*藤袴 -thoroughwort-*
☆次回イベント予定☆ ★2017.8.20.SCC関西23 ふじおりさくら(ゴーストハント)★
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今年も蝦夷の土地に長い冬が訪れた。
散々積もっているのに、まだ止む気配の無い雪に、千鶴は溜め息を零す。
「風邪を……召されなければ良いのですが」
昔、京に居た頃とは比べ物にならない程、蝦夷の冬は寒い。千鶴が心配しているのは勿論、夫である土方の事だ。
この村に住み始めて三年の月日が流れた。
政府の人間に見つかるかもしれないという不安は、もうほとんど無いと言っても良い。
腰を落ち着けてから一年。長いとも短いとも言えない時が経った頃、千鶴は土方と祝言を挙げた。
傍に居られたらとは思っていたが、まさか夫婦になれるとは思っていなかった。
蝦夷の短い春の日に土方から言われた言葉は、千鶴にとって一生忘れられない。おそらく、これから先年々経とうとも色褪せる事なく思い出せる。それほどに幸福な言葉であった。
「歳三さん」
ぽつりと呟き赤面する。
名前を呼ぶだけで火照ってしまう頬を叩きながら千鶴は動悸を抑えようと、先ほど取り込んだ洗濯物に手を伸ばす。
丁寧に折り畳むのは土方の着物。
屯所時代から幾度となく繰り返すそれに、知らず頬が緩み、次いで寂しげに目が伏せられる。
「あの頃はもっと沢山ありましたね……」
今誰かに幸せかと聞かれれば、間違い無く幸せだと千鶴は答える。でも、もしもを考えると寂しくもなる。土方の隣りに居られる事は、千鶴にとって掛け替えの無い事だ。でも、彼の周りに千鶴以外に誰も居ないという事に、泣きたくもある。
局長である近藤しかり、山南、沖田、斎藤、原田、永倉、藤堂………考えればきりがない。
ほんのひと時一緒に居ただけの千鶴でさえ、こんなにも寂しく思うのだから、土方の喪失感は千鶴の比では無いだろう。
けれど土方は千鶴に向かって笑う。
彼らは己の誠を貫いたのだから、懐かしむ事はあっても後悔などはしないと。
いつもいつだって彼の人は後ろを振り返ったりしない。
ただ真っ直ぐに、前を見て進んでゆくのだ。
その心の強さに千鶴は惹かれ、この人と共に在りたいと思った。
だから今日も千鶴は待つ。
彼の人が笑って帰ってくるその時まで、春に逢える小さな命と共に。
【お題配布元:Discolo 様】
URL : http://discolo.tuzikaze.com/index.html
相棒に捧げる土千。
エロはありませんエロは! ←大事な事なので2回いうw
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