*藤袴 -thoroughwort-*
☆次回イベント予定☆ ★2017.8.20.SCC関西23 ふじおりさくら(ゴーストハント)★
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※無断転写は絶対にお辞め下さい!
■ 素敵絵師様より(絵茶ログ強奪/GH)'09.8.26
<素敵絵茶ログ☆>
素敵絵師様6人による絵茶を覗かせて頂きました♪
LS様/ハイゴ様/はる様/若宮様/美桜子様/アリズミ様
素晴らしい萌えの数々を本当にありがとうございます!!!
そしてサイトへの掲載許可まで頂き只管に感謝感謝感謝です!!!!
皆様にもこの幸せな萌えをvvv
あと僭越ながらSSSを書かせて頂きましたのでこちらからどうぞ♪
仕事が終わり、久しぶりに愛娘の顔を見ようとオフィスに行ってみた。
それが、いけなかった。
なんてタイミングが悪いんだろう、と今更ながらに思う。
まあ、結局どうせまた行くのだけど。
事は、ちょうどお茶の時間に起こった。
「麻衣、お茶」
例の如く、所長室から出てくるなりお約束の台詞を発したナル。
いつものことなので、麻衣は給湯室に行きお茶を淹れてきた。
相変わらずの手際の良さだ。
ちゃっかり一緒に、先程綾子が持ってきたゼリーの姿もあるけれど。
「はい、どうぞ」
紅茶とゼリーをナルの前に置けば、彼はやはりカップを手にとる。
視線は片手の本に固定され、ゼリーは綺麗に無視されていた。
もしかしたらすでに存在を忘れているのかもしれない。
「ナル、ゼリーは食べないの?」
「いらない」
「えー。美味しいのに」
唇を尖らせてゼリーを頬張る麻衣を、ナルは一瞥するだけ。
予想通りの反応に肩を竦めながら、麻衣はオレンジ色をしたゼリーを口に運んだ。
有名店だけあって美味なゼリーに表情を緩めた麻衣に、周囲もナルの態度など頭の隅に追いやった。
無愛想な仏頂面より、幸せそうに笑う(たとえそれがお土産のゼリーだとしても)方が、見ていて微笑ましい。
現に滝川もつられて相好を崩している。
彼は単なる親ばかなだけだが。
一人黙々と読書をしていたナルは、パタリと本を閉じた。
カップの中の残り少ない紅茶を飲み干し、軽く音を立てて置いた。
静かに立ち上がり、麻衣を見下ろす。
「所長室にお茶を」
「はーい」
「それから」
言葉を途切れさせ、スプーンに乗った最後の一口を口内に運んだ麻衣の後ろに回り込む。
反射的に見上げた麻衣の唇に、己のそれを重ねて。
ゆっくりと目を見開いた部下から離れると、ナルは唇で薄く笑みを作った。
「甘いな」
その時の麻衣や滝川の表情は見物だったと、後日、通称越後屋は笑顔で語った。
硬直した麻衣と滝川、笑顔の安原に呆れた表情の綾子。
三者三様の反応を見やると、ナルは何も無かったかのように所長室に戻っていく。
そして静かに閉められた扉の音に麻衣と滝川が叫び出すまで、あと三秒。
end
■ 月羽さまより (悪☆オンで/ナル麻衣)'09.9.9
<博士の突発的行動>
某所で大変お世話になってる『狂桜月夜』の月羽 湊渡さまより頂きましたー☆
この後の所長室が一体どうなったのか非常に気になります(笑)
月羽さま、ありがとうございました。
厳しい暑さも過ぎ去り、季節は秋へと差しかかろうとしていた。
夏の間ガンガンと酷使されていたエアコンも漸く休暇を言い渡され、沈黙している。
窓から流れてくる風は僅かな冷たさを含み、心地良い。
資料室から姿を現したリンは、風を感じ目を細めた。
喉が渇いたのでお茶を頼もうとしたのだが、麻衣の姿が見えない。
安原がまだ出勤していないため、声を掛けずに出かけたとは考えられなかった。
「谷山さん?」
視線を巡らせると、応接室のソファからはみ出した足が見えた。
覗き込めば、くぅくぅと気持ち良さ気な寝息を立てて眠る麻衣の姿にリンは苦笑する。
