*藤袴 -thoroughwort-*
☆次回イベント予定☆ ★2017.8.20.SCC関西23 ふじおりさくら(ゴーストハント)★
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カランコロン
その日は、爽やかな秋の風が吹く日だった。
事務所のガラス戸の開閉音が聞こえ、事務員の安原は営業スマイルでお客様をお迎えした。
「いらっしゃいませ、ご依頼でしょうか?」
扉から顔を覗かせたのは四十歳くらいの男性。キレイに磨かれた靴、一目で高級だと判る仕立ての良いスーツはおそらくオーダーメイド。短く揃えられ黒々とした髪は、この年代の人にとっては羨ましい限りだろう。
「心霊現象の調査を行って頂けるとお聞きしたのですが、こちらで間違い無いでしょうか?」
明らかに年下な安原に向かって丁寧に言葉を掛ける姿に実に好感が持てる。
「はい。SPR、渋谷サイキックリサーチはこちらです。わたくし、調査事務員の安原と申します。直ぐに責任者を呼んで参りますので、こちらにお掛けになってお待ち下さい」
依頼人を応接ソファーに案内した安原は一礼し、所長室の扉をノックした。
「私は、白峰 直葵(しらみね なおき)と申します」
名刺を差し出しながら名乗った依頼人。肩書きは超有名大会社の代表取締役社長………。
「ねえ、何かの間違いなんじゃない?」
紅茶を運んで来た麻衣が思わず安原に耳打ちする。
確かにそう思ってしまっても仕方無いだろう。白峰といえば、日本屈指の財閥で在りとあらゆる業種に手を出し、そのほとんどを成功に収めている雲の上のさらに上の存在だ。
そんな家の、しかも最高権力者自ら依頼に来るとは安原でも驚いたのだから。
大抵そういう血統を重んじる家系は、下々の者に(自分が依頼に来たというのに)高圧的に命令し、某所長の機嫌を地底深く沈めて下さるのだが、今ソファーに座って麻衣の淹れた紅茶を飲んでいる男から、そんな空気は微塵も感じない。
「この紅茶は貴女が?」
「は、はひ?」
紅茶を一口飲んだ男は麻衣に向かって訊ねた。
突然の事に麻衣はびっくりして声が裏返ったが、男はそれを咎める事もなく逆に驚かせた事を詫びる。
「あ、申し訳ない。とても美味しかったので」
「あ、ありがとうございます」
にっこり微笑みながら告げられたストレートな褒め言葉に、麻衣は頬を赤く染める。紅茶を淹れて、どっかの誰かさんから誉められたり御礼を言われたりなんて事がまったく無いので誉められる事への耐性が無いのだ。
へらりと笑み崩れる麻衣に冷たい視線が向けられるが、幸か不幸か麻衣が気付く事は無かった。
「そろそろ依頼内容をお訊きしても?」
ナルの静かな声が響いた事で全員の視線が男に向けられた。
「失礼しました。では早速依頼の方を……A県の山奥にうちの別荘があるのですが、夏の終わりから秋の中頃に掛けて普通では考えられない事が起こるのです」
淡々と話し始めた男に違和感を感じた。なぜなら、ここに依頼に来る者は心霊現象に悩まされ精神的に参っている者が多い。
しかし彼からは一切、悩んだり困ったりしている様子は感じられない。
ハズレか……そう感じたナルは安原に視線を送る。
その視線の意味を違える事無く受け取った安原は、笑顔を浮かべ男の話しを促す。
「普通では考えられないとは具体的にお聞かせ頂けますか?」
「簡単に申し上げるなら、全てが赤く染まるのです」
「全てとは?」
「まず一番最初に庭に咲いている白い薔薇が赤くなります。他の花も順番に染まってゆきますが、毎年始まりは白い薔薇からです。そのあと庭に生える樹の葉みのが赤くなり、一気に落ちます」
「その白い薔薇はどなたの物でしょうか?」
「世話をしているのは庭師ですが、特に誰かの物だということはありません」
「失礼ですが、樹の方は紅葉と違うと言い切れるモノはございますか?」
「赤く染まる樹の大半が針葉樹です」
「一気に落ちるというのは枯れるのでしょうか?」
「いいえ。言葉通り落ちるんです。美しく咲いていた白い薔薇も青々とした葉も全てが深紅に染まった次の日の朝、一斉に枝だからバサッと落ちます。そしてその日の昼、近くの湖一面が真っ赤に染まります」
安原の質問にも男は実にスムーズに答える。
まるで予め聞かれる事が判っているかのようだ…………
安原とナル、そしてリンはやはり違和感を感じた。やはり何か普通の依頼人とは違うと。
