そんな麻衣の反応に笑い頬に軽いキスを贈るとジーンは踵を返した。
顔を真っ赤に染めつつ麻衣もそれに続く。
小高い丘をゆっくりと下り始めた2人に強い風が襲う。
ざざぁっと吹いた風に煽られ空一面に光る白い結晶は実に美しい。
「僕は好きだよ」
「へっっ!!?」
つないだ手をそのままに笑うジーンの突然の言葉に麻衣は素っ頓狂な声を上げる。
そんな麻衣の反応にジーンは笑って片手を麻衣の頬に伸ばす。
「冬の寒さも、一見泣き出しそうに見える空も、降り積もる冷たい雪も....麻衣と見るなら温かい」
あぁ.....アタシ、やっぱりジーンが好きだなぁ....
穏やかな水面を想わせる深く優しい瞳。
心の底から沸き上がった想いは麻衣の悲しい心も寂しいという感情をも凌駕し全てを包み込む。
降り続ける冷たい雪の中交わした未来への約束はとっても温かくて、涙が零れ落ちた。
end
遅くなり申し訳ありませんっ ><
初☆ジン麻衣であります。ふんわりほのぼのな感じになった....と思います。
どうぞお納め下さいませ^^ 若宮さんのお気に召して頂ければ幸いです。
くるくると舞うように落ちる木の葉を窓越しに眺めるのは麻衣。
冬を前にしたこの時期は、あちらこちらの木々の葉が一斉に風に攫われる。
昔なら....お母さんが死んでしまった頃なら寂しくて悲しいと感じていたこの季節もナルの隣りに居る事を
許されてからはそんな事を考えなくなった。
世間一般の優しい恋人とは違うけど温かい人だと思う。
そりゃぁ仕事に関して言えば容赦は無いし愛想はないし協調性だって無いけれど責任感は人一倍強い。
ナルが口に出して言った事は無いけど皆判ってる彼の優しさ。
些細だけど思い出しただけで微笑んじゃうくらいアタシ幸せなんだ。
ほら今だって窓際のソファから動かないアタシに手渡される温かい紅茶のカップ。
アタシの隣りに腰掛けてカップを片手に膝の上に本を開けば「聞いてやる」の合図。
こんな時「あぁ、ナルが好きだなぁ」と実感する。
人と付き合うのが苦手な不器用なナルが好きだよ。
本気で判り難い心配や気遣いしかしない人だけど、とっても大切な人なんだよ。
アナタを好きになって良かった。
外はとっても寒そうだけど心はとっても温かい。
こてんっとナルの肩に頭を預けてアタシは外の落ち葉を見る。
なんて事ない日だけれど、それが一番愛おしい。
ふふふと笑みを浮かべれば漆黒の瞳がアタシを見つめる。
「何がそんなに楽しいんだ」と呆れた声が降って来るけどそんな事、今の幸せに比べれば気にもならない。
ひとりぼっちだと思っていたアタシに居場所をくれたのはナル。
ひとりで生きていくんだと思ってたアタシに家族をくれたのはナル。
ひとりぼっちで震えていたココロを包んでくれたのはナル。
「大好き」と呟けば「知ってる」と頭を小突かれる。
うひゃぁと首を竦めるも、さっきから少しも進んでいない本のページに頬が緩む。
「ありがとう」の気持ちを篭めてとびっきりの紅茶を淹れてあげよう。
クリスマスには逢いに行こうね。
きっと素敵な笑顔で迎えてくれる、ナルの大切な人たちに。
家族の意味を教えてくれた愛しい愛しい人たちに。
アタシは伝えたい。
ナルを愛してくれてありがとう。
ナルを守ってくれてありがとう。
アタシは、ナルに出逢えて幸せですと。
end
刃月さんお誕生日おめでとうございます!!大変遅くなって申し訳ありません>x<。
約2ヶ月遅れで更に短いなんて.............返品可ですので遠慮なく仰って下さいませ。
私には最近出来た楽しみがひとつある。
毎日という訳ではないのだけれど、週に2回、運の良いときは3回ほど彼女たちを見掛ける日が訪れる。
ほら、今日も逢えた。
「ねぇねぇ、もう直ぐクリスマスだよね!」
明るくて可愛い声の彼女が隣りの青年に嬉しそうに話し掛ける。
対する彼は一目見たら忘れられないであろう麗しい顔を特に崩す事なく短い肯定を返す。
「それが?」
素っ気ない。でもこれが彼の標準的な受け答えだ。
え? なぜそんな事を知ってるかって?
