*藤袴 -thoroughwort-*
☆次回イベント予定☆ ★2017.8.20.SCC関西23 ふじおりさくら(ゴーストハント)★
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期待なんて、絶対にしない。
「麻衣、来週の金曜誕生日だろ?おとーさんが盛大に祝ってやるからなー」
愛娘の淹れてくれたアイスコーヒーを堪能しながら、滝川は思い出したように麻衣に向き直った。
「滝川さんってば太っ腹ですね。ご馳走様です」
「コラコラ、誰がお前の分まで払うと言った。奢りは麻衣と真砂子だけだ」
「あら、私もですの?ありがとうございます」
「え〜、ノリオのいけずぅ〜」
「気色悪いシナを作るな!!」
「うわぁい、ありがとう!!ぼーさん大好き!!」
「よしよし、可愛いヤツめ!!」
デレッと相好を崩し、抱きついてきた麻衣の頭を撫でる滝川に綾子は大袈裟に溜息をついた。
「アンタね、誕生日当日は無理に決まってるでしょ?」
「何でだよ」
「馬鹿ね、気を遣いなさい。デートに決まってるじゃない」
「デートォ!?」
「いくらナルでも恋人の誕生日を忘れるなんてないんじゃありません?」
「きっとホテルとディナー予約してるわよ」
「そしてプレゼントは歳の数の薔薇の花束ですね」
「え〜、ナルがぁ〜?」
胡乱気に唸り、麻衣は想像してみた。
豪華なディナーを前に優雅に微笑むナル。
食事の後は夜景の綺麗なスィートルームへ。
そして、彼はそっと真紅の薔薇の花束を差し出す。
「麻衣、誕生日おめでとう」
穏やかに微笑み、そっと口付けを・・・・。
「怖っ!!」
ざっと血の気が下がり、粟立った腕をさする。
「あんたね、仮にも恋人に対してその反応は何よ?」
「だって、相手ナルだし。ありえないよ、私ここでバイト始めてから一度もナルから誕生日の話された事ない」
いつもイレギュラーズに無理矢理引っ張られて参加していた誕生パーティ。
気付けばいつの間にか彼はいなくなっていた。
祝いの言葉なんて一度たりとも貰った事はない。
「それが恋人になったからって急に態度変わると思えない。多分、私の誕生日だって覚えてないはず。私も教えてないし」
「・・・まあ、ナルですしね」
「仕方ない、綾子様が特製ケーキ作ってあげましょ!!」
「綾子スキーーー!!」
「ちょっと、危ないわよ!!」
「麻衣ってば単純なんですから」
「なにおぅ!!」
「うるさい」
ほのぼのとした雰囲気を一瞬にして霧散させたのは、天岩戸と化している所長室から姿を現したナル。
「よー、お邪魔してるぜ?」
「・・・全く。ここは喫茶店ではないと何度言えばわかるんですか?」
「いいじゃねーか。可愛い娘の顔を見に来たって」
「限度があると思うのですが?麻衣、お茶」
「はいはい」
「それと来週の金曜空けとけ」
「はいは・・・うぇぇ?」
麻衣を含む全員がナルに驚愕の眼差しを向けるも、本人は気にする事無く所長室へと姿を消した。
「良かったじゃありませんの、麻衣」
「今年の誕生日は忘れられない日になるんじゃないの?」
意味ありげな笑みを浮かべる綾子に麻衣は頬を紅潮させる。
「認めん、俺は認めんぞ・・・」
「あー、はいはい。うっとおしい」
「ノリオ、そんなに寂しいんだったら僕が慰めてあげますって」
「いらんわ!!」
周囲の喧騒も耳に入らず、麻衣は呆然と所長室の扉を見つめた。
ナルに指定された時間は昼前。
綾子に選んでもらった新しいワンピースに袖を通し、うっすらとメイクも施した。
指定時間二十分前、麻衣は逸る鼓動を静めながらインターフォンを押した。
「早かったな」
ドアを開けたナルは、常と違う出で立ちの麻衣に軽く眉を顰めた。
体を僅かにずらし、麻衣を招き入れる。
「どうしたんだ、その格好は?」
「どうしたって・・・・」
リビングへ通じるドアを開けると、床一面に散乱した書類が目に入った。
嫌な予感。
「ナル、今日って・・・」
「ああ、急遽本部から仕事が入って。資料の分類に時間をとってる暇がないから、頼もうと思ってな。時間外手当を出してやる」
「そ・・・うなんだ・・・」
足元が崩れるとは、こういう感じなんだろうか。
浮かれていた自分が惨めだった。
わかっていたはずだ、彼が自分に対してさほど興味を持っていない事に。
期待などしてはいけなかったのだ。
そうすれば、傷つく事はないから。
「じゃ、始めようかな。リストは?」
「ここに