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*藤袴 -thoroughwort-*

☆次回イベント予定☆                                                ★2017.8.20.SCC関西23 ふじおりさくら(ゴーストハント)★                  

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ついったーでハロウィンお決まりの台詞をリプして下さった方に捧げた小話^^



■すき、だからすき。(ナル麻衣)


「ね……ナル。キスしてもいい?」
リビングに引かれたラグの上。クッションを抱きしめながら麻衣は問う。
「……なぜ?」
答えに少し間があったのは、問い掛けが意外だったからだろうか?
「したいから……じゃダメ?」
ナルを見つめたままの麻衣が、とどめとばかりに首を傾げながら尋ねる。
「………お好きに」
溜息と共に肩を竦めたナルは持っていた本を閉じた。
麻衣は嬉しそうに笑うと、クッションを放り出しナルの腕の中に滑り込んだ。
「………好きだよナル」






■ずるい人(ナル麻衣)


「ナル〜お茶入ったよ〜」
所長室のドアを軽くノックし首だけを覗かせてみれば、意外なことに部屋の主の姿は無かった。
「あれ……ナル?」
ここらか出るには事務所を通らないことには無理だ。
今日は居眠りしてない……はず!
そう思い所長室に足を踏み入れると、長ソファーに寝そべる黒い影を見つけた。
「また徹夜したな……」
思わず零れた声は溜息をも誘う。
つかつかとソファーの前まで行くと、あたしはしゃがみ込んだ。
………落書きしてやろうか。
ナルの横顔を眺めそんなことを考えていると、いきなり黒い瞳があたしを捕らえた。

「Trick or Treat?」

出逢った頃より少し低くなった声が魅惑的に囁く。
頬に伸ばされた手と近づいてくる影に、あたしは完敗して目を閉じた。






■しあわせをいうこと(ロイエド)


カリカリとペンを走らせる音が響く室内。
外は既に漆黒の闇が落ちている。
街に出ればオレンジ色の明かりに照らされ思い思いの仮装をした市民に出逢えることだろう。
しかし軍部司令官室ともなれば、その喧騒も遠く聞こえることもない。
カタン
最後の書類にサインを終えペンを置けば両肩にどっと疲れがのしかかる。
「     」
小さな呟きは部屋の中に溶けて消える。
窓の向こうに僅かに見える明かり。部下たちは全員街の警備に借り出した。
きっと彼もこの雰囲気を楽しんでいることだろう。
その姿を想像するだけで笑みが浮かぶ。
今までより近い場所に居る。
それだけに押さえ込んでいた想いが溢れ出しそうになる。
「いつか………」
いつかこの想いを笑い話にできる日が来たら、告白してみようか?
実は君が好きだったんだ、と。
……先は長そうだ。
ただ今は、君の幸せを祈ろう。
静かに穏やかに。いつかを気長に待ちながら。
「君は……笑っているといい」

「アンタは笑わないのか?」

!?
「はがね、の」
驚いた。
この時間、誰も私の部屋に近づくことのないように人払いしてあったはずなのに……
いや、彼には無意味か。
「アンタはさ……自分の幸せは考えないのか?」
「はがねの?」
彼の言葉の真意が分からず私はただ彼の名を呼ぶ。人生で1番頭が回っていない気がする。
「今日だってそうだ。部下の仕事肩代わりして警備に託つけてハロウィンに参加できるようにって……」
「それは」
違うという言葉は彼の視線に止められた。
「俺はさ、ずっとアンタを見てきた。アンタはみんなが笑顔にって言うけど、その中に自分をカウントしてないんだ。……なあ、アンタを幸せにしたい人はどうすればいい?アンタに笑って欲しい時、俺はどうすればいい?」
「はが、ね……の」
彼の右手が私の頬に触れる。
泣きそうな瞳が、ただ私を見詰める。
「俺、あんまり言葉選ぶの得意じゃないから、ちゃんと伝えれてるか分かんないけど、アンタに幸せになって欲しい」
瞬いた瞬間に瞳から零れ落ちた雫に私は思わず彼を抱き寄せた。
なにも言葉が出てこなくて、全ての想いを腕に篭めた。
ゆっくりと回された彼の腕に、その幸福に、閉じた瞼が少し濡れた。
「はがねの」





■懐かしき思い出(双子)


「Trick or Treat?」
かの幽霊が兄だった頃、そういえばそんな起こし方をされたなと、どこか懐かしく感じた。
「ち、ちょっとナル!お兄ちゃんを良い思い出にしちゃわないでよ!ナルの起床時間に合わせてTrick or Treat?って態々言いに来たお兄ちゃんに何か反応してよ!」
なんだか耳元が騒がしい。ついに幻聴が聞こえるようになったのだろうかと耳を撫でる。
「いやだからさ」
今日は確か、まどかから国際郵便が届くはずだったな。
前から欲しかったレポートと他にも新しい研究書を入れておくと言ってたはずだ。
2、3日書斎に篭れば読み終わるだろう。
「なーるー」
床に蹲っていじけている元兄の幽霊は………まあ放っておいても問題無いだろう。
「ちょ!」
バタン。
着替えて自室から出る。後ろから文句を言う声が聞こえていた気がするが、扉を閉めることで遮った。
付いて来ないあたり人であった時の感覚が消えていない様だ。
霊に関してまたひとつ知り得た情報を頭に書き留めて、僕は事務所へと向う。




 

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