*藤袴 -thoroughwort-*
☆次回イベント予定☆ ★2017.8.20.SCC関西23 ふじおりさくら(ゴーストハント)★
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「イギリスに帰る事になった」
開口一番ただそれだけを口にした瞬間、果てしなく後悔した。
ちょっとした意趣返しのつもりだった。
毎年毎年、イベントの度に飽きもせずに悪戯なり嘘なりを仕掛けてくる麻衣に、仕掛けられる側の気分を味わえばいいと。
しかし僕は嘘の選択を誤った。
致命的なミスだ。
気付いた時には僕の目の前に、瞳を見開いたまま身体を硬直させた麻衣が居た。
「悪かった」
謝罪と共に強張った身体を引き寄せ抱きしめる。
ピクリと怯えるように震えた肩に、どれほど麻衣を傷付けたかを悟る。
「悪かった」
本心から繰り返し繰り返し告げる謝罪の言葉に、麻衣の身体から少し力が抜けた。
「……い、つ。かえる、の?」
「違う」
絞り出された細い声に、僕はただ抱きしめる腕の力を強める。
「違うんだ」
「……ち、がう?」
胸に預けられていた顔を持ち上げ、見つめてくる瞳は、いつもより精彩を欠いている。
そんな表情をさせたのが僕だということに、言いようのない思いが込み上げる。
「そう、違うんだ」
パチパチと瞬く目尻に、口づければ、ホッと吐き出される小さな吐息。
頬と髪の間に手を差し入れれば、静かに瞳が閉じられる。
そのことに安堵しながら、僕はそっと触れるだけのキスを落とす。
額にひとつで麻衣の手が僕のシャツを掴む。
頬にひとつで麻衣の身体が僕に預けられる。
瞼にひとつで閉じられた瞼が揺れる。
最後に唇にひとつで、ゆっくりと琥珀色の瞳が顔を覗かせる。
「すまない。嘘なんだ」
こんなつもりじゃなかった。
そんな言い訳など何の意味もなさない。
僕のついた嘘は、これ以上ない程に麻衣を傷付けた。
どれだけ謝罪を重ねても、一度傷付けられた心は修復できない。
けれど、それでも今の僕にできることは、謝ることと抱き締めることだけ。
「麻衣、悪かった。もう二度とこんなことはしない。殴ってもいい、詰ってもいい、好きなだけ罵って構わない。それだけのことを僕はしたんだ」
「……うそ?」
「そうだ」
「…………な、る。どっか……いか、ない?」
「行かない。僕はここに居る」
「……かえ、らな………いの?」
「帰る時は来ると思う。でも、今じゃない。それに、その時は連れて行く」
シャツを掴んだ指が小刻みに震えている。
僕はその手を包み込み、ゆっくりと持ち上げる。
「いつか僕がイギリスに帰る時。その時は麻衣、お前も一緒がいい」
「………いっしょ」
呆然と呟く麻衣に僕は頷く。
「僕の隣りに、麻衣に居て欲しい。たとえそれがイギリスであっても」
そう告げると僕は、持ち上げた指先に誓うように口付けた。
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