試験続きで寝不足だといっていた事を不意に思い出す。
一体いつから寝ていたのだろう。
しかもこんな薄着で、何も羽織らず。
このままでは風邪を引くし、何よりナルの拳骨が落ちるに違いない。
見て見ぬ振りをするのは憚られ、リンは麻衣を起こそうと細い肩を揺さぶった。
「谷山さん、起きて下さい」
「う・・・んぅ・・・」
軽く身じろぎ、麻衣は狭いソファで器用に寝返る。
その際、ただでさえ短いスカートが捲れてしまい、白くスラリとした太腿がむき出しになった。
思わず硬直してしまい、リンは眩しい脚線美を凝視してしまう。
はっと我に返り、とりあえずスカートを元に戻そうと手を伸ばした。
まさにその瞬間。
「何をしている?」
ぞくりとするほどの低音ボイスが背後から掛けられる。
その声に驚き、リンは動きを止めた。
そして冷静に自分のおかれている状況を分析し、一気に青ざめる。
どう見ても眠っている麻衣に邪な悪戯をしようとしているように見える、自分の体制。
リン本人にその気は全くないとしても、他者からはそう見えてしまうという悲しき現実。
そして背後に立つのは絶対零度のブリザードを吹き散らしたナル。
彼の放つ禍々しいオーラに、どんな悪霊相手でも立ち向かって行く式達が恐れをなして我先に逃げようとしている。
主の権限を持って、それだけは阻止しているが一体何時まで持つことやら。
「言い訳があるなら聞くが?」
それは言葉通り、ただ聞くだけ。
決して彼に対する処遇が軽くなるわけではない。
「ナル、誤解です」
無駄とは思いつつも自己弁護をしてみる。
「ほぅ?」
徐々に下がりつつある室温に背筋を冷やしながらも、リンはこの展開をどうやって打破しようかと思い悩んだ。
「な・・・る?」
ナルの声が聞こえたためか、漸く覚醒したらしい舌足らずな麻衣の声にリンは安堵する。
だが、しかし。
「なる~、だ~いすき」
極上に甘い声を出しつつ、麻衣はリンの手を引き己の胸に抱きこんだ。
思いっきり寝惚けている。
そして、一気に下がってしまった室温。
これはもしや氷点下にまでなってるのではなかろうか。
麻衣に抱きこまれたまま呆然としているリンには、柔らかな胸の感触を楽しむ余裕などない。
ビシバシと突き刺さってくる殺気が痛い。
不可抗力だと叫んだ所で、聞き入れてもらえるとは露ほどにも思えなかった。
「・・・麻衣、起きろ」
「いったぁぁぁぁ!!」
脳天に懇親の力を込めた拳骨を落とされ、さすがの麻衣も飛び起きる。
その際、抱き込まれたままのリンの首が嫌な音を立てたが、誰もその事には気付かない。
「あ・・・あれ?寝ちゃってた?うっわぁ!!リンさん!?」
驚き、麻衣は思わずリンを突き飛ばした。
フリーズしていたリンはなす術もなく体制を崩し、背後に鎮座していたテーブルに後頭部を打ちつける。
しかも角で。
ガツンと嫌な音が響いた。
しかし、狼狽している麻衣は気付かない。
「転寝をするほど暇なら仕事をくれてやろう」
うっそうと微笑むナルに麻衣は一気に血の気が引いた。
かなりの破壊力を持った笑みを間近で見てしまい、硬直した体は動かない。
ナルお墨付きの第六感はけたたましく危険警報を響かせる。
石像のように固まっている麻衣の身体を抱き上げ、向かうのは鉄壁の防音を誇る所長室。
「ご、ごめんなさーい!!許してーーーー!!助けてーーー!!」
助けを求める声は誰にも届かず。
無情にも所長室の扉は閉まった。
丁寧にも鍵まで掛けられて。
数分後、出勤してきた安原によって行き倒れているリンが発見された。
机に後頭部を預け、ぐったりしているリンの姿にさすがの安原も度肝を抜かれたという・・・・・・・・・。
end
■ 水杏りん様より(ナル麻衣+不憫リン)'09.9.11
<それはある意味、お約束>
『夢幻の檻』の水杏りん様より頂きました♪ さすがは不憫マイスター様vvvvv