ふふ。それはね私が働いているフラワーショップが交差点の歩道の直ぐ近くにあって彼女たちは
そこの信号待ちでよく店の前に止まるからなの。
それに前にうちの店で花を買ってくれた事だってあるのよ。
だから彼女の方は私と目が合うとにっこり微笑んでくれたりもするの。
彼女たちに見蕩れてた人から羨ましそうに見られたりして、ちょっと優越感。
でも普段は私はこっそり眺めているだけ。
だって私が居ない方が、彼の顔が穏やかで優しいもの。
彼女も幸せそうに笑ってて、こう見てる方が幸せな気分にさせたれるのよ。
私もいつかそんな「傍に居るだけで幸せ」って人を見付けたいな。
と、こんな無駄な事に意識を飛ばしてる場合じゃないわ。
しっかりとこの福眼な光景を目と耳に焼き付けないと。
「パーティーするんでしょ? ルエラがご馳走いっぱい作るって張り切ってたよ」
「........まぁ、今年はいつになく大量に消費してくれる方がいらっしゃるからでしょう」
「なんだとぅ!!」
「おや、お判りになりませんか? タニヤマさん?」
「態とらしく名字呼ばれるのってムカつく。性格悪ーい」
「それはどうも」
「誉めてませんー」
微笑ましい痴話ケンカに頬が緩んでしまう。
ツンと横を向いた彼女も本気で怒ってる訳じゃないし、からかっている彼の瞳もとっても優しい。
信号が変わるまでのごくごく短い時間。
彼と彼女のほんのひと時の会話しか聞いてないけれど、お互いが本当に大事なんだって判る。
向けられる視線が、伸ばされる腕が、返される笑顔が、ただ愛しいと告げている。
神様、どうかあの2人がいつまでも笑っていられるように見守って下さい。
彼女たちの瞳の奥には深い.......とっても深い悲しみが隠れているから。
それを乗り越えた2人に神の祝福を。
end
月羽さん、お誕生日おめでとうございます☆
ほのぼのナル麻衣&イレギュラーズ以外の第三者視点とのリクになってると思います(多分)
朽葉と仲良くして下さってありがとうございます。これからも宜しくお願い致します^^〃
「今度の調査内容だが...」
ナル....それ家で話さないといけない内容なの?
仮にもガールフレンドと自室にいて寛いでる時に話すべき内容じゃないよね?
僕、麻衣がちょっと不憫に思えるよ.....
ふよふよと闇の中を漂うように浮かんでいた僕に片割れの声が聞こえてきたのはつい先ほどの事。
思わず瞳を開けた先にあったのは懐かしいナルの部屋の景色。
僕は何かに引寄せられるようにその景色を覗き込んだ。
すると片割れだけだと思っていた空間に麻衣も居る事に気付いた。
ベッドに腰掛け相変わらず分厚い本を読んでいるナルの隣りで寝そべっている麻衣。
サイドテーブルの上には麻衣が淹れたのだろうまだ温かい紅茶のカップが2つ。
何て事ないその空間に僕は涙が出そうなくらい嬉しかった。
だったあのナルが自分の部屋に人をしかも女の子を入れて平気な顔してるなんて....
僕は感動したんだ。
なのに....なのに聞こえたのは冒頭のナルの言葉。
お兄ちゃんは嘆かわしい、本当に嘆かわしいよ....
今度お説教してあげるからね。
ぐっと拳を握り決意する僕に構わず2人の会話は続く.....色気の無い会話が。
「ナル」
「何だ?」
「ナッツとチョコだったらどっちが良い?」
「..........」
唐突に変わった会話の内容に僕は目を瞬かせる。
ナルも「はぁ?」って顔してるからきっと僕も同じような顔してるんだろうなぁ。
にっこり微笑む麻衣を無視してナルは手元の本に視線を戻す。
無駄な話に付き合う義理はないというナルのポーズだ。
が、その程度で諦める麻衣じゃぁない。
それくらいでないとナルの隣りになんて居られないよね。
うんうん、と僕は大きく頷きながら次に麻衣がどう出るのか楽しみに見物する。
「どっちでも良い?ならチョコにバナナとアイスを付けてあげよう♪」
にこにこにこにこ
「..........何の話しだ」
「ん?クリスマスケーキ♪ 生クリームダメでしょう? だーかーら、麻衣ちゃんお手製のケーキをだねぇ」
「いらない」
「なになに?生地には砂糖とキャラメルをたぷっり?まかせなさーい!!」
「麻衣」
「バナナだけじゃ嫌?よしよし、ではイチゴとメロンも付けちゃおう♪」
「麻衣!」
「ナッツとチョコだったらどっちが良い?」
「.....................甘くない方」
麻衣の言葉と、にこにこ笑顔にナル嫌な予感を覚えたらしい。
ひっじょーに不本意そうに訊ねるその顔に僕は吹き出してしまった。
麻衣の言葉を遮って一刀両断したのに麻衣のが上手だし。
ナル! ぼ、僕「世界初☆死んでるのに更に笑い死んじゃった幽霊」になれそうだよ!!!
