*藤袴 -thoroughwort-*
☆次回イベント予定☆ ★2017.8.20.SCC関西23 ふじおりさくら(ゴーストハント)★
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ある月の綺麗な夜
ふと思い立った姫は女房にバレぬよう簀子(すのこ)に出、ひとり月を眺めていた
家人も寝静まり、聴こゆるは風の音(ね)ばかりなり
しかしその静かな空間を破る者が現れた
ザッと音がしたかと思えば築地(ついじ)の上に影が差し月を遮った
そしてその影はそのまま屋敷の中、庭の隅に降り立った
月明かりに照らし出されしは濃紺の直衣(なおし)をまといし若君
その顔(かんばせ)は実に麗しくその光景に姫はしばし見蕩れていた
しかし若君の肩に浮かぶ朱色の染みを見付け眉をひそめた
「どうしたの、それ?」
家人に聴こえぬ様、やや潜めた声音で訊ねる姫
「お前には関係ない」
姫の杞憂など関係なく実に素っ気なく応えを返す若君
「人の家に勝手に入っておきながら?」
「.....」
しかし返された姫の正論に反論など出来るはずもなく押し黙る
そんな若君を見つめていた姫は、小さく息を零した
「こちらへ」
対屋(たいのや)へ促す姫の言葉に眉をひそめたのは若君
「その怪我じゃ帰るに帰れないでしょう?」
それだけ言うと姫は御簾(みす)の向こう側へ消えた
数瞬、躊躇ったものの姫の言葉に従う若君
しかし御簾の内側へと足を進めたが、そこに姫の姿は無かった
どうしたものか? と突っ立っていると、部屋の奥の御簾が揺らいだ
現れた姫の手には薬箱
どうやらそれを取りに行っていた様だ
「こっちに座って」
姫に進められるまま燭台近くの円座に腰を降ろす
「肩は出せる?」
首を傾け訊ねる姫に頷き直衣と袿(うちき)を脱ぐ
「血が....」
新たに流れ出た血に姫は慌てて傷口を布で押さえる
「何をどうしたらこんな怪我するのよ?」
小さな声で文句を言いながらも、貴族の姫とは思えぬ手際の良さで止血し包帯を巻き終えた
「良し。これで血は出ないと思うけど、どう?」
清潔な包帯を巻き終えた肩はしっかりと固定され痛みも殆ど無い
「助かった....ありがとう」
脱いだ袿を着込みながら言われた言葉に姫は瞳を瞬かせた
「どういたしまして」
そう言うと花が綻ぶように姫は笑った
そして “少し待ってて” と言うと薬箱を手に奥へと消えた
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