「では、最後にひとつ。毎年、始まりはと仰いましたが、その現象はいつから起こっているのでしょうか?」
「……………夏が終わる頃に」
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「あれ?まだ起きてたんだ」
誰に聞かせるでもなく零れた声は冷んやりとした廊下に落ちる。
もうすぐ明け方という時間にぽっかりと目が覚めた麻衣は、渇きを訴えた喉を満足させるため温かい寝室からキッチンへと向かった。
そして見たのは書斎から漏れる煌々とした電球の光。
昨夜、分厚い本を読んでいたナルが隣りに寝ていない事は予想通り。しかし後もう少しだったのと他に本が無かったので、夜中には書斎の簡易ベッドで寝ると思っていた。
「まったく、ちょっとは自分の身体を労ろうとは思わないのかな?」
思わないんだろうなーと内心溜め息を吐きながら、ついでにナルの分の紅茶も淹れる。
あたしも甘やかすからいけないんだとは思うけどさー倒れられるよりは良いよね。
そんな言い訳をしながら向かった書斎。トレイの上には2人分の紅茶のカップにポット、数枚のクッキー。
コンコン、と軽いノックをし書斎に滑り込んだ麻衣は、思わず笑う。
「寝るんならベッドで寝なよ」
ミニテーブルの上に持ってきたトレイを置き、簡易ベッドから毛布を持ってくる。
「相変わらずだねー」
そんな事を呟きながら淹れてきた紅茶を飲む麻衣。傍らで寝ているナルは微動だにしない。こんな機会は中々無いと思った麻衣は、ツンと白い頬を突っつく。一瞬だけ眉間に皺が寄るのを目撃し、麻衣は吹き出す。
「ねー、起きないと紅茶全部飲んじゃうよー」
笑いを堪えながら再度突っつけば、薄らと開く漆黒の瞳。が、直ぐに閉じる。
「そんな眠いんなら昨日無理せずちゃんと寝れば良いのに」
溜め息1つ。呆れと諦めとを混ぜ込んだそれはナルには届かない。肩を竦めた麻衣はそれ以上何も言わずに紅茶のカップを傾ける。
「うん、美味しい」
「……………………麻衣?」
「あ、起きた」
どうやら人の気配と紅茶の香りに意識が覚醒したらしい。麻衣に向けられた瞳が何故ここに居るのかと問うている。
「喉乾いて起きたらさ電気付いてるんだもん、まだ起きてんのかー!って紅茶持ってきたらナルが寝てたんで1人寂しくお茶会中でーす」
「……………」
「お茶飲む?」
無言でカップに目を向けたナルに、麻衣はポットから温かい紅茶を注ぐ。
「寝るんならちゃんとベッド使いなよ、身体痛くなるよ。あ、このクッキー綾子お手製で甘くないよ」
「要らない…………お茶」
「もう飲んだの!?ちゃんと水分取らないからだよ!」
文句を言いつつもナルのカップにお茶をちゃんと淹れてあげている辺り、イレギュラーズ達が見れば甘いと言う所だろう。
しかし麻衣にそんな自覚はまったくない。
再度注がれたお茶も速攻飲んでしまったナルは、カップを置き掛けられた毛布を手に取る。
「寝るんならベッド!」
麻衣はそれを阻止しようと毛布を引張りパタパタと振る事で抗議する。
「寒い」
「だからベッド行こうってば!!」
麻衣の言葉に瞳を瞬いたナル。次の瞬間ニヤリと、麻衣曰く嫌な笑みを浮かべる。
本能的に妙な雰囲気を悟った麻衣の動きがピタリと止まる。
「な、ナル?」
「そんなに僕と寝たいのか?」
「は?」
ナルの言葉が理解できず固まったままの麻衣を、ナルは抱え上げて書斎を出る。姫抱っこではなく肩に抱え上げている辺りは、やはりナルというか何というか。
「ななななな、ナル!!?」
「近所迷惑」
いや、そうじゃなくてー!と暴れる麻衣を他所に、ナルは寝室のドアを開くとベッドの上に麻衣を放り出す。
視界が回って「うおぅ!?」と驚いた声を上げる麻衣に布団を被せ、その隣りに滑り込むナル。
ようやくナルの意図を理解した麻衣は、もぞもぞと動き体勢を変えるとナルと向き合った。
「ナルの瞳ってキレイだよね。真っ黒で吸い込まれそう」
そっと顔に手を伸ばしてくる麻衣をナルは止めようとはしない。
「寝るんじゃないのか?」
呆れた様に聞いてくるナルに麻衣は「寝るよ」と笑う。
そして「おやすみ、ナル」と言いながら頬にキスを1つ。
吃驚したナルの様子に満足そうに笑うと、麻衣は目を閉じて傍らの温もりに身を寄せる。
完全に寝入る直前「………おやすみ」という声と、額に温もりを1つ感じた。
「この辺はちょっと寒いね」