あははははははははははははははは!!!!
僕は浮遊した状態だというのに、ゴロゴロと身を捩って笑い転げた。
色気はないけど、まぁ良っか。
ナル、君が幸福せなら僕も嬉しい。麻衣、君が笑っていると僕も笑顔になれる。
これはきっと僕だけじゃないよ。
君たちの周りにいる仲間だって....もちろん、ルエラだってマーティンだって幸福せになれるんだよ。
喧嘩したって良い、泣いたって良い。
君たちが隣りに居て笑っていられるのなら、それ以上の幸福せなんてないよね。
end
ハイゴ様、お待たせ致しましたー><
リクエスト頂いたナル麻衣ようやく完成致しましたのでどうかお納め下さい☆
どうぞ今度とも宜しくお願い致します♪
桜の花弁が舞い散る庭園に2つの影が落ちる
それは1組の若い男と女であった
女がまといしは紅、そして男がまといしは紫...........どちらも至極の色目
気高く咲き誇る桜に手を伸ばそうとした女の細い手を背後から男の手が包み込む
背中に寄り添った温もりに女がそっと振り返る
黒く透き通った女の瞳に吸い込まれるように男はその頬に触れる
「秀麗、愛している」
愛おしい
だたその想いだけを篭めて男は女の顔に影を落と.............そうとした
しかし、その行為は女の手によって止められた
「秀麗?」
「劉輝..........」
キョトンとした瞳で見返す男に女は微笑みを携えて名を呼ぶ
名を呼ばれた事を勝手に了承と取った男は再び女に手を伸ばした
パシっっっ
しかしその手は女によって大きく振り払われた
「いつまでも甘ったれてんじゃないわよ!!アナタ何様!?王様だったらもっとしっかりしなさいよ!!」
「しゅ、しゅう.......れ、い?」
ギンっと鋭い瞳で睨み付け啖呵を切る女に男はただ呆然と名を呼ぶ事しかできなかった
そんな男に女は更なる怒りを覚えたようだ
「何よ!言いたい事があるんならちゃんと言いなさい!!」
「い、いや!その...........」
「シャキっとしなさいシャキっと!!私、ハッキリしない人って嫌いなの!!」
女の言葉に衝撃を受けた男は、傍目に判る程に固まってしまった
しかしそんな男をものともせずに女は続ける
「大体ね、大逆転を掛けてるから春まで待てって大口叩いたクセに、その舌の根も乾かない内に後宮に入ってくれ?ザケんじゃないわよ!!そんな男、こっちから願い下げよ!!」
「しゅぅれ...........ぃ」
「まぁそれも目出たく破談よね。リオウ君に頼んで縹家に連れて行ってもらって正解だったわ!!縹家では結婚も出産も女に決定権があるそうよ、アナタと縁が切れて清々したわ!!」
ふんっと勢い良く吐き捨てた女は涙に濡れる男を放置しその場を去った
残された男はただ愛しい女の残像をいつまでも見つめているのでした
めでたしめでたし
「そ、そ、そんな話!!余は、余は信じないぞーーーー!!!!!!」
大きな叫び声をあげて寝台より飛び起きた男......もとい彩雲国の王、紫 劉輝は
月明かりに照らされた室内を見渡して安堵した
「ゆ、夢か.........」
力無く呟いて胸に手をやれば心臓がやけに大きく鼓動を刻んでいる
大きく息を吐いた劉輝はいつも懐に入れている布を取り出した
そう、貴姫時代に秀麗がくれた刺繍の入った贈り物である
劉輝の数少ない宝物
「秀麗.......」
夢と同じく愛おしげに呟いた劉輝をただ月だけが見ていた
end
<後日談>
「あははははははははは!!」
壁に手をつき溢れる涙を隠そうともせずに爆笑する青年を恨めしそうに睨む劉輝
手を握り締めずっと耐えていたが最早限界であった
だんっっ!!と大きく机を叩き立ち上がった劉輝は青年に向かって叫ぶ
「楸瑛!! 何もそんなに笑う事はないであろう!!!」
「いや、だって、初夢が、そんな面白......じゃなくて、酷、い...............っく」
息が出来ない程に笑い転げる側近、我関せずを貫き通す側近の態度に
遂にのの字を書いて机の下に潜ってしまった王
そして彼の王の想い人の性格を誰よりも知り尽くしているが故に
夢の内容に対して慰める言葉が浮かばない元公子
そんな楽しい様を、ただただ大人たちは微笑ましげに眺めるのでありました
美桜子さん、お誕生日おめでとうございます♪
1日遅れてしまいましたがどうぞお納め下さいませ><
人生初の彩雲国物語(しかも劉輝×秀麗?)です。
「もうちょっと成長しないとあげられないわ」の想いを篭めすぎました(笑)
パンチの効いたもの?になったでしょうかね?
