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*藤袴 -thoroughwort-*

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よう! 大佐、聞いたぜ? 軍に喧嘩売ったんだって?
あんたのお高いプライドもざまねーな。
まぁ、上からの妬みも無くなって丁度いいんじゃねーか。
そう言えば、ウエストが緩くなって街のお姉さま方に時間掛けて積み上げたイメージが壊れたって聞いたぜ。
誰も言わないなら今から俺が言ってやる。
あんた肝心なとこでミスして足下から崩れ落ちるタイプだろう。
格好悪ぃーの!! 精々、家から逃げられないようにしとけよ。

++++++++++++++++++++++++++++++++++++



「「「「.......」」」」
「これ、激励ですか?」

他に言葉が出ないらしい。呆然とブレタが問うてくる。

「所々、不自然だろう?」
「....文脈が繋がっていない気はしますが」

それが? とブロッシュも一緒になって首を傾けている。

「ちゃんと読み取りたまえ。そんなんじゃモテないぞ? まずはここ、“上からの妬みも” とあるが、上はもちろん軍上層部。妬みもの “も” は何に掛かるのか? それは前の文章の “高いプライド” だ。確かホムンクルスの中に嫉妬とプライドの名を持つ者が居たはずだ」
「エンヴィーとプライドですね? “無くなって” と言う事は奴らは滅んだと?」

ホークアイの質問にロイは鷹揚に頷く。

「恐らく」
「次は “ウエストが緩く” ....大佐、太ったんですか?」
「ブレタ、なぜそうなる! これは音で拾うんだ。ウエスト、つまり “西” だ。しかし次の “時間を掛けて積み上げる” というのは....」
「あ!」

思わず声を上げたブロッシュに全員の視線が刺さる。

「え? あ、すみません。えーっと、それ西の時計塔ではないでしょうか?さっきまで僕、否、自分はエド君とそこに居たんです」
「ふむ。塔は壊れていたかね?」
「いいえ」
「ではこれから壊すのか? “今から俺が” は自分が行ってくるという意味だろう」
「 “肝心なトコ” は重要な部分として、“足元” は...何でしょう? ...道とか?」

判らんと呟くブレタ。ロイも首を捻るが突如思い至った。
!!!!!

「まさか、地下の錬成陣を一人で壊しに行く気か!!?」
「では、最後の “家から逃げられないように” とは何でしょう?」

今にも飛び出して行きそうなロイを押し留めたのは、ホークアイの冷静な声だった。
はっとした様にホークアイを見たあと、ロイは大きく息を吐き椅子に深く腰掛けた。

「すまん」
「大丈夫ですか、大佐?」
「あぁ、問題無い。家、うち、ホーム.....駅か? ブロッシュ軍曹、他に鋼のは何か言ってなかったか?」
「え!? えーっと......特には。す、すみません」

突然話しを向けられ慌てるが、ブロッシュは “覚えていません” と素直に告げる。


「ん?」
「どうかしましたか?」

ホークアイが訊ねるも聞こえないらしく、ロイはエドからの手紙を調べているようだ。
封筒の内側に僅かな凹み?
まさか...
慎重に封筒を開けば指先に微かに感じる線。この形は、錬成陣か...?
円の縁をなぞったあと、両手で触れてみれば突如起こる青白い錬成光。

「「大佐!!?」」

ブレタとホークアイが焦った声を上げる。
光が収まった後に残ったのは1枚の大きな紙と数枚のメモだった。

「大佐、これは?」
「判らん。が、この模様....どこかで....」

大きな紙に描かれていたのは、かなり複雑な錬成陣。
太陽と月、男と女...
人体錬成か?

否、違うな.....
私が構築式を解析しようと脳をフル回転させ始めた時メモの方を見ていたブレタが慌てた声を上げた。

「!!大佐、これを!!!!」





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ブロッシュ軍曹と別れたあと、俺は時計塔に密かに刻まれていた錬成陣を壊した。
そして軍の目を掻い潜り、第五研究所跡から再び奴らのアジトへ忍び込んだ。
その先に居たのは、親父と大総統.....