リンさんの背中に漂う哀愁が堪りません(笑)素敵な不憫をありがとうございました。
「こん、の……あんぽんたーんっ!」
麻衣が、ナルの胸倉を掴んだ手を乱暴に揺する。
「なんっで、あんたはそういつも……いっつもそうなのよー!」
がくがくと、ソファに座ったまま締め上げられるナルの体が揺れた。揺すられる度、締まっていく襟元に、少しずつ息苦しさを感じたナルだったが、あくまでも涼しい顔で静かに告げる。
「麻衣、苦しい。締まるから手を離せ」
「やかましいわ、このバカチンがー!」
喧々囂々。暫く終わりそうもないこの喧騒を、二人の男女がぼんやりと眺めていた。
「……なぁ?」
「……何よ?」
「あの二人、確か付き合ってるんじゃなかったっけか?」
「そうね」
答えた綾子が口元にカップを運ぶ。ストローを咥えたまま、頬杖をついていた滝川が、
「なんかさー……」
「何?」
「もっとこう、さー。いちゃいちゃっていうか、うっとりうはうはピンク色でもいいんじゃないかって、思っちゃうわけよ、俺としては」
「ぶ。何それ! て言うか、あんたの思うそのピンク色ってどんなのよ?」
むしろ、それを聞きたいと、綾子は思った。
「ん? そうだな、例えばー…………」
綾子の問いで、滝川が空想に耽り始めた。やがて、眉間を押さえて、くっと辛そうに顔を歪めた。どうやら、いらぬ妄想にまで手を出してしまったらしい。打ちひしがれて、肩を震わせる滝川に、
「……ばか?」
綾子がとどめを刺した。娘もおバカなら、父親は更にその上をいく大バカ者だ。そして、何とか立ち直った滝川は、
「じゃぁ、お前! あれ見て何色を連想するよ?」
くいと顎で二人を示した。その方向を見た綾子は、
「確かに……ピンクではありえないわね。むしろ、闘牛の赤……」
言ってから、こほんとひとつ咳をついて誤魔化した。目の前で繰り広げられているのは、喧嘩する程仲が良いでも、夫婦喧嘩は犬も食わないでもなく。むしろ本気のガチバトル。やる気のない闘牛士に、血気盛んな牛が襲い掛かっているようだった。
「しっかしまぁ……よく飽きないねぇ。つーか、またナルは何をやらかしたんだ?」
毎度繰り返される闘いを眺めながら、滝川がぼんやりと呟いた。
「さぁね? でも麻衣があれだけキレてるって事は、またとんでもない無茶でもしたんでしょうよ」
「……だなー」
でなければ、麻衣があんなに怒り狂う事は、まずない。はぁと、深い溜息を零した滝川に、
「あら。やっぱ妬けちゃう? ……お父さん?」
にんまりと綾子が笑う。そして、滝川は、うっせ! と返した。
「……あれ? 綾子とぼーさんは?」
二人がいない事にようやく気づいた麻衣が、辺りをきょろきょろと見回す。まだぐいぐいと締めてくる麻衣の手首を掴んで、
「……さっき帰った」
気付かなかったのかと、ナルが鬱陶しそうに答えた。
「えー!? 久しぶりに会えたのにー! もう、ナルのせいだからね!」
「どうして僕のせいになるんだ。それと、いい加減離せ」
「あっ!」
手首を掴む手に力を入れて、ナルが麻衣の手を無理矢理引き剥がした。まだ怒りがおさまらない麻衣は、恨めしそうにナルを睨みつけた。その姿は、まるで逆毛を立てた猫のようだった。ナルは、溜息を吐いてから、
「…………分かった。僕が悪かった」
両手を軽く上げて、降参のポーズを取った。
「ぜんっぜん! 悪いなんて思ってないくせにー!」
だが、それは逆効果だったようで、麻衣の怒りの炎に油を注いでしまった。がおうと吼える麻衣に、ナルは額を押さえる。このままでは堂々巡りだし、いい加減静かにして貰いたい。
「……麻衣」
ナルは、麻衣の手首を掴んで素早く自分の懐に引き寄せると、攫うように接吻けた。その、思いもよらない早業に、麻衣の両目が見開かれる。そして、咄嗟にどんと胸を押して、ナルの腕から逃げた麻衣が、
「なっ、ななななななな、何すんのよっ!」
「何って……キスだろ?」
