*藤袴 -thoroughwort-*
☆次回イベント予定☆ ★2017.8.20.SCC関西23 ふじおりさくら(ゴーストハント)★
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「白峰楓と申します」
その日の午後、青い花柄のワンピースを着た女性は、艶やかで短い髪を揺らし軽く会釈した。
黒く大きな瞳は優しい色を浮かべている。
やはりこの人からも、依頼人と同じく違和感を感じる。
普段の依頼人達が非友好的過ぎるのかもしれないが、それでも彼女たちは何かが違うとナルは感じた。
「所長の、渋谷です」
表面上は差し障りのない挨拶を交わし、席に着く。
ちなみに、この部屋に居るのはナルと楓の他にはメモを取る麻衣のみ。他のメンバーは別の仕事を割り振られており、ベースに居るリンだけが、インカムを通して会話を聞いている状態だ。
「早速ですが、いくつかお尋ねしたいのですが」
「なんでしょう?」
「こちらで起きる現象について、楓さんはどう思われますか?」
ナルの問い掛けに、おそらく質問の意図を図りかねたのだろう。楓は「どう?」と聞き返し首を傾げる。
「花や木の葉が一瞬にして染まるという現象は、普通では起こりえないことではないでしょうか?」
「そうね。だからこそ兄が依頼に伺ったのでしょうし」
補足された言葉に楓は頷く。
「その普通ではない現象を見て、どう感じられますか?」
「そうね……私自身は小さい頃から、つまり……その普通を知る前に見ているのね。だから正直なところ、こんな変わったこともあるものなのね。と思っているわ」
「では初めて見られた時のことは覚えていますか?」
「ええ。祖母から話を聞いていたけれど、聞くのと見るのはやっぱり違うから、感動したもの」
「その時のことをできるだけ詳しく教えてください」
ナルの声に促されるよう、楓は過去に思いを馳せる。
大切な思い出。
楽しくて嬉しくて温かくて……そして、愛おしい。
いつでも。ほんの少し想うだけで、鮮やかに甦る記憶。
「あれは………私が三歳になった頃だったと思うわ。それ以前は……見ていたとしても流石に覚えていなくって」
ごめんなさいねと苦笑する楓に、それはそうだろうと麻衣は頷く。
むしろ三歳の時のことを覚えているだけでも凄い。
「今年も綺麗に咲きましたよってメイドが教えてくれて、私は兄に連れられて屋敷の玄関から庭へと向かったの」
楓は懐かしさに浸りながら、ゆっくりと話しだした。
「それは朝でしたか?」
記憶を辿りながらされる話に、ナルが質問を挟む。
「……覚えてないわ、残念だけど。でも夕方ではなかったと思うわ。青空に紅の薔薇が映えてすっごく綺麗だったから」
楓の言葉に頷きナルは続きを促す。
「庭木の手入れをしていた庭師たちに見送られて、もう少ししたら金木犀も綺麗に咲くね、なんて話をしながら庭を散策していたの」
沢山の花を見ながら進んだ先に、昨日までは白かった薔薇が艶やかな紅に染まっていた。
「本当にキレイで、私たちはしばらく見蕩れてしまったわ」
どれくらいそうしていたかは分からないが、かなり長く見ていたことは確かだった。心配した執事が、幼い自分たちを探しに来た程だったから。
「怖いとは思われませんでしたか?」
「怖い?……いいえ、まったく。ただキレイだと、それしか無かったように思うわ」
「びっくりしなかったんですか?」
「しなかったわね……。なぜかしら?」
麻衣の問い掛けに、楓は瞳を瞬かせた。昨日までは白かった薔薇が、急に紅く染まった。確かにびっくりするだろう、知らなければ。しかし自分は知っていたのだ。紅く染まることを。
「やっぱり、祖母に聞かされていた所為かしら」
祖母は楓を膝の上に乗せ、優しく髪を撫でながら語っていた。
『この別荘にはとってもキレイな紅の薔薇があるのよ。でもね、その薔薇は最初は真っ白なの』
『まっしろなのにあかくなるの?』
『そうよ』
見てみたい!そう叫んだ楓に『きっと見れるわ、貴女なら』と言って笑っていた祖母。
あれはどういう意味だったのだろうか?
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