「そうだったよな? おっさん」
「気付いていたか。カンは鈍っていない様だね? 鋼の錬金術師君」

扉の向こう側に在った気配に声を掛ければ、“はっはっは!” と笑いながら
大総統キング・ブラッドレイが現れた。

「あんたがその地位に座ったままって事は、成功したんだな?」

睨みつけながら訊ねるが瞳に笑いを浮かべただけで答えは返ってこない。

「君の瞳で確かめると良い」

そう言って渡されたのは、細い銀製の腕輪。

「何だよ、コレ?」
「大総統紋が入っているだろう? 私の客人の証だ。提示すればどんな場所でも自由に出入り出来る。今の君には必要だろう」
「へー...... そういや、ここどこ?」
「ここは大総統府内の特別病棟の特別室だよ。3ヶ月ほど前まで君の弟も居たんだが、肉屋の女主人の元に修行に行ったよ」

大総統の言葉に思わず動きが止まってしまった俺。

「.......アル、病み上がりでなんて無謀な」
「実に君の弟らしいじゃないか。はっはっは。この建物内なら自由に動いて構わんぞ」

それだけ言うと、この国で一番偉いはずのおっさんは消えた。
一体なにしに来たんだ....
まぁここで悩んでても仕方ない。調べてみるか?

「よっ、と」

ベッドから降りると足下にネコの耳まで付いた温かそうなスリッパが置いてあった。
......アルの趣味だな、これは。
それ以外に履くものが見当たらなかったにで取り合えずそのスリッパを履き部屋を見渡せば、ソファーの上に無造作に置かれたノートが視界に入った。
何故かそのノートが無性に気になり、手に取る。
普通のノート、だよな?
パラパラと開いてみると、そこには見知った人達の文字が並んでいた。





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エドあんたいつまで寝てる気? いいかげん起きなさいよ!
このウィンリーちゃんがどれだけ立派になったか語ってやるんだから!

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この馬鹿弟子!!
起きたら顔見せに来なさい! いいね!?

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エドワード君、今度うちに来てエリシアと遊んであげてくれる?
特製のアップルパイ焼いて待ってるわ。

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エド、ずーっと寝っぱなしで腹減らないか?
起きたら俺が美味いもん食いに連れてってやるからな!

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大将、気ーつけろよ。ブレタの飯に付き合ったら太るぜ?
まぁそん時は俺が遊びに連れてってやるからな! 楽しみにしてろよ?

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エド君、ハヤテ号がね軍用犬に正式登録されたんだ。
首輪のとこにカッコイイ紋章が入ったから見てあげて!

++++++++++++++++++++++++++++++++++++

図書館に新しい錬金術の本が入ったそうですよ。
世界の鉱物百科なんてのも有りました。

++++++++++++++++++++++++++++++++++++

エドワード君、お帰りなさい。
その言葉をまだ、あなたに言ってないの。
今度一緒に買い物に行かない? ぜひ全身コーディネートさせて欲しいわ。

++++++++++++++++++++++++++++++++++++

姉さん、僕は戻って来たよ。
言いたい事はたくさん有るけど、姉さんが起きてから直接言うね。
あの戦いで僕は何も出来なかった。情けないよね。
今からちょっと師匠に鍛えてもらってくるよ。

++++++++++++++++++++++++++++++++++++


実に彼ららしい言葉が多く並んでいた。





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君が眠ってから早い物でもう1ヶ月経ったよ。
街もようやく落着いてきた。

++++++++++++++++++++++++++++++++++++

先日、マルコーがハボックの足を治してくれたんだ。
まだリハビリ中だがアイツの事だ直ぐ戻ってくるだろう。
この先も長いからね、ハボックにもマルコーにも、もちろん私も背負う事にしたよ。