首まで真っ赤になる麻衣に、ナルがさらりと答えた。麻衣が、唇をごしごしと制服の袖で拭う。その行動に、むっとして眉を顰めるナルに、
「おのれ……不意打ちとは卑怯な! て言うか、こんな事じゃ絶対誤魔化されないんだからねっ!」
びしっと指を突きつけて、威勢よく麻衣が言い放つ。しかし、赤く染まった頬が、既にナルに懐柔されかかっているのを物語っていた。
「…………へぇ?」
きらりと、ナルの目に楽しそうな光が宿る。ソファから立ち上がって、がしっと麻衣の首に左腕を巻き付けた。
「ぐぇ! く、苦しい、ナル! ギブ、ギブ!」
ナルの腕を叩く、麻衣の体をずるずると引きずって、ナルが所長室へ向かう。麻衣を部屋の中に押し込めて、ナルがドアに鍵をかけた。そして、壁に追い詰めた麻衣の顔の横に、とんと手を置いた。
「な、何でございまショウ、所長サマ……?」
顔を引き攣らせて、強張った笑顔を作る麻衣とは対照的に、ナルがふっと不敵な笑みを浮かべる。そして、
「僕の部下は随分と優秀なようで、なかなか誤魔化されてくれないんですよ、谷山さん」
にっこりと偽りの微笑みを浮かべるナルに、今の状況も忘れて麻衣は、やっぱり誤魔化す気だったんかい! と心の中で突っ込んだ。そして、
「ですから……」
「へ?」
「その優秀な部下でも、確実に誤魔化せる方法を今から試そうと思いまして……」
「はい?」
きれいな笑顔は一瞬で引っ込めて、ナルは、いつもの意地の悪い笑みを浮かべる。その笑顔を貼り付けたまま、傾いたナルの顔が、ゆっくりと麻衣に降りてくる。そして、ナルを見上げる麻衣の顔が翳る。逃げようにも、既に追い詰められていて、どうしようもない。麻衣は、ぴたりと壁に背中をくっ付けたまま、近付くナルの顔を、冷や汗を浮かべて凝視した。瞳に、じんわりと涙が浮かんだ。そして、
「ひ……ひぇ、ぇ……ぎぃぇぁぁぁぁぁぁぁぁぁ~~~っ!?」
所長室から、麻衣の絶叫が聞こえた。
糖度の足りない、あるバカップルの、そんな日常の1コマ……。
― 合掌 ―
■ はる様より (悪☆オンで/ナル麻衣)'09.9.19
<例えるならそれは赤>
『キマグレダーリン』の はる様より “うっかり出来ちゃった” と
言われたナル麻衣を頂いてきました☆
タイトルが浮かばないから闇に葬られそうだった素敵作品に僭越ながら
朽葉がタイトルを付けさせて頂きました(ぺこり)
観葉植物で埋まったマンションの一室。
その緑の部屋に、荒んだ空気を漂わせる者が一人……。
「ちょっと、麻衣。あんた、もういい加減にしときなさい……」
リビングに置かれたテーブルの上には麻衣が空けたチューハイの空き缶が転がっていた。アルコールに弱い麻衣の許容量はそろそろ限界の筈で、地獄を見るのは自分なのにと、綾子は呆れながら麻衣を止めたのだが……。
「……ん、ん~~」
綾子の目の前で、麻衣は手にした缶の中身をくぴりと更に飲み込む。
「……あんたね…………人の話聞いてないでしょ?」
対する綾子は、冷えた透明なグラスを傾ける。麻衣が飲めば一口で落ちるであろう高い度数の酒を、容易く飲み下した。辛口のすっきりとした喉越しを楽しみながら、テーブルの上に置いた透き通った瓶に手を伸ばす。
女性的な印象を受ける細身のフォルムに、銀の箔押しが施された白いラベル。その楚々とした姿に反して、高いアルコール度を誇る。綾子のお気に入りの一つであるこの日本酒。普通の店では取り扱っていない上に期間限定で、出会って以来、毎年蔵元に訪れるか取り寄せるかして、毎年手に入れる一品だった。
今年は都合がつかずに蔵元に行けなかったのが大層悔やまれる。
手にした既に半分以上は空いた瓶のラベルを、綾子はじっと眺めた。
視界の隅で、麻衣の上体が揺れる。あっと思う間もなく、テーブルに突っ伏す麻衣に、
「ちょっと、だいじょ……」
「……なんかさぁ~」
綾子と麻衣の声が重なった。