「避暑地だからなぁ。お前、その恰好じゃ夜は寒いんじゃねーか?」
「だいじょーぶ。ちゃんと上着は持って来てるよ」
「なら良いけど、途中で寒くなったらおとーさんに言うんだぞー、上着くらい貸してやるから」
「はーい」
仲良し父娘(おやこ)は現在、某大会社社長の別荘の庭の中で気温を計っている所だ。
お金持ちの別荘だけあってその敷地は広い。今回の調査対象は屋敷ではなくその広い敷地の大部分を占める自然とあって、機材もいつもより多い。
もしも台風などが来てしまえば、何台かのカメラが破損する事は目に見えている訳で……。そう考えると某仕事バカ共の機嫌の降下は避けられず、戦々恐々しなければならないのだが、今回はなんと、その話を聞いた依頼人の特別出資により高感度カメラ2台を新たに導入できた。更には調査においてこちらの人為的破損以外の理由で機材が壊れた場合の保証をしてくれるとの事で、某所長様や某メカニック殿の機嫌が非常に良い。
とは言っても普段から比べればのレベルなので、いつものメンバー以外には判らない程度だが。
「こんにちは、調査は順調ですか?」
「白峰さん!こんにちは。調査は順調というか、白い薔薇が染まるのを待ってる状態です」
「お元気そうでなによりです。滝川さんもご苦労様です」
「あ、どうもこんにちは白峰さん」
突如後ろから掛けられた声に2人が振り返ると、そこには依頼人の白峰 直葵がにこやかに立っていた。
この人も不思議な人だと滝川は思う。
最初、安原から話を聞いた時には少しばかり警戒していたが調査初日の顔合わせの時に話して以来、滝川はこの人は特に問題無いと思った。何か含む部分というか隠してる事はあるのかもしれないが、今も彼が麻衣に向けている瞳は限りなく優しい。
だから悪い様にはならないだろう。ただそう思った。
「滝川さんもご一緒にいかがですか?」
「へ?」
回想に浸ってた所為でそう声を掛けられ俺はマヌケな顔と返事をしてしまった。
「谷山さんを午後のティータイムにご招待したんですが、滝川さんもいかがです?」
「ぼーさん?」と麻衣は不思議そうな顔で見上げて来るが、彼は特に怒るでもなく再度聞いてくれる。そんな二人に笑顔を返し了承の意を伝えると俺は一人計測したデータを持ってベースへ向かった。
ちなみに麻衣は白峰さんと先に彼の部屋へ行った。どうやら彼も依頼に行った日に飲んだ麻衣のお茶に惚れたらしい。
機嫌が降下するであろう某青年の顔を浮かべ、なんといい訳しようかと滝川はベースへと足を踏み入れた。
□□□□□□□□□
「でも、本当にあたしのお茶で良いんですか?」
「もちろんですよ。先日事務所にお邪魔した時に飲ませて頂いた紅茶は、私が今まで飲んだ中で一、二を争う美味しさでしたから」
「ありがとうございます。そんなにストレートに誉められる事ってないんで嬉しいです」
滝川がベースで不機嫌な某所長を向き合っている頃、白峰の部屋の中ではこんな会話が繰り広げられていた。
誉められて照れる麻衣に、始終笑顔な白峰。二人の間に漂う空気はとっても穏やかで、お菓子の用意をしているメイド達も微笑ましそうに笑っている。
そんな中、笑いを含んだ鈴やかな声が割って入った。
「自分の兄が若い女の子を口説いてるのって、直接は見たくないものね」
「…………楓」
くすくすと笑いながら部屋に入ってきたのは、一人の女性。
さらりと流れる短めの髪、黒く大きな瞳、そして穏やかな微笑みは白峰とどこか似ていた。突如現れたその女性に、麻衣は二人を見比べながら首を傾げる。
「ごめんなさい、兄が余りに楽しそうだったから」
「兄?」
「楓、誤解を招く言い方は止めてくれないか?申し訳ない谷山さん、彼女は僕の妹で」
「白峰 楓と言います。兄からとっても美味しいお茶を淹れるお嬢さんがいると聞いて、来てしまいました。私も谷山さんの紅茶を飲ませて頂けるかしら?」
「え、はい!えっと……」
「楓と名前で呼んで下さると嬉しいわ」
「楓だけズルイな、私の事も名前で呼んでくれると嬉しいな」
「じゃあ、あたしの事も麻衣って呼んで下さい、えっと……楓さん、直葵さん」
「「ありがとう、麻衣さん」」
「在りし日の面影は2」と更新しました。
ようやく初回掲載時と内容が異なって参りました。
続きは今月末に更新できるかなーという所でしょうか?←聞くな
お楽しみ頂ければ幸いです。
==以下拍手ご返信===========
>みっちゃん様
こんばんは、初めまして!