返品可ですので別のが良ければお申し付け下さいませ〜☆
そんな事は昔っから日常茶飯事だった。戦争での英雄はそれだけ沢山の人を殺したという事なのだから。
だから人から怨まれる事も憎まれる事も恐れられる事も慣れたものだった。
君はそんなモノに慣れるなと怒ったけど................あぁ......いま、無性に君に逢いたいかもしれない。
いつもの如くバターンっと勢い良く開けられた執務室の扉。
よー無能大佐ちゃんと仕事してっかー?と上官を上官とも思わない暴言を投げつける見慣れた子供の姿。
対する大人気無い大人は大きな執務机に陣取って皮肉な笑みと言葉を返し14も歳の離れた少年と同レベルの口喧嘩を繰り広げる。
それがいつもの東方司令部の風景だ。しかし今日はその光景を目にする事はなかった。
元よりその部屋にはロイ・マスタング大佐しか居なかった事もあるが、蝶番が軋む程の勢いで扉を開けた子供.......
否、エドワードがロイの顔を見た瞬間、投げかける予定の言葉を呑み込んだのだ。
いつに無いエドワードの様子に「鋼の?」と呼び掛けると同時にロイは不思議そうに首を傾けた。
ロイのその態度に瞳を鋭く細めたエドワードは次の瞬間「はぁ....」と小さく溜め息を吐いた。
「久々に逢った恋人の顔を見た第一声が溜め息とは相変わらず君はつれないね」
少しの本気と皮肉を篭めたロイの言葉にもエドワードは構わず、後ろ手に扉を閉めると顰めっ面のまま足を進めた。
目の前の男が発する目に見えない細い緊張の糸を切らないようにエドワードはゆっくりと近づくとロイの前で足を止めた。
「アンタさ自分の顔、鏡で見て来いよ。ひっでぇ顔してんぜ?」
「君は人の顔を見るなり酷いな。これでも街のお嬢さん方には素敵と頬を染められる顔なんだがね?」
「ふん、俺にそんな取って付けたような変な顔が通じると思ってんのか?笑いたくない時に笑うなって言ったのはアンタだだろ?それに、俺の前で取り繕うなんて許さねぇ」
視線を逸らす事なく断言された言葉にロイは僅かに目を見張った。
そしていつもと変わらないように見せかけていた笑顔という名の仮面を降ろした。
「...............驚いたな。中尉や少尉たちですら気付かなかったのに」
「違うだろ」
「.......あぁ、そうだな。彼らはきっと気付かないフリをしてくれていたのだろうな」
部下に気ぃ使わしてるようじゃぁまだまだだな大佐殿?とエドワードが言えば、なぁに部下が気を使ってくれる位に慕われているという事さとロイが返す。
いつもの軽口。しかしロイの心にいつものような余裕は感じられなかった。
この僅かな会話で恋人の精神状態を正確に見て取ったエドワードはくるりと踵を返すと勢いよくソファーに座った。
そしてぽふぽふと自分の隣りを叩きながらロイを呼んだ。
「.........アンタもう喋んなくて良いからこっち来いよ」
「はがねの?」
「いいから黙ってこっちに来やがれ無能」
優しいとは言い難いエドワードの呼び掛けだが、その有無を言わせない声に導かれるようにロイは立ち上がった。
コツ......コツ......とゆっくりとした足取りでソファーに座るエドワードの前に立ったロイの指先が、まるで許しを請うかのように
エドワードの頬に向かって伸ばされた。
「鋼の」という吐息のような呼び掛けと同時に頬に触れる指先は冷たく優しい。
何を隠そうエドワードはこの手が結構好きだった。
決してキレイだとは言い難い手だと知っている。
いつだったか目の前の男は「血に染まった手だ」と自嘲気味に評していた。
それでも自分を深い闇の中から引き上げてくれた力強い手だ。
希望という名の光を与え、時に厳しく、時に優しく差し伸べてくれる掛け替えの無い手だ。
確かに沢山の血に染まっているかもしれない、でもそれ以上に誰かを守って救ってきた手だと思う。
そんな事を考えている内にロイの瞳に変化が現れた。最初に見えた全てを拒絶するかのような色はもう感じられない。
やがて感触を確かめるように触れていた指先が滑り、掌が頬全体を覆う様に当てられる。
冷えきっていた大きな手にエドワードの体温が移り温まった頃、全てを吐き出すかのような吐息が零れた。