「携帯と恋愛って似てるよね~……」
「………………はい?」
予想外の発言に思わず聞き返した綾子の前で、麻衣は空になった缶を爪で弾いて遊んでいる。テーブルの上を見れば、目を離した隙に空き缶がひとつ増えていた。手遊びに飽きた麻衣は、コンビニの袋から新しい缶を取り出して、
「あ! ちょっと……!」
綾子が止める間もなく、開けたばかりの缶に口を付ける。
「だってさ~、携帯って相手が取ってくれなかったら会話成立しないし。これが恋愛だったらカップル不成立!」
「メールって手段があるでしょうが」
「それだって一方的なもんじゃない! ……相手が返事くれなかったら、ただの片恋ー!」
「じゃぁ……留守で……」
「相手からの返事待ち!!!」
「………………」
びしっと指を突きつけて、滑らかに返って来る麻衣の回答に(しかも留守電は最後まで言わせて貰えなかった)、綾子は地雷を踏む覚悟を決めて、恐る恐る口を開いた。
「…………つまり」
「ん、ん~?」
「………………奴からのリターンが無い、と?」
その言葉に、麻衣の体がぴくりと反応する。
「ふ、ふふふ……ふ、ふふふふふふ」
手にした缶がテーブルにぶつかって、カタカタと音を立てる。その異様さに、やっぱり言うんじゃなかったー! と覚悟を決めた筈の綾子が早速後悔しているその前で、
「そりゃぁね、忙しいのは私だって分かってる、分かってますよ! でも、でもよ? 10回……いや2、30回中の1回位かけ直すか、あっちからかけてくれたってバチは当たらないんじゃないっ!?」
麻衣が、がおうと吠え始めた。
――やばい、来る……!
危険が迫っている事を察知した綾子は、そろそろと少し離れた場所にあるソファへと避難する。
「いっくら忙しいつったって限度ってもんがあるでしょー! しかも、しかもよ? たまぁ~に連絡がついたと思ったら、第一声が何の用だ? ってのはどうなのよ! 用がなきゃかけちゃいけないわけ!? あんの、あんの…………心霊オタクがぁーーー!!!!!」
ダン! とテーブルに両の拳を力一杯叩き込んで肩で息をする麻衣を眺めながら、綾子は美貌の少年の澄ました顔を思い浮かべる。思えば、突然やって来て、飲ませろ! と言った麻衣の形相には鬼気迫るものがあった……ような気がする。
――何やってくれちゃってんのよ、ナルー!!
二人の間に何かある度に被害を被るのは自分達なのだ。
ナルへの恨みを込めて、心の中で絶叫する綾子だった。
「でも……」
荒い呼吸を繰り返す麻衣をソファの上から眺めていた綾子が、グラスを傾けながら呟く。
「そんな事は百も承知でしょうが」
「う!」
言葉を詰まらせる麻衣に、綾子が更に続ける。
「無駄に顔いいし……て言うかそうよ! そこらの女より色白できめ細かいってどうなのよ、腹立つわー……」
「集中したら寝ないし!」
「……ナルシストだし。ま、今更だけど」
「ご飯だってちゃんと食べてるかどうか怪しいもんだし!」
「…………性格アレで、喋ったかと思ったら悪口雑言ばっかり」
「集中しちゃうのはナルだから仕方ないにしても、ちゃんと休まないと体壊すに決まってるのにー!」
バカヤロー! と天井を仰ぐ麻衣に、
「………………麻衣」
「なに?」
「あんた……怒るか心配するかどっちかにしたら?」
「う……ぐっ!」
言葉を詰まらせる麻衣に、綾子は、はぁと溜息を零して、
「まぁ、実際よくあんな一癖も二癖もある相手を好きでいられるわって感心はするけど?」
「そんな! ナルだっていいとこあるじゃんよー」
「例えば?」
「え? えーと……ほら、意外と潔いじゃない!」
「ああ、ぼーさん達に謝ったってアレね。……それは人として当然の事でしょうが」
「だってナルだよ!?」
「……あんたね」
褒めるかけなすかどっちかにしろと言われて、麻衣はまた言葉を詰まらせた。そして、
「はぁ~~」
深い溜息を零してテーブルに頬を当てる。