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今日はアルフォンスが目覚めたよ。
3ヶ月も眠っていたと伝えたら本当に驚いていた。

++++++++++++++++++++++++++++++++++++

ハボックが軍に復帰したよ。
今日は宴会らしい。明日からの業務に差し支えなければ良いんだが。

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明日アルフォンスがダブリスの師匠の元に行くそうだ。
君が目覚めるのを待たないのか? と聞いたら
暇なのは性に合わないなんて君みたいな事を言っていた。

++++++++++++++++++++++++++++++++++++

誕生日おめでとう。
君の未来が幸せである事を願おう。

++++++++++++++++++++++++++++++++++++

君は、いまどこに居るんだろうね?
直ぐ目の前に居るのに何も出来ない私はどうすればいいのだろうか?
そんな取り留めもない事を自問してしまうよ。

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近頃かなり温かくなってね?
執務室の窓から差し込む光についウトウトしてしまった。
目覚めは撃鉄を起こす音だったよ。

++++++++++++++++++++++++++++++++++++


エドワード。
早く帰っておいで。


++++++++++++++++++++++++++++++++++++



最後の言葉に涙が出そうになった。
逢いに行かなければ。
そんな思いが心の底から沸き上がり俺はノートをソファーへ戻し部屋を出た。


「ここ本当に大総統府の中なのか?」

部屋を出て10分ほど経った所で思わず呟いてしまったのは廊下の窓から見える景色の所為だ。
窓の外に見えるは、中庭だろうか?
木々には葉が茂り整えられた道には花まで咲いている。
セントラルシティの、しかも軍の中心部にも関わらず、街の喧噪は疎か訓練する軍人の声なども一切無く、小鳥のさえずりが聞こえるのだから。

「...にしても、体力落ちたなぁ」

ふぅぅ。と大きな溜め息を吐き、丁度見つけた窓際の待ち合いソファーに座り込む。
まさか階段を駆上がれないとは思わなかった。

「俺も、師匠のとこで修行し直さないと....」

この体力で師匠の前に?
む、無理だ! 猫やウサギがライオンや熊に戦いを挑むようなもんだ。
果てしなく恐ろしい。
........せめて受け身を取れるようになってからにしよう。
うん。
一瞬寒くなった背筋を誤摩化すよう、俺はしばらくボーッと中庭の陽だまりを見つめていた。






「鋼の?」

突如、鼓膜を震わせた声に俺は呼吸が止まりそうになった。
“はがねの” 俺をそう呼ぶ “ひと” は、ただ一人。
ゆっくりと振り返れば、珍しく呆然とした表情で固まった男が居た。


「“たいさ”」

自分でも聞こえるかどうかの小さな声が出た。
しかしその声にはっとした男は一気に間合いを詰め、その腕の中にエドワードを引き込んだ。






 

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その姿が見えた瞬間、ついに幻覚が見え出したのかと思った。
窓から射し込む春の光に照らされた君は太陽から抜出した女神のようだった。


“はがねの”


無意識に出てしまった声に自分でも驚いた。
ゆっくりと振り向いた君は、私を見て瞬きを繰り返した。
小さな声で “たいさ” と呼ばれた瞬間、全身に走ったのは歓喜だろうか?
堪らず君を抱き締めた。
腕の中に確かに感じる君の温もりが、これが幻想でない事を告げている。

どれだけそうして居ただろう?
君の温もりが消えない事でようやく安心できた。

「えーっと........大佐?」

私が大きく息を吐いた所で、躊躇いがちな声が聞こえた。
未だ私の腕の中に収まったままの君は、困ったような顔で私を見上げて来る。
鋼の、その顔はマズイぞ...