それまで黙ってロイを見ていたエドワードは再び自分の隣りをぽふぽふと叩いた。
つまり、隣りに座れと。
ドサリとソファーに腰を降ろしたロイは背凭れに頭を預け静かに瞳を閉じた。
そしてもう一度深く息を吐いたロイの頭を包み込むようにエドワードの腕が回された。
「俺はいつもアンタの側に居てやれるわけじゃないけどさ、近くに居る時くらい支えさせろよ」
「.................君は、たまにイヤになるくらい格好良いね」
「当たり前だ。俺を誰だと思ってやがる」
膝に乗上げたような体勢のままふんぞり返って宣言するエドワードにロイが少しだけ笑った。
それは作られたものでも皮肉を篭めたものでもなく、ただ思わず浮かんだ穏やかな笑みだった。
普段はまったくつれない癖に、こんな時だけ優しいなんてズルイじゃないか。
これ以上惚れたら一体どうしてくれるんだ。
ロイはそんな恨み言を呟きながら、どうやら今日はめいいっぱい甘やかしてくれるらしい恋人の肩口に顔を埋めその小さな身体を両手で抱き締めた。
もう大丈夫だと笑えた。
この稀有な黄金が腕の中にある限り、私が光を見失う事はないのだから。
end
ねこめ様、お誕生日おめでとうございます★
いつも素敵で可愛いイラストに癒され、キュン死にしそうになってますvvv
ささやかながらお誕生日のお祝いを捧げさせて頂きます。お気に召して頂ければ幸いです。
糖質高めのロイエド...........あま、い....でしょうか?
エドさんが男前で格好良すぎた所為であんまり甘くない気も........すいません。
返品可ですのでもっと甘いのが良いわって事があれば遠慮なくどうぞ☆
「おや、どうしたんですかミレーユ?」
「リヒャルト!あ、あのね!」
今日の仕事も終わり自室で寛いでいたリヒャルトの元へ、この度正式に妻となったミレーユが訪れた。
もう少ししたらリヒャルトの方がミレーユの元を訊ねようかと思っていた所だったので、逢えた事は嬉しいが、何やらミレーユの様子がいつもと違い、リヒャルトは首を傾げた。
「あ!あの、ね!」
何だかとっても気合いが入っている……気がする。
「とりあえず座りませんかミレーユ?」
「ありがとう。じゃなくて、リヒャルト!」
「はい」
「………あの、これ!」
とりあえずソファーにと勧めれば素直に座ったミレーユ。しかし次の瞬間、どこに隠していたのか小さな箱をリヒャルトに突き出した。
………箱の形は両手に収まるほどの長方形。厚みは数センチで可愛らしいリボンが掛けられている。
「俺に?」
「あのね、リゼランドに居た頃に聞いたんだけど、とある国では二月に……女の人が、す、好きな人にプレゼントを送る週間があるらしいのよ!お菓子でもお料理でも手編みのマフラーとかレース編みとか刺繍でも手作りの物なら何でも良いらしいんだけど、あたしには編み物とか刺繍とか女の子らしい事なんてできないから食べ物しか選択になかったんだけど、あ、リヒャルトがそっちの方が良いって思うのなら練習して来年には作れる様に頑張ってみるけど!……うう、今年は食べ物になっちゃうんだけど……貰ってくれる?」
ミレーユの怒濤の言葉にリヒャルトは呆気に取られる。当のミレーユは箱を差出したままの体勢でリヒャルトを見つめ続けている。
「い、要らないんだったら捨ててくれても」
「まさか!」
「無理しなくても良いのよ」
「俺がミレーユからのプレゼントをそんな風に扱う訳ないでしょう!」
リヒャルトが惚けていた間に、ミレーユは自己完結して箱を引っ込め様としたが慌てた手がそれを押しとどめる。
箱を受け取ったリヒャルトが嬉しそうに微笑むと、それを見たミレーユも嬉しそうに微笑む。
もしこの場を他人が見ていれば砂を吐きそうなくらい甘い空気が漂っていた事だろう。
「開けても?」
「もちろんよ!だってリヒャルトの為に作ったんだから」
「ありがとうございます、ミレーユ」
「お、美味しくないかもしれないけど」
「そんな事は有り得ません」
いつもの優しい笑顔で微笑まれれば、ミレーユの頬は赤く染まってしまう。
シュルリと音を立ててリボンが解かれ、箱の蓋が持ち上がるのを、ドキドキしながら見詰める。
