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*藤袴 -thoroughwort-*

☆次回イベント予定☆                                                ★2017.8.20.SCC関西23 ふじおりさくら(ゴーストハント)★                  

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「ねーってば、泳ごーよーぉ」
「お前はここに何をしに来たんだ?」

ナルの腕を掴み下から下から見上げるように窺うのは麻衣。
しかし普段ならともかく仕事の時は一切妥協を許さない博士様は冷たい瞳でその発言を切り捨てた。

「うー....シゴトです」
「判ってるのならとっとと機材を片付けろ」
「でーもー、調査終わったんだからちょーっとぐらい遊んでも良いと思うわけですよー」
「撤収」
「ふぁーい」

頑張って良い募る麻衣であったが、やはりというか何というか許可は降りなかった。
「折角の海なのにー」とぶーぶー文句を言いながらも麻衣は手を動かしケーブルを片付けてゆく。
ただ、ひとつの動作を繰り返す度に「つまーんないのー」「ケチなんだからー」などの文句が呟かれるのはご愛嬌。

「折角、水着持って来たのになぁ...」

ポツリと呟いた言葉は誰にも聞かれる事は無かった。



□□□□



「ありゃ? んー....いちにーさん......足りない」

ケーブルの数を数えていた麻衣はその数が1本少ない事に気付いた。
その呟きにデータの検証をしていたナルが視線を上げた。

「ナルー、ケーブルが1本足りないよー」
「ちゃんと見たのか?」
「見たよー。3回数え直したもん」

ぷっくり頬を膨らませた麻衣を一瞥するとナルは顎に手を当て何やら考えた。

「海岸側に置いた分はどうした?」
「あ......取って来る」

海の事は考えない様にしていた所為ですっかり抜け落ちていた。
ガックリ肩を落としつつ麻衣は部屋を出て行った。
そんな麻衣を目の端に捕えたナルは、しばし考えたのち自分もペースを後にした。



□□□□



「ぬぉぉぉぉ、良い天気ーーーーーー!! やっぱちょっと早いけど泳ぎたかったなー」

大きく伸びをした麻衣は残念そうにしながらも残っていたケーブルを回収した。
さて、ベースに戻ろうと振り返って目の前にあった黒い物体に驚いた。

「ほぇ、な、ナル!?」

ジロリと睨まれた麻衣は、笑って誤摩化した。

「どしたの?」
「別に」
「?」

何とも言えないナルの様子に麻衣は首を傾ける。
ケーブルの回収ひとつまともに出来ないとでも思われたんだろうか.....
とは言え、ベースに戻る事なくその場に留まっているナルからそんな不穏な空気は感じない。

「10分くらいなら構わない」

......つまり、ちょっとだけ海で遊んで良いと?
きょとんと見つめ返した麻衣にナルは「それとも帰るか?」と旅館に視線をやる。

「いやいやいや!!海、海で遊ぶ!!!」

慌てて叫んだ麻衣に「煩い」と眉を顰めるが特に何を言う訳ではない。
「うわーいvv」と、散歩に連れて来てもらえた仔犬の如くはしゃぐ麻衣は靴を放り投げ、パシャパシャと音を立てて
海の中へと入って行った。
ナルからすれば何が楽しいのか判らないが、これで麻衣の機嫌が急降下する事はないだろうと砂浜に佇んでいた。
そんなナルに気付いた麻衣は、ニヤリと笑うと両手で掬い上げた水をナルにぶっかけた。
「隙ありーーーーっ♪」と笑う麻衣にナルの顳かみに青筋が浮かぶ。

「.............麻衣」

ひじょーに低い声にも麻衣は特に怯む事はなく笑い海の中でくるくる回って遊んでいた。
ナルが海に入ってくる事はないと安心して....
確かに他の者ならば絶対零度の視線と心臓串刺しの厭味で終わるであろう。
いや、存在自体無視かもしれないが、相手は麻衣。
ナルがそれだけで終わらせるはずが無い事を彼女は失念していた。
波に気を取られていた麻衣に気付かれないよう海に入ったナルは、麻衣の頭を鷲掴むと同時に足払いを掛けて倒した。

「うみゃぁぁぁっ!!!」

盛大な悲鳴をあげて倒された麻衣を波が襲う。
頭までずぶ濡れになった麻衣を勝ち誇ったように(@麻衣視点で)見下ろすナル.....
ぷちっと麻衣の中で何かが切れた。

「なにするかこのヤロウーーーっ!!!」

そう叫んだ麻衣は立ち上がる勢いを利用し、再び大量の水をナルにぶっかけた。
両者の髪からポタポタと流れ落ちる海水と広がる不穏な空気。

ふふふふふ

仮にもコイビト同士が海に来てココまで殺伐とするとは.....
と、彼らの関係を知っている者ならば乾いた笑いを零すことだろう。

沈黙を破り「いざ勝負!!!」と、大声で叫んだ麻衣は、足を振り上げ水を飛ばす。
その攻撃を見切っていたナルは数歩左にズレ距離を取る。
麻衣は更に反対の足を振り上げるも今度はナルが間合いを詰める。
伸びて来たナルの手を払い除けると麻衣はその場所にしゃがみ水を掬う。
....ここに某少年が居たならば「見応えのある勝負ですねぇ」とでも言ったかもしれない。
「おりゃぁーっ!!」と年頃の女の子としてはあるまじき声をあげて渾身の一撃を繰り出す麻衣。
それを紙一重で躱し遂にナルは麻衣の身体を海の中に沈めた。



□□□□



「うぅぅ、負けたー」と言いながら麻衣はシャツの裾を絞る。
そんな麻衣を見つつ、大きく溜め息を吐いたナルは滴る水を鬱陶しそうに掻き上げた。
その姿に麻衣が見蕩れた事は内緒だ。
が、耳まで真っ赤ではどんな言い訳をした所で無駄であろう。
勿論ナルにもバレバレである。
しかしナルはその事には一切触れる事はせず「帰るぞ」とだけを言うとナルは踵を返した。
パチパチと瞳を瞬いた麻衣であったが、その何とも不器用な背中に向かってふわりと嬉しそうに笑うと
バシャバシャと勢いよく走り出しナルの腕にしがみ付いた。

「えへへへ〃 楽しかったねー♪」

一瞬、眉を顰めたナルには構わず麻衣はご機嫌に笑う。
もう一度大きく溜め息を吐いたナルは腕にぶら下がる麻衣はそのままに足を旅館へと進めた。

「寒い」
「うん。熱っーーい紅茶淹れたげるvvv」
「当然だな」

珍しくナルの方から呟かれた言葉に麻衣の笑顔は更に深まった。




end  





調査なのにリンさんはドコ行った!!って突っ込みは無しの方向でお願いします@真顔
というか「うふふ」「あははは」の少女漫画的せおりー部分が甘くならないこの2人に爆笑


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