「は、放してくんない?」
「なぜ?」
「な、なぜって...あー...うー.......」

この状態に慣れないのか、そんな事を言う君。
だがね、半年だぞ?
半年も目覚めない君の傍で私がどんな気持ちだったと思うんだ。
しばらく我慢したまえ。

「だ、だから、誰か来たらどーすんだよ.....」

何て事言うんだ君は。
視線を周囲に配りながら言われた言葉に私は衝動を抑えきれなかった。
“うわっ!” と驚く君を引きずり近くの部屋に入る。
そして鍵を閉めたと同時にその唇を奪う。
薄く瞳を開けば驚いた顔の君。
その表情に嫌悪が浮かんでいない事に後押しされ、後頭部に手を回しさらに深く口付ける。


「んっ」

上手く呼吸が出来ず苦しそうな声を上げた君を一瞬だけ解放し抗議の声が上がる前に再び塞ぐ。
力が入らないのか次第に扉に沿って崩れ落ちる君。
しかし離れる事を許さず自分も座り込み角度を変えながら追いかける。
君の全身から力が抜け、これでもかと言う程味わった後、ようやく唇を解放した。

「....っはぁ...はぁ」

荒い呼吸を繰り返す濡れそぼった唇を親指で拭い、逆の手で腰を引寄せ抱き上げる。
まったくもって余裕の無い自分に苦笑が零れる。
たまたま入った部屋は実に私に都合良く、将官用の仮眠室。


「な、な、何なんだ! あんた!?」

喚く君に構わずそっとベッドに降ろす。

「何って、ロイ・マスタングだが? 酷いな、君は私の名前さえ忘れてしまったのかね?」

そう言ってニヤリと笑ってやれば、一瞬絶句したあと君は叫んだ。

「....そ、そういう意味じゃねー!!」
「じゃぁ何だい?」
「だ、だから...い、今、俺に何しやがった!!?」
「何ってキスだが?」

ダメだ久々の会話に頬が緩んでしまう。

「な、な、な.....」

顔を真っ赤にして言葉が出ないらしい君が可愛くって仕方が無い。

「ところで鋼の?」
「何だよ!!」
「もう質問が無いようなら続きに移りたいんだが?」
「は?」

ポカンと口を開けたまま固まっている君を押し倒し覆い被さる。
ようやく私の言葉の意味を理解したらしい君が慌てて身を捩るがそんな事を許す私では無い。

「ち、ちょっと待っ....」
「待たない....もう待てないよ、エドワード」

瞳を逸らさず告げた言葉に君は動きを止めた。
そんな君の頬を撫で、襟元を緩め、髪を掬いながら言葉を続ける。

「あの戦いが終わって君が目覚めるまで半年だ。直ぐ傍に君が居るのに話し掛けても触れても何も反応は無い。君がどこに居るのか正直、判らなかった。だが、今ここに君は居る。半年分の私の想い、受け取ってくれたまえ」

そう言い、緩めた首筋を辿り鎖骨に口付ける。
君は小さく息を呑んだが抵抗はしなかった。




*次は裏です(パスワード請求制)


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ぱちりと、いつに無くはっきりとした意識で目覚めたのはベッドの上。
窓から見える太陽の位置が朝ではない事を告げている。
今、何時なんだろう。
時計を探すべく起き上がろうと身体に力を入れた途端、あらぬ所に痛みが走った。

「っぅ...」

その痛みのお陰で自分が今ひっじょーにいたたまれない状態である事を理解した。
しかもその原因を作った輩は隣で静かな寝息を立てていたりする。
...ゃろう、何かムカつく。
起きたら一発殴ってやる。俺はそう心に決め、初めて見る大佐の寝顔をしばらく観察する事にした。
窓から吹き込む穏やかな風が僅かに湿った黒い髪を揺らす。
帰ってきたんだ....俺。
そう思った瞬間、目頭が熱くなった。
顔の上半分を両手で覆い心を落ち着ける為、深く呼吸する。
何度目かの深呼吸のあと聞こえたのはどこか憮然とした響きの声。