昔、フレッドにあげていただけの時はこんなに緊張しなかったわ……やっぱり好きな人は特別なんだと、こんな時思う。
「これは、チョコレートですか?」
「ええ、そうよ。薄く伸ばしてパリっと焼いた生地を、これくらいの袋に入れて棒で叩いて小さく割るの。で、溶かしたチョコレートを絡めて一口大に丸めて冷蔵庫で冷やすと完成!」
お菓子を摘み目の高さまで持ち上げ訊ねるリヒャルトに、ミレーユは身振りを交えつつ説明する。
それに頷きながらゆっくりと口元にお菓子を運んだリヒャルトは、次の瞬間微笑んだ。
「うん、美味しいです」
本当!?と目を輝かせて喜ぶミレーユに、本当ですよと微笑みながらもう一つ口にお菓子を運ぶ。そして良かった!と笑うミレーユの口にも一つお菓子を放り込むと、リヒャルトは更に笑みを深める。
「ね、美味しいでしょ?ミレーユが俺の為に作ってくれた物が美味しく無い訳がないんですよ」
「ああああああなたが恥ずかしい事をこの上もなくサラッとやったり言ったりする人だって知ってたけど」
「え?何か恥ずかしい事言いました?」
「……いえ、良いの。あたしが慣れるとは思えないけど、慣れれば良いだけの事だから」
真っ赤な顔で溜め息を吐くミレーユに、リヒャルトは不思議そうに首を傾ける。彼は自分の言葉がどんなにミレーユを恥ずかしがらせたか、まったく理解していなかった。
「あたしも鈍いしか鈍感とか言われるけど、リヒャルトも大概鈍感よね」
「そうですか?」
「そうよ!」
でないとあんな恥ずかしい事言わないんだから!と頬を赤くして言い募るミレーユを、内心可愛いなと思いながらリヒャルトが微笑んでいるなんて知ったら、きっと憤死する事だろう。
「でも俺はただ正直に言ってるだけですよ?」
結婚前は、心に留めていたその言葉を、今のリヒャルトは惜しげもなく告げている。ただそれだけだ。
リヒャルトからすれば、妻に愛を囁いて何が悪いと言いたい。寧ろもっと、それこそ一日中好きだと告げていたって自分が言い飽きるとは思えない。それ程にミレーユは可愛いのだから。
「あ、あたしなんか誉めたって何にも出ないんだから」
「だから別に誉めてるんじゃありませんよ。ミレーユが可愛いのは事実ですから」
「リヒャルト………あなたフレッドが乗り移ったんじゃない?」
「あはは!まさか!!あ、でも最近思う事があります」
「でしょう!」
ほら!やっぱりフレッドがっ!と言い掛けたミレーユを、リヒャルトはやんわりと否定する。
「違いますよ」
「え?」
「ミレーユは出逢った時からずっと可愛いですけど、最近とっても綺麗になったと思います」
「きれい?」
「はい」
呆然とした呟きに満面の笑みで答えるリヒャルト。もう一度「きれい?」と呟いたミレーユは、次の瞬間首筋まで真っ赤に染め上げた。ギクシャクとした動きで見上げてくる赤い頬に、リヒャルトは軽く口付ける。
更に真っ赤になって顔を伏せてしまったミレーユの旋毛に唇で触れればピクリと反応が返る。その事に微笑み、今度は額に一つ、顳かみにも一つゆっくりと口付けを贈る。
「ミレーユ」
優しく促せば怖ず怖ずと顔を上げてくれる。そんな彼女に微笑み、そっと頬へ手を伸ばせば抵抗なく伏せられる瞳。
もう何度触れたか分からない柔らかな唇に自分のそれを重ねれば愛おしい気持ちがさらに大きくなる。
軽く触れ合わせた唇を離ば、照れながらも嬉しそうに笑ってくれる彼女に脳が甘く痺れる。
「ミレーユ、愛しています」
「あたしも……」
吐息の様に小さな声は俺だけに向けられた彼女の気持ち。
幼い頃、全てを奪われてから自分にとって大切なモノは持たない様にしてきた。
国を取り戻し、大公となるにはそんなモノは持てないと思っていた。ずっと今までは……。
でも、もう手放せない。
この時間を、そしてこの人を……俺はずっと、守りたい。
お世話になっている美桜子さんがお風邪を召されたとお聞きして………
萌をー!との叫びがあったのでどんなのが良いですか?と訊ねたら「歯が痛いほど甘くて身震いするようなスイート萌」との事。
うちのナル麻衣甘くないので、どうしようかと思ったら、リヒャミレ(結婚後)のアンソロを読んでいた所為かこの2人が脳内でイチャつきだしたので、書いてみました。
