*藤袴 -thoroughwort-*
☆次回イベント予定☆ ★2017.8.20.SCC関西23 ふじおりさくら(ゴーストハント)★
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「えーっと、失礼します。僕はルルックと申しますが、計画と言うのは今朝、お嬢さんが長老とのお話しの中で言われていた “やるべき事” に起因するのでしょうか?」
「はい」
「先ほど、デアルさんに “お嬢さんは確認の為に邸に行かれた” とお聞きしましたが、何を確認されに?」
「その続きはデアルから説明させましょう」
立て続けに訊くルルックにシェリウスさんは特に嫌な顔もせずに丁寧に答えてくれた。
上に立つ人(=お嬢さん)があんなだからかしら?
近衛、しかもかなり上位の地位の方にも関わらず私たちを見下したりしない。
今だって、シェリウスさんの言葉に頷いたデアルさんが周囲に頭を下げてから話し出した。
「今、お嬢さんは、アンファンソレール卿の邸にリューネ殿と行かれております。目的は情報収集の為。大方の情報は既に揃っておりますが、アンファンソレール卿の邸から出れない方々の情報が限りなく少ないのです」
「出れない....?」
「そうです。例えばルルックさん、あなたの妹さんレイティスさんの様な方々の事です。今の健康状態はもちろん、邸のどこに居るのかを調べに行かれてます。特にお嬢さんはその方々が怪我や病気を患っている可能性を大変危惧されており、ギニーと言う湖畔族の血を引く癒しの手の持ち主も連れてゆかれました」
「つまり、怪我や病気を治して下さると?」
聞き返すルルックの声が僅かに震えている気がする。
否、ルルックだけではない。デアルさんの言葉に街の人たちにもざわめきが広がる。
アンファンソレール卿の邸に行ったまま逢えない家族を心配する者は意外に多いのだ。
あちらで泣き崩れた女性は確かまだ30歳にも満たない息子さんが、向こう側でユーリ陛下に感謝の言葉を捧げている男性は奥さんが卿の邸に居たはずだ。
比較的冷静に周りを見渡している私でさえ目頭が熱くなりそうなのだから、彼らの心情は計り知れない。
「その場で治せるものについては。ただ、早急な治療が必要と判断された場合は連れ帰って来られる手筈になっております」
「連れ帰る.....あの邸から? そんな事が!?」
再び走るのはどよめき。今までどんなに望んでも無理だった事が叶うかもしれない。
その希望が、安堵と喜びを、そして今までの辛さを沸き上がらせる。
「保険は既に掛けてありますよ」
「?」
デアルさんの言葉に疑問を抱くも、もはや誰も声は出ない。
視線だけを向け、? マークを飛ばす私たちに、デアルさんは笑う。
「あなた方です。昨日ヒッツベルガー卿にお嬢さんは仰いました。長旅で使用人が倒れて困っていると。で、その使用人の代わりにあなた方を連れ帰っております。それに今日、ヒッツベルガー卿に長期的に貸して欲しいとお願いされてますから、同様の理由でアンファンソレール卿からも数人、上手く行けば十人以上借り受けて帰って来られる事でしょう。その中にひっそりと混ぜて来るハズです。あとは、飽きたとでも言って使用人の交換を願い出て、変装させた軍人と順次人の入替えを行います。ただ、やはり全員入替えとはなりませんので何人か健康な方々にお手伝いをお願いさせて頂く事となるかと思いますが」
デアルさんの言葉に誰かがゴクリと喉を鳴らす音が聞こえる。
「そ、それで...どう、なさるんですか?」
「内緒です」
きっぱりと言われた言葉に誰も反論出来なかった。
呆然と見つめるだけの私たちにデアルさんはこう続けた。
「まだ言えませんが、時が満ちれば、とだけ....」
「その時が来たら、教えて下さる....と?」
「はい。当然の権利ですから。我々を...何より、お嬢さんを信じてお待ち頂きたいと思います」
実に真摯に言葉をまとめたデアルさんに私たちは何も言葉を返す事は出来なかった。
しかし彼はそんな私たちを怒る事なく微笑んだ。
「急な話しで戸惑われるのは当然の事ですから、とりあえず、もっと細かい部分で知りたい事、不安な事、困っている事、言っておきたい事などありましたら、先ほど立ち上がりました軍人にお訊ね下さい。皆さんも彼らになら言い易いでしょうし。あと5日あります。その間に我々をご覧になって信じるに足るか皆さんでご判断下さい。まずは明日の朝にここにお越し頂ければ見えるものがあるかと.....」
「ここに...ですか?」
「はい。拒絶するのではなく見て頂ければ嬉しく思います」
そう少し寂しそうに微笑んだかと思えば、一瞬にして表情を楽しそうなモノに変えたデアルさん。
口調まで変わってて、ちょっと付いて行けないかもしれない....
「あ、そうそう♪ ここの入り口には警備を置きますので合図を覚えて帰って下さいね」
「警備?と合図?」
「はい。まず道を塞ぐように寝転ぶ者がおります。その者が “何か用か?” と訊ねますので、右手を腰に宛てて “立て” と言って下さい。“勝手に通れ” と返しますので、今度は左手を腰に宛てて “踏んでも知らないぞ” と言って跨いで通って下さい。その手順を間違えたら通れませんのでお気を付け下さい」
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