「君はこんなに近くに居ても私を頼ってはくれないのだね」

ゆっくりと両手を放せば少し拗ねたような男の顔。

「大佐...」

呟いた俺に軽く溜め息を吐いた大佐は少し濡れた目尻に口付けた。

「おはよう、エドワード」
「.....ぉ、おはよう」

目線を外してしまったのは決してワザとじゃ無い。
今度は違う意味で両手に顔を埋める。

「ところで、お腹空いてないかエドワード?」
「あー.....空いた、かも」
「食堂で何か見繕ってこよう、何が良いかね? 君の好きなシチューも有るぞ?
 病み上がりだから、もっとあっさりしたスープとかの方が良いかい?」
「....シチュー」
「了承した」


今の短い会話の間に身支度を整えたらしい大佐は、俺の頬に軽くキスをし微笑む。
そしてワンピースを渡すと部屋から出て行った。





第一章「目覚めのとき」 
end  




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──── さぁ、どう出る? 焔の錬金術師 ────






それはいつも通りの何てこと無い日だった。

出勤し、気心の知れた側近たちに「おはよう」と挨拶し「おはようございます」と返される。
司令室の自分の席に着いた所で、副官のホークアイ中尉が決済書類を持ってくる。
ここまでは本当にいつも通りだ。しかし今日は、真っ先に封書を手渡しながら爆弾発言をかました。

「大佐、南方司令部のファイスト・リカール大将より、東方司令部へ視察に赴きたいとの旨の打診が来ておりますが、いかがいたしましょう?」
「は?」

思わずマヌケな声を出してしまった。
仕方無いじゃないか。
まったくもって面識の無いお偉いさんから “会いたい” と突然言われたのだから。

「理由は何と?」

リカール大将には年頃の娘は居ないはずだから、見合いという訳では無いだろう。
訝しげな顔で訪ねる。

「将軍曰く、同じ場所で同じ人間に囲まれていると要らん固定観念が生まれる。何か新しい刺激を脳に与えてやらんと、と定期的に思いついた者を呼び出したりしてるんだが、丁度マスタング大佐の噂を聞いてな、そう言えば会った事は無かったと思い至ったんだ。しかし東方の要であるマスタング大佐を呼び出す訳にいかないだろう?だから私が出向こうと思ったまでだ。まぁ、よろしく頼むよ。との事だそうです」

内容を聞いている内に自然と視線が鋭くなる。顎の前で手を組み瞳を閉じ思案する。

「一体、私のどの “うわさ” に興味を持たれたんだか...」

どの? とは、自慢する訳では無いが、ロイ・マスタングと言う名には様々な...ある事、無い事含め “うわさ” が付いて回っているのだ。
有名な所で「イシュバールの英雄」「焔の錬金術師」不本意ながら「雨の日無能」「女たらし」「青二才」など、軍部上層部ならばもっと陰険な噂の方が多い。

「尤もらしい理由を挙げられてはいるが、何か裏があると見るべきだろうな」
「でしょうね。で、そうするんです?」

私の呟きに頷き、ハボック少尉が指示を仰いでくる。
しかし、中尉が「少しよろしいでしょうか?」と口を挟んできた。

「その、リカール大将は軍部の所謂、上層部とは一線を科しておられるらしく祖父曰く、英瞬豪傑で公平無私と言う言葉がぴったりで、陰質なやり取りが大嫌い。その様な話を持ち掛けた者は上官でも部下でも徹底的に排除したそうです」
「グラマン中将と面識が?」

意外だ。軍上層部と言えば自己の益しか考えない有象無象の集まりかと思っていたんだが...
目線で続きを促すと中尉はやや躊躇った。珍しい。彼女が言い淀むなんて。

「その、中将がおっしゃるには、今回の突然の視察はおそらく、鋼の錬金術師に関する事で大佐を見極めようとされているのではないか? との事です」

頭に浮かんだのは金色の残像。
しかし見極めるとは? 疑問が顔に出ていたのだろう。中尉が溜め息を零しながら呟いた。

「ですから、“たらし” と言われるマスタング大佐が、年端もいかぬ少年の後見人となった。まさかとは思うが、その子を手篭めになぞしていないだろうか? と、エドワード君を心配なさったのではないか? との事です」