「Cynthiaの守護」お楽しみ頂けた様で嬉しいです^^
一応ナル麻衣サイトなので長編でナル麻衣長編でナル麻衣と言い聞かせて頑張った甲斐がありました(笑)
>ハル様
こんばんは!本国のお話、私も大好きです^^
向こうの人たちの唖然とした顔、良いですよね楽しくて ←
多分本国のお話はもっと書いて行くと思いますので、どうぞお付き合い下さいませ☆
>水瀬さま
いつもコメントありがとうございます!
梅吉くん、可愛いですよね^^
ぼーさんがお仕事で忙しい時だけでも良いから家に来てくれないかといつも思います。距離的に不可能ですけど(笑)
「キスしてくれ〜」は確かにバカップルですよね。しかしあの2人にはほのぼのな生活が似合ってる気がしてR指定物が中々出来なくて……。
その辺は向き不向きがあるんだと開き直って、某水杏りんさんにお任せしょうと思いますw
>柚月さま
こんばんは、はじめまして!
平安のお話お好きですか?私も好きなんですが、続きを書くには連載もののネタバレがあるので、まだ書けないんです(苦笑)
気長にお待ち頂けると嬉しいです。
他、返信不要の方、ぽちっと頂きました皆様もありがとうございます!!
更新頑張ります☆
「そんなに美形の所長さんなの?」
「顔だけは本当に良いんですよ!その分性格はアレですけど」
「でも今まで解決できなかった事例がないって事は優秀なんだろうな」
「直葵さん!それ良い様に言い過ぎです!アレは仕事バカとか仕事の鬼って言うんです!!」
「あら、じゃあお兄様と良い勝負なんじゃないかしら」
「え!?直葵さんも!?」
「私はそんなに仕事仕事と詰め込んでは居ないと思うのだけれど……」
「いいえ。根を詰めて書類を読んでいた所為で、食事を取り忘れる事なんて日常茶飯事でしょ」
「ダメですよ直葵さん!どんなにお仕事できても身体壊しちゃったら終りですよ!」
「そうよね、麻衣さん!もっと言ってやって頂戴」
「参ったな………」
丸いテーブルを囲んで和気あいあいと会話を弾ませる三人に、滝川は困っていた。先ほど別れた時よりも段違いに依頼主と娘の距離が縮まっている気がする………。
どうしようかと頬を掻いた所で、三人の内の一人が滝川の存在に気付いた。
「どなたかしら?」
「あ、ぼーさんお帰りー」
「お疲れ様です滝川さん、先に始めさせて頂いてます」
「えーっと、お邪魔しまーす」
笑顔で首を傾げる女性に、笑顔の娘。更には依頼主からも笑顔で席を勧められては、滝川に断る術はない。初対面な楓と自己紹介し合った所で、クッキーと麻衣の淹れたアイスコーヒーが置かれた。
「それで滝川さん、所長さんの方はいかがでしたか?」
「あー問題ないです。お茶ついでに白峰さんから白薔薇について、些細な事でも良いから聞いて来いとは言われましたけど」
「「「………………………」」」
滝川の言葉に、先ほどまで散々ナルについて話していた3人は噴き出して笑った。
□□□□□□□□□
「調査じゃなかったら最高の旅行だわ」
「あら?松崎さんにはどちらでも同じ事ではありません事?」
ほぅっと溜め息を吐きながら大きなベッドの上で呟く綾子に真砂子の辛辣な言葉が返る。ジロリと真砂子を睨み付けた綾子だが目の前に並べられたワインと夜食に自然、頬が緩む。
「さすが白峰のワインだわ。いい香り」
「松崎さんらしいですわ」
調査に来ても楽しむ事を忘れ無い綾子に真砂子は苦笑する。
まあ今回の調査は特に危険な事も聞かないし、始まりの白い薔薇が染まるまでは旅行気分でも問題ないだろう。
三日前に機材の設置は完了しているし真砂子と綾子は今日来たばかり。初日から来ている彼らだって定期的に気温を計る事とモニターのチェック、夜には寝ずの番が一人だけという体勢で、あとは普通の生活と変わらずに過ごしている。
唯一、安原だけは初日の挨拶に顔を出しただけで情報収集に回っているというが、調べ終わってしまえば他のメンバーと同様の過ごし方をするのだろう。
「今回の依頼人の方は随分と変わった方ですのね」