「なぁーんであんな奴がいいんだろー」
「ほんとにね~」
「そこは、そんな事ないわよって慰めてくれる所なんじゃ……」
「それはお生憎様。私、嘘はつかない主義だから」
言いながら、綾子はグラスに瓶を傾ける。
「いじわる~」
「はいはい。まぁでも……仕方ないんじゃない?」
好きなんだから、と続ける。頭では分かっていても心が付いていかない。それが人を好きになるという事だ。グラスを空にして、綾子が麻衣をちらり盗み見ると、麻衣が静かな寝息を繰り返していた。それを見て、
「ま、せいぜい青い春を楽しみなさい」
綾子はくすりと笑みを浮かべた。
もっと荒れようものなら無理矢理強い酒でも飲ませて落とそうかと真剣に考えていた綾子だった。知らずの内に我が身の暴走で危機を免れたことを麻衣は知らない。
きっと明日は地獄を見る事になるだろうと、深い眠りの中にいる麻衣を眺める綾子は思う。
「ま、それも自業自得だわね」
呟いた綾子は、ソファから立ち上がると麻衣にかけてやる毛布を取りに客室へ向かった。滅多に使わないせいで奥に仕舞い込んだ毛布を取り出すのに苦戦していると、
「…………ん?」
聞き慣れない音が聞こえた気がした。毛布を抱えた綾子がリビングに戻ると、フローリングに投げっ放しの麻衣の鞄から携帯の着信音が曲を奏でていた。
「……ああ、これ」
その緩やかに流れるバラードは、恋をする少女の幸福と切なさを歌ったもので、女子高生を中心に人気のある女性シンガーのヒット曲。もしかしたら麻衣は、その歌詞に自分を投影しているのかもしれない。きっと本人は無意識に違いないが、随分とかわいい所があるものだと、綾子は笑みを零す。そして、
「麻衣……麻衣、電話鳴ってるわよ?」
「ん、ぅ~ん……」
「ちょっと……起きなさいって、麻衣!」
何度揺すっても起きない麻衣に業を煮やした綾子が、麻衣の頬を引っ張る。それでも、麻衣は起きなかった。そして、やがて静かになった麻衣の携帯に、
「あ~ぁ……」
綾子は、残念そうな声を漏らして髪をかき上げた。過去に麻衣の携帯から聞いた事のあるものとは明らかに違うこの着信音。きっと彼専用に指定しているのに違いない。
――今かけ直せば繋がる筈だけど。
だが、そこまでしてやる義理は全くない。
「ま、いっか。……起きないほうが悪いんだしね……」
軽く溜息をついてから、綾子は麻衣に毛布をかけてやる。
例え後になって感謝されても、無理矢理起こす事の方が綾子としては心に重い。綾子の中で、ナルと麻衣、二人を天秤にかければ圧倒的に麻衣に傾く。
きっと、朝目覚めた麻衣は不在着信を見て、悲鳴を上げるだろう。そして、何故起こさなかったのだと半泣きになるに違いない。折り返し電話をしても、きっと今度はナルが繋がらない。
「ったく……飲めもしないのにヤケ酒なんて、分不相応な真似するからよ!」
これも身から出たサビと言うやつだ。綾子は麻衣の鼻をむにゅっと摘んでから、くすりと笑みを零して、
「まぁせいぜい頑張りなさい」
テーブルですやすやと眠る麻衣を振り返り、リビングの電気を消す。そして、そっと自分の寝室へと向かった。
麻衣の雄叫びが轟くのは、もうあと数時間の事。
― アーメン ―
■ はる様より (悪☆オンで/ナル麻衣)'09.12.6
<酔心地>
再び『キマグレダーリン』の はる様よりウッカリナル麻衣を頂きました〜
うふふふvv BL書き様からノーマルを貰う♪ こんな綾子姉(母)さん大好きです!!
はる様ありがとうございました!!!
※無断転写は絶対にお辞め下さい!
■ ハイゴ様より (軍服/GH男衆)'09.12.23
<軍服>
ぐんぷくーーーーーーーーーーー!!! 興奮が醒めよりません(笑←言葉遣いも変だw)
『HISA』のハイゴレイ様より悪霊メンバーの軍服モードを頂戴致しました。
見せて頂いた瞬間に絶叫したら下さいました♪ ハイゴ様ありがとうございます!!!