.....司令部内に何とも言えない沈黙が降りた。部下からの憐れむ様な視線が痛い。

頭痛が起きそうだ。

「何つーか、大佐。御愁傷様です」

軽口を叩いた咥え煙草の部下を睨みつける.......はぁぁ、と大きな溜め息が零れる。
なぜ私がそんな疑いを掛けられねばならぬのか。
しかしこのまま何もしない訳にはいなかい。気を取り直し、中尉に尋ねる。

「で、グラマン中将は何と?」
「リカール大将が来られる時に合わせて呼び寄せては? との事でした」
「鋼のを?」
「はい」



.......どうなる事やら。







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「一体なんの用なんだよ?」

あん?とチンピラの如き様子で訪ねてくるのは、自分が後見を務めるはずの鋼の錬金術師。

「君は、上官に対する態度がなっていない様だね」
「それは、どーもすみませんねー」

まったくもって悪い何て思ってないだろう、君。

「...まぁ良い。本題に入ろう。この資料を見たまえ」

そう言って渡したのは20枚程度の報告書の束だ。
南方と東方との境に近い場所で違法な賭け事が行われ軍高官や貴族が多く参加している事、そして人身売買が行われている事などが挙がっている。
そう、これが今回 鋼のを呼び寄せた表向きの理由だ。
裏は先日の視察騒ぎ... いかん、今は考えないでおこう。気分が沈んでくる。

「これって南方の管轄じゃないのか?」
「否、これがギリギリ東方の管轄なのだよ」

読み終わったのだろう。書類こちらに投げて返す。

「で、俺に何をさせたいんだ?」
「話が早くて助かるね。今回の任務は南方にほど近いこの洋館で行われるパーティーへの潜入だ」
「それで?」
「私のパートナーとして一緒に潜入し、人身売買の確固たる証拠を」
「ちょっと待て!」

私の言わんとしている事に気付いたのだろう。話を遮るように声を発した彼に余裕の笑みで返す。

「何だね?」
「...あんたまさか、俺に女装しろ何て言わないよな?」
「私のパートナーが男な訳ないだろう? それに、人身売買されているのは十代の “少女”。幾ら中尉でも少女には変装できないからな。君なら問題なかろう?」
「大有りだ!!!」

やはり憤慨する彼。
そりゃぁ彼くらいの年になって女装しろと言われたら皆同じ反応を示すだろう。
しかしこれは任務。どれ程嫌がろうとも彼に拒否権は無い。

「何が問題なんだ? まさか一般のお嬢さんを連れて行く訳にいかないだろう?」
「う、そりゃぁ、まぁ...」

私の正論に一応は納得した様だ。良し、あともう一押しで何とかなりそうだな。

「それに君にもメリットが無い訳じゃぁない」

何だそれは? と、先を促しつつも疑いの眼差しを向けてくる。

「その洋館の持ち主は、グレイザー伯爵だ」
「!? グレイザーってあの?」
「悪名高いがコレクションしている錬金術の本は凄まじい数だ。勿論、今回必ず捕まえる。そうなれば伯爵のコレクションは軍で押収する事になる。膨大な数だからな、一冊や二冊減っても判らんだろう」

そう言ってニヤリと笑ってやれば、彼もやる気になった様だ。
同じく不適に笑って返してきた。

「その言葉、忘れんじゃねーぞ」
「二言はないとも。で? 」
「やってやろーじゃねーか、女装でも何でも」
「では、パーティーは二日後だ。中尉」
「はい」
「鋼のを徹底的に飾り立ててくれたまえ」
「畏まりました」
「は?」
「じゃぁ、行きましょうか? エドワード君」