「ちょっとくらい変わってても金持ちでいい男なら良いんじゃない?」
「そんな事を言ってるんじゃありませんわ」
「判ってるわよ。まぁ、ナルを怒らせないでくれれば私たちも楽なんだから良いじゃないの」
どこまでも真面目な真砂子に今度は綾子が苦笑を浮かべ、グラスに残っていたワインを飲み干すと「おやすみ」と綾子は布団へ潜った。
「あんたも寝なさい。きっと明日はこの庭中歩き回らされて霊視させられんのよ」
「…………それはちょっと有り得そうで嫌ですわ」
そう言うと2人は声を立てて笑い合った。そして「おやすみ(なさい)」と眠りについた。
そして次の日の朝、薔薇が紅く染まった ———————————
ついったーで
「20分以内に2RTされたら、家の中で、微笑みながら背中から抱き締める軍服姿のロイをかきましょう」
といわれたので書いてみました^^
良い事なんて何も無い日だった。
朝、出勤したと同時に舞い込む大量の書類。嫌がらせの用に鳴るお偉い方々からの電話。
ようやく一息付けた時には既にお昼を大分回っていて、食事を取る気にもならなかった。
優秀な副官がコーヒーと一緒にサンドイッチを差入れてくれなければ、きっと何も口にする事はなかっただろう。
こんな事、君にバレたら「いつも俺には、ちゃんと飯食えとか言ってる癖に」なんて呆れられるんだろう。
書類を捌きながら君からの電話が掛かってこないかと、ほんの少しだけ期待する。
億に一の気紛れで来るかもしれない愛しい人からの便りをただ待ち続ける。
誰だったか「思うだけで幸せになれる」と言った者が居たが、私には到底無理だ。
私が愛するように、君にも私を愛して欲しい。
長い旅の中、ほんのひと時でいいから私を思い出して欲しい。
そんな事を考えながら、ただ只管に書類を捌き続けた甲斐があって22時には仕事を終える事ができた。
重い身体を引き摺って久々に帰り着いた家は、酷く無機質なものに見えた。
君が居ない。
ただそれだけで、こんなにも家に帰るのが億劫になる。
きっちりと着込んだ軍服の胸元を揺るめ、上着をソファーの上に放り出す。
「アンタ油断し過ぎ」
本気でビックリした。この私が人の気配に気付かないなんて……。
動揺のまま固まった私を放置し、君はくるりと身を翻しキッチンへと入って行った。
三つ編みの先が視界から消えてようやく我に返った私は慌ててその後を追い掛ける。
キッチンには、小さな身体をめいいっぱい伸ばして大きな鍋をかき混ぜる姿があった。
今日はシチューのようだ。
その幸せな光景に目を細めた私は、ゆっくりと近付きその身体を背後から抱き締めた。
「ただいま、鋼の」
<激痛の対価>
恋したくなるお題(配布)より「狂気の恋」
僕はこの命がいつ果てようとも構わない
鞘に納められているこの白刃で、幾人もの命を奪ってきた
その事を後悔した事なんてないけれど、自分の番が来る事が有り得る事を僕は知っている
早々敗れるつもりなんてないけどね
でもいつかきっと、刀の前に倒れるんだと思っていた
それがまさか、病なんかに刀を奪われるとは思いもしなかった
因果応報
僕が倒してきた人は命を、そして僕は生きる術を……
あの人の役に立ちたい
ただそれだけだったんだけどな
近藤さん、僕はあなたの傍に居る事さえ許されないらしい
===========================
<芽生え始めた違和感>
恋したくなるお題(配布)より「復讐相手に恋したお題」
「おはよう平助くん」
「おはよう千鶴」
幼稚園の頃から繰り返される朝の挨拶は、高校生になっても代わる事なく続いていた。
俺はそれがごくごく普通の事だと思ってたんだけど、世間一般的にはどうやら違うらしい。
こっそり隣りを歩く幼なじみを見れば、気付いた千鶴から嬉しそうな笑顔が返ってくる。
その事に安堵して俺も笑い返す。
いままでもこれからも、ずっとこんな日が続けば良いと思っていた。
あの時までは。
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