*藤袴 -thoroughwort-*
☆次回イベント予定☆ ★2017.8.20.SCC関西23 ふじおりさくら(ゴーストハント)★
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「おや、どうしたんですかミレーユ?」
「リヒャルト!あ、あのね!」
今日の仕事も終わり自室で寛いでいたリヒャルトの元へ、この度正式に妻となったミレーユが訪れた。
もう少ししたらリヒャルトの方がミレーユの元を訊ねようかと思っていた所だったので、逢えた事は嬉しいが、何やらミレーユの様子がいつもと違い、リヒャルトは首を傾げた。
「あ!あの、ね!」
何だかとっても気合いが入っている……気がする。
「とりあえず座りませんかミレーユ?」
「ありがとう。じゃなくて、リヒャルト!」
「はい」
「………あの、これ!」
とりあえずソファーにと勧めれば素直に座ったミレーユ。しかし次の瞬間、どこに隠していたのか小さな箱をリヒャルトに突き出した。
………箱の形は両手に収まるほどの長方形。厚みは数センチで可愛らしいリボンが掛けられている。
「俺に?」
「あのね、リゼランドに居た頃に聞いたんだけど、とある国では二月に……女の人が、す、好きな人にプレゼントを送る週間があるらしいのよ!お菓子でもお料理でも手編みのマフラーとかレース編みとか刺繍でも手作りの物なら何でも良いらしいんだけど、あたしには編み物とか刺繍とか女の子らしい事なんてできないから食べ物しか選択になかったんだけど、あ、リヒャルトがそっちの方が良いって思うのなら練習して来年には作れる様に頑張ってみるけど!……うう、今年は食べ物になっちゃうんだけど……貰ってくれる?」
ミレーユの怒濤の言葉にリヒャルトは呆気に取られる。当のミレーユは箱を差出したままの体勢でリヒャルトを見つめ続けている。
「い、要らないんだったら捨ててくれても」
「まさか!」
「無理しなくても良いのよ」
「俺がミレーユからのプレゼントをそんな風に扱う訳ないでしょう!」
リヒャルトが惚けていた間に、ミレーユは自己完結して箱を引っ込め様としたが慌てた手がそれを押しとどめる。
箱を受け取ったリヒャルトが嬉しそうに微笑むと、それを見たミレーユも嬉しそうに微笑む。
もしこの場を他人が見ていれば砂を吐きそうなくらい甘い空気が漂っていた事だろう。
「開けても?」
「もちろんよ!だってリヒャルトの為に作ったんだから」
「ありがとうございます、ミレーユ」
「お、美味しくないかもしれないけど」
「そんな事は有り得ません」
いつもの優しい笑顔で微笑まれれば、ミレーユの頬は赤く染まってしまう。
シュルリと音を立ててリボンが解かれ、箱の蓋が持ち上がるのを、ドキドキしながら見詰める。
昔、フレッドにあげていただけの時はこんなに緊張しなかったわ……やっぱり好きな人は特別なんだと、こんな時思う。
「これは、チョコレートですか?」
「ええ、そうよ。薄く伸ばしてパリっと焼いた生地を、これくらいの袋に入れて棒で叩いて小さく割るの。で、溶かしたチョコレートを絡めて一口大に丸めて冷蔵庫で冷やすと完成!」
お菓子を摘み目の高さまで持ち上げ訊ねるリヒャルトに、ミレーユは身振りを交えつつ説明する。
それに頷きながらゆっくりと口元にお菓子を運んだリヒャルトは、次の瞬間微笑んだ。
「うん、美味しいです」
本当!?と目を輝かせて喜ぶミレーユに、本当ですよと微笑みながらもう一つ口にお菓子を運ぶ。そして良かった!と笑うミレーユの口にも一つお菓子を放り込むと、リヒャルトは更に笑みを深める。
「ね、美味しいでしょ?ミレーユが俺の為に作ってくれた物が美味しく無い訳がないんですよ」
「ああああああなたが恥ずかしい事をこの上もなくサラッとやったり言ったりする人だって知ってたけど」
「え?何か恥ずかしい事言いました?」
「……いえ、良いの。あたしが慣れるとは思えないけど、慣れれば良いだけの事だから」
真っ赤な顔で溜め息を吐くミレーユに、リヒャルトは不思議そうに首を傾ける。彼は自分の言葉がどんなにミレーユを恥ずかしがらせたか、まったく理解していなかった。
「あたしも鈍いしか鈍感とか言われるけど、リヒャルトも大概鈍感よね」
「そうですか?」
「そうよ!」
でないとあんな恥ずかしい事言わないんだから!と頬を赤くして言い募るミレーユを、内心可愛いなと思いながらリヒャルトが微笑んでいるなんて知ったら、きっと憤死する事だろう。
「でも俺はただ正直に言ってるだけですよ?」
結婚前は、心に留めていたその言葉を、今のリヒャルトは惜しげもなく告げている。ただそれだけだ。
リヒャルトからすれば、妻に愛を囁いて何が悪いと言いたい。寧ろもっと、それこそ一日中好きだと告げていたって自分が言い飽きるとは思えない。それ程にミレーユは可愛いのだから。
「あ、あたしなんか誉めたって何にも出ないんだから」
「だから別に誉めてるんじゃありませんよ。ミレーユが可愛いのは事実ですから」
「リヒャルト………あなたフレッドが乗り移ったんじゃない?」
「あはは!まさか!!あ、でも最近思う事があります」
「でしょう!」
ほら!やっぱりフレッドがっ!と言い掛けたミレーユを、リヒャルトはやんわりと否定する。
「違いますよ」
「え?」
「ミレーユは出逢った時からずっと可愛いですけど、最近とっても綺麗になったと思います」
「きれい?」
「はい」
呆然とした呟きに満面の笑みで答えるリヒャルト。もう一度「きれい?」と呟いたミレーユは、次の瞬間首筋まで真っ赤に染め上げた。ギクシャクとした動きで見上げてくる赤い頬に、リヒャルトは軽く口付ける。
更に真っ赤になって顔を伏せてしまったミレーユの旋毛に唇で触れればピクリと反応が返る。その事に微笑み、今度は額に一つ、顳かみにも一つゆっくりと口付けを贈る。
「ミレーユ」
優しく促せば怖ず怖ずと顔を上げてくれる。そんな彼女に微笑み、そっと頬へ手を伸ばせば抵抗なく伏せられる瞳。
もう何度触れたか分からない柔らかな唇に自分のそれを重ねれば愛おしい気持ちがさらに大きくなる。
軽く触れ合わせた唇を離ば、照れながらも嬉しそうに笑ってくれる彼女に脳が甘く痺れる。
「ミレーユ、愛しています」
「あたしも……」
吐息の様に小さな声は俺だけに向けられた彼女の気持ち。
幼い頃、全てを奪われてから自分にとって大切なモノは持たない様にしてきた。
国を取り戻し、大公となるにはそんなモノは持てないと思っていた。ずっと今までは……。
でも、もう手放せない。
この時間を、そしてこの人を……俺はずっと、守りたい。
お世話になっている美桜子さんがお風邪を召されたとお聞きして………
萌をー!との叫びがあったのでどんなのが良いですか?と訊ねたら「歯が痛いほど甘くて身震いするようなスイート萌」との事。
うちのナル麻衣甘くないので、どうしようかと思ったら、リヒャミレ(結婚後)のアンソロを読んでいた所為かこの2人が脳内でイチャつきだしたので、書いてみました。
バレンタイン話だったのに既に過ぎ去った件………
美桜子さんどうぞお納め下さいませm(_ _;)m
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