これから何をされるのか判ってないのだろう。
「へ?」と言いながら、中尉に引き摺られて行った。
可哀想だがこればかりは仕方ない。諦めて中尉の犠牲になってくれたまえ。



どんな姿で現れてくれるのか、今から非常に楽しみだ。





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「じゃぁ、変な人に誘われても着いて行ったりするんじゃないぞ」
「てめぇ、俺をなんだと思ってやがる。ふざけてねーでとっとと行きやがれ」

そんないつも通りの言い合い。
では、と会場から出るため踵を返した時、首筋に鋭い視線を感じた。
思わず振り向いた先に居たのは鋼のだ。違う。彼では無い。
では誰だ?
今は微塵も感じられぬ気配に、先程の視線は気の所為かと思わせる。

「大佐? どうしたんだ? 何か気になる事でも有ったのか?」

いきなり振り返った私を不振に思ったのだろう、小首を傾けながら訪ねてくる様はその格好も相まって
非常に可愛い... 







今日の任務の為、ホークアイの趣味の元 飾り立てられた鋼のが司令室に姿を現した瞬間、その場に居た軍人(男ども)は全員固まったのだ。
本人の前では言えないが、年齢より小柄な体型に伸ばされた髪。
少し着飾れば、何とか見えるだろう。
そう甘く考えていた。しかし、その考えは素晴らしく裏切られた。
薄いピンク色の膝丈のワンピースに黒いカーディガン。
白い手袋と黒のブーツ。
少し開いた首元には華奢なチェーンに揺れるダイヤモンドのネックレス。
軽く結い上げられた髪は左の耳の上でまとめられワンピースと同色のコサージュが止められている。
そして、薄く施されたメイクが、年齢を少し引上げている。
ハッキリ言って、かなり身分の高い家の御令嬢にしか見えなかった。
今まで見たどの女性より美しかった。
この並の大人より賢く強く気高いこの子供がもし本当に女性なら.....
はっ! 否々、そうじゃなくて!! 取りあえず任務を遂行しなければ。

「否、妙な視線を感じた気がしてね。気の所為だったようだ。しかし君、気を付けたまえ」
「わーってるよ。さっさと行って来い」








「何でこんなとこに居るかなぁ....」

大佐が会場から出て行くのを確認し溜め息混じりに呟く。気分が重い。
実は先ほど大佐が感じたであろう視線の主の気配に心当たりがある。
悩んでもしょうがない、なるべく目立たない様行動しよう。
しばらく瞑目し気持ちを入れ換える。
取りあえず仕事だ。

大ホールと言うに相応しい会場、ガードマンが各出入口に配備。
皆一様に仮面を付けてはいるが裕福な家柄なのは間違いないだろう。
にしても胸糞悪りぃ趣味してやがる、参加者の半数が幼い子供を連れている。
おそらくその子供たちは人身売買されて来た子供だろう。
玩具として着飾られ、自我を無くした子供。


「今晩は、お嬢さん」


いきなり背後から声を掛けられ飛び上がりそうになった。
マジで勘弁してくれオッサン。




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「私に、な、に、か?」

頑張れ俺! 笑顔だ笑顔! ただそれだけを自分に言い聞かせ引き攣った笑顔を浮かべた。

「ははは、ご機嫌斜めかい? 眉間に皺を寄せて、可愛い顔が台無しじゃないか?」

この野郎。俺の神経を逆撫でしやがる。思いっきり睨み付けてやれば、苦笑が返ってきた。

「君は真面目だね? まぁ任務中なら仕方無いか」
「オッサン、何しに来たんだ?」
「勿論、君が心配で... 落ち着きなさい。冗談だから」

まったく誰に似たんだ。そんな怖い瞳で睨むなんて...
あぁ、あの女性(ひと)か。いかん、少し遠い目をしてしまいそうだ。
そっと頭に手を置き優しく撫でる。心配だと言うのは嘘では無いという気持ちを込めて。
人の心に敏感な子だ。少し困ったような瞳で見上げてくる。
あぁ、照れているのだな。まったく、本当に可愛い子だ。
しかし、ちゃんと説明しないと納得してくれないんだろうな、この子は。
そんな所はあの子にそっくりだ。