バレンタイン話だったのに既に過ぎ去った件………
美桜子さんどうぞお納め下さいませm(_ _;)m
今年も蝦夷の土地に長い冬が訪れた。
散々積もっているのに、まだ止む気配の無い雪に、千鶴は溜め息を零す。
「風邪を……召されなければ良いのですが」
昔、京に居た頃とは比べ物にならない程、蝦夷の冬は寒い。千鶴が心配しているのは勿論、夫である土方の事だ。
この村に住み始めて三年の月日が流れた。
政府の人間に見つかるかもしれないという不安は、もうほとんど無いと言っても良い。
腰を落ち着けてから一年。長いとも短いとも言えない時が経った頃、千鶴は土方と祝言を挙げた。
傍に居られたらとは思っていたが、まさか夫婦になれるとは思っていなかった。
蝦夷の短い春の日に土方から言われた言葉は、千鶴にとって一生忘れられない。おそらく、これから先年々経とうとも色褪せる事なく思い出せる。それほどに幸福な言葉であった。
「歳三さん」
ぽつりと呟き赤面する。
名前を呼ぶだけで火照ってしまう頬を叩きながら千鶴は動悸を抑えようと、先ほど取り込んだ洗濯物に手を伸ばす。
丁寧に折り畳むのは土方の着物。
屯所時代から幾度となく繰り返すそれに、知らず頬が緩み、次いで寂しげに目が伏せられる。
「あの頃はもっと沢山ありましたね……」
今誰かに幸せかと聞かれれば、間違い無く幸せだと千鶴は答える。でも、もしもを考えると寂しくもなる。土方の隣りに居られる事は、千鶴にとって掛け替えの無い事だ。でも、彼の周りに千鶴以外に誰も居ないという事に、泣きたくもある。
局長である近藤しかり、山南、沖田、斎藤、原田、永倉、藤堂………考えればきりがない。
ほんのひと時一緒に居ただけの千鶴でさえ、こんなにも寂しく思うのだから、土方の喪失感は千鶴の比では無いだろう。
けれど土方は千鶴に向かって笑う。
彼らは己の誠を貫いたのだから、懐かしむ事はあっても後悔などはしないと。
いつもいつだって彼の人は後ろを振り返ったりしない。
ただ真っ直ぐに、前を見て進んでゆくのだ。
その心の強さに千鶴は惹かれ、この人と共に在りたいと思った。
だから今日も千鶴は待つ。
彼の人が笑って帰ってくるその時まで、春に逢える小さな命と共に。
【お題配布元:Discolo 様】
URL : http://discolo.tuzikaze.com/index.html
相棒に捧げる土千。
エロはありませんエロは! ←大事な事なので2回いうw
今日もわたくしは騎士様を求めて街へ降りるのです。
わたくしの名前はジェニファー・コレット 。イギリスの由緒ある子爵家の娘ですわ。
幼い頃から、高貴な家に相応しい娘になる様にと、様々な事を教えられました。わたくしもそれがこの家に生まれた努めだと、淑女になる為のレッスンを一生懸命受けて参りました。
いずれ、親の決めた身分の釣り合う殿方と結婚し、この家を守ってゆく。それがわたくしの未来だと、生まれてからずっと信じておりました。
しかし、そんなわたくしに、転機が訪れました。
あれは忘れもしません、十四歳のわたくしのバースデーパーティー。
参加頂いた皆様から沢山のおめでとうの言葉を頂戴し、わたくしも笑ってそれに応えました。今思えば、浮かれていたのだと思います。
お父様から頂いた新しい靴で動き回った所為で、靴擦れを起こしてしまったわたくしは、誰にも知られぬ様に庭に出ました。
物陰にあるベンチに腰掛け、靴を脱いでみれば、やはりそこには血の滲んだ足。
「ついてないわ、こんな日に」
溜め息を吐いたわたくしは、とりあえず傷の手当して、使用人に履き慣れた靴を持ってきてもらおうと、もう一度合わない靴に足を伸ばしました。
その時、近くの茂みから一人の男性が現れたのです。自分以外誰も居ないと思っていたわたくしは、文字通り飛び上がりました。
「!?」
その場に固まったわたくしの方へと、その男性は近付いてきます。
何か言わなくては。
そう思えど、声がでません。
「驚かせてしまい申し訳ありません」
あと三歩という所で足を止めた男性は、低く謝罪の声を発します。何故か、わたくしから視線は外して……。
