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*藤袴 -thoroughwort-*

☆次回イベント予定☆                                                ★2017.8.20.SCC関西23 ふじおりさくら(ゴーストハント)★                  

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「貴様!! 私を誰だと思っているっ!!!」
その日の始まりはそんな不愉快極まりないセリフからだった。

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特別御庭部隊のオシゴト。
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「申し訳ございません。本当に申し訳ございません」
「ふん! まったく教育の行き届いていない庶民はいかんな」
「嘆かわしい事ですね、父上」
「おぉ! お前もそう思うか? ハインツ」
「えぇ。でも父上、今日の所は許して差し上げてはどうです? 庶民の教育などたかが知れてるではありませんか」
「そうだったな、これは庶民であったな。おい、そこの者」
「は、はいっ!」
「ワシは心の広い上流貴族だからな。今日は勘弁してやろう。但し、次は無いぞ?」
「はい! ありがとうございます! 申し訳ありませんでした!!」
「帰るぞ!」
「「はっ!!」」



「何、アレ?」
思わず半目で訊ねてしまったのは仕方ない事だろう。
「よう、クルー。久々だな、何にする?」
「うん、久し振りオークさん。取りあえずリンゴジュース。マルクスさんも久し振りー♪ 元気?」
「おぅ、嬢ちゃん久々だね〜。俺は元気元気」
「そいつぁ体力だけが取り柄だからなぁ。はい、お待ち」
「るせぇー、オーク」
「ふふ、ありがとう。で、あれ何?」
「あれ?」
「そう、アレ」
「うーん。何っーか、お気楽貴族様って奴が気に入らない庶民を身分を盾に脅して喚き散らして帰ってったとこ。かな?」
「...へぇー。じゃぁ、あの土下座して謝ってた人は何かした訳じゃないんだよね?」
「名前をな、言い間違えたんだ」
「それだけ?」
「俺たちにとっちゃな。でもお貴族様には大問題だったみたいだぜ」
「何て名前か聞いた?」
「えーっと、フォルツなんとか卿...何だっけ、マルクス?」
「あの喚いてたのが、フォルトレーヌ卿 ヒリテル。その場を鎮めるふりして一緒に嘲笑ってたのが息子の、フォルトレーヌ卿 ハインツ。で、金魚のフンみたいにくっ付いてたのがお付きの家臣ってやつだね」
「ふーん。フォルトレーヌ卿ねぇ...親がバカだと子供もバカに育つのね」
「...はははっ! 違いねぇ!! 」
「嬢ちゃんも言うねぇ〜」
「ところでオークさん、今日のお勧め何?」
「今日は魚だね。良いの入ったぜ!」
「じゃぁそれ頂戴」
「俺は肉な〜」
「はいよ〜」

店主が厨房へ消えたのを確認するとマルクスの雰囲気が変わった。

「で、どうなさいます?」
「マルクスさん、敬語はダメだよ」
「そうは言われましてもねぇ。誰も居ない時は勘弁して下さい」
「まぁ、仕方無いか。で、宿は特定できる?」
「はい。カーターに後を付けさせました」
「では明日の予定を調べて」
「拝命致しました」





「いらっしゃい! うちの野菜買ってかない?」
「奥さん! 今日は良いヒツジが入ったよー」
そんな声の飛び交う活気ある市に一人の女性がやって来た。
「おじさーん、そのお肉くださいな♪」
「お? テティス、随分でっかくなったなぁ」
「あらまぁ、本当!! そろそろかい?」
「ええ、今月産まれる予定なの」
「それは、めでたい! 頑張って元気な子産んでおくれよ」
「ユーリ陛下の御代に産まれるんだ。幸せにならんといかんぞ」
「もちろんよ」
肉屋の夫婦に満面の笑みで返すのは、フェデリコ・テティス。
王都南側の住宅街に、小さな家を持つ普通の市民である。
家族は、街の宿で懸命に働く夫のみ。今月にはもう一人増える予定だが。
しかしそんな幸せいっぱいの彼女の人生にありえない転機が訪れようとしていた。


「テティス、やっぱり誰かに運んでもらいなよ」
そう心配そうに訊ねるのは果物屋の女主人、ルーシー。彼女の目の前には身重な女性。
既に両手に荷物を持っているのに、さらに今、オレンジを買ったのだ。
「大丈夫よ! これくらい」
「でもねぇ...」
どうした物か? と悩んでいたルーシーに一人の少女が声を掛けた。
「どうしたの? ルーシーさん」
「クルー! 久し振りだねー元気かい?」
「うん。ルーシーさんも元気そうだね。で、どうしたの?」
「実はね、この娘(こ)テティスっていうんだけど見ての通り妊婦だってのにこの荷物一人で運ぼうとするんだよ。わたしが運んでやれれば良いんだけど、店空ける訳にはいかないし。うちの旦那もさっき配達に行っちまってねぇ...」
「だから大丈夫...」
「「ダメだよ!」」
綺麗にハモったルーシーとクルーの声にテティスは押し黙る。
「うん。じゃぁ、私が手伝うよ♪」
「本当かい、クルー? 助かるよー」
「任して!! お姉さんのお家はどこですかー?」
勝手に話を進める2人にパチリと瞬きをしたテティスは苦笑した。
「じゃぁお願いします。えーっと?」
「フェイレン・クルーソーです。見ての通り王立軍に所属してます。皆、クルーと呼ぶのでテティスさんもそう呼んで下さい」
ピシっっと敬礼してみせるクルーにテティスの楽しそうな笑い声が重なった。




 

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