「偶然だよ。サウスで捕えた奴らがこのパーティーの招待状を持っていてね。調べてみたら胸くそ悪い事をやってる様だったから出向いてみたんだ。まぁ、無駄足だったようだが」
「無駄足? ここじゃ無いのか?」
「そう言う意味じゃ無い。マスタングも来ているだろう。あの男がこの様なことをしている連中を許す訳ないし、失敗するはずがない」
「!?」
「そう驚かんでも良いだろう? まぁ、私が軍人を褒める事は珍しいかもしれんが...」

私のセリフに目を見張る君に苦笑が零れる。

「彼は優秀だよ。おそらく、この国の未来にとって誰よりも必要な男だろう。現行の軍の改革を望む数少ない軍人で、この国と国民の命を背負う覚悟もしている。敵には一切容赦しないが、一度懐に入れた者には非常に甘い。それがいつか身を滅ぼすかもしれんがそれは周囲の者が許さないだろう。それ程に人を惹き付ける。軍人の中では数少ない信の置ける者だろう。でなければ、君たちを彼が保護下に置いたのを、私が黙って見ている訳が無いだろう? それに君だって判っているはずだ。だから彼を後見人として国家錬金術師になったのだろう? 彼でなければ君はこの道は選ばなかったはずだ。例え大総統が勧誘しようとも君は、国家錬金術師にならなかっらだろう? 違うかい?」

質問の形はとっているがこれは確信だ。
この優しい子が、いざという時、自分を切り捨てられない私を頼ってくる事は無い。

「違うのなら即座に否定したまえ。でないと巻き込んでしまうよ、エドワード?そんな顔をさせたい訳じゃ無いんだが... しかしな、お前は彼を甘く見過ぎている。あの年であの地位だぞ? 一見冷たく見えるが誰よりも情が深く部下を大切にしている。何よりお前が彼の下なら付いても良いと思ったんだろう? そんな奴が、そしてそいつが選んだ部下達が、そう簡単にお前たち兄弟を切り捨てるという判断を下すと思うかい?」

少し落ち込ませてしまったな。でも、その時が来てから後悔しても遅い。
これ以上君たちが傷付く事は何としても避けたい。

「さて、鋼の錬金術師。見えるかね? 私の右後方、挙動不振な男が居るだろう?動いたら追いかけたまえ。君たちの尋ね人の所まで連れて行ってくれるぞ」

そう言い、ポンっと肩に手を置き目線を合わせ、ニヤリと笑ってやる。
パチパチと数回瞬きをし、男を確認したのだろう。瞳に力が戻る。

あぁ、それが良い。君にはその瞳が良く似合う。

「あんた抜け目無いね」
「そうかね? まぁ良いじゃないか。運動前に何か飲むかね? あそこに飲み物がある」

取っておいで、と促す。あんたも居るか? と聞かれたので、是非。とお願いした。

「おや? そのコサージュ留め金が外れている。貸してごらん直しておいてあげよう」

そう言い、髪からコサージュを抜き取る。
元気良くテーブルに向かうのを見送ってから小さく話し掛ける。


今し方抜き取ったコサージュに...




「ところで、私に後見人の地位を譲らないか、マスタング?聞いていただろう?私はあの子たちが大事だ。君があの子たちを思うよりずっとね。私ならば君以上のサポートが出来る。悪い話では無いだろう。あの子にとっても、君にとっても。いずれ邪魔になる時が来るだろう。その時では遅い。君なら理解出来るだろう?...ふむ、そちらの声が聞こえないのが難点だが、私の声は届いたね? まぁ、考えてくれたまえ」






──── さぁ、どう出る? 焔の錬金術師 ────   
    





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