「そ、その……少々不手際で迷ってしまいまして、人の気配がしたものでこちらに……その驚かせるつもりではなくですね……。もしパーティー会場の位置をご存知であれば、教えて頂きたいと思ったのですが……」
何だかしどろもどろに言葉を紡ぐその方が面白くて、わたくしは思わず笑ってしまいました。
「……ふふふ。会場でしたら、この道を引き返して右に、少し進めばホールが見えて参ります。そちらまで行けば当家の使用人がおります」
「ありがとうございます。その、失礼を承知の上お尋ね致しますが、その足は……」
その方の指摘に、わたくしは自分の足をベンチに上げたままであった事に気が付きました。
「きゃっ」
真っ赤になったわたくしは、慌てて足を下ろします。だからこの方は、わたくしの方を見ずに話をされていたのですね。
「ど、どうぞお気になさらず!」
恥ずかしさのあまり、少し声が大きくなってしまいました。火照る頬を隠して申し上げましたが、その方は一向に去って下さいません。
何故かしらと首を傾けたわたくしの前に、影が射します。
失礼と発したその方は、足下に跪いたかと思うと、わたくしの足を取ります。
「靴擦れですね」
あああの、すっごく恥ずかしいのですが放して頂けないでしょうか?というわたくしの心の声は、その方には届きません。
わたくしの様子に気付かないその方は、胸ポケットに入れていたハンカチを取り出すと、徐に引き千切りました。
そして、傷付いたわたくしの足に、その切れ端を包帯の様に巻いてゆきます。
「い、いけませんわ!」
漸く、その方の行動の意味に気付いたわたくしは、慌てて止めに入ります。が、その方は優しく微笑んで言われます。
「どうぞお気に為さらず。私が勝手にしているだけですから」
な、なんでしょう。胸がどきどき致します。
結局、それ以上何も言う事ができなかったわたくしは、器用に巻かれてゆく布を見ているより他ありませんでした。
やがて全ての布を巻き終えたその方は、わたくしを抱き上げホールの方へと足を進めました。
「お、降ろして下さい!!」
「いいえ。これ以上無理をなさってはいけませんよ」
蚊の鳴くような声で、お願いしたわたくしでしたが、強い否定の言葉に逆らう事はできません。そのまま、わたくしはホール近くまで連れて行かれ、会場から消えたわたくしを心配して、探しに出ていた父に手渡されました。
その時、ようやくその方のお名前を知る事ができました。
林興徐さま。
それ以降、わたくしの心はその方……リン様の事でいっぱいなのです。
中国系企業の御曹司で、家督は弟君に譲られ、御自身はイギリスの権威ある研究所の研究員。
ご実家の援助をお受けになられず、御自身で生計を立てていらっしゃる。
ああ何て素敵な御方。
包み隠さず申し上げると、わたくしはあの瞬間(とき)、恋に落ちたのです。
それからと言うもの、わたくしは自由時間の全てをリン様の観察に費やしているのです。
女とうものは、好きな殿方の事は何でも知りたいものですわ!
だからと言ってお仕事の邪魔をするなど言語道断。わたくし、その位弁えております。ちゃんとリン様の上司の方にお許しを得て、研究所にお邪魔しております。
リン様のお側に居させて頂くのに、カメラの一台や二台、安いものです。
「ああ。今、リン様がお手に取ってらっしゃるのは何かしら?あんなにも真剣に悩んでらして……ス・テ・キ」
わたくしはリン様の悩ましげな表情に、うっとりと頬を染めます。
そして、その行動を逃す事なく日記に付けます。
いつか夫となったリン様が、わたくしの隣りで微笑んで下さるのを夢見て。
end
美桜子さん、サイト四周年おめでとうございます!!!
悪☆オン3のチャットで出逢って約3年、オンでもオフでも仲良くして頂いてありがとうございます。
格好良いリンさんのリクだったハズなんですが、何かオリキャラがすっごく出張っててすいません。
こんなので宜しければ、どうぞお納め下さいませ☆
では、また遊んで下さいね♪c(>ω<)ゞ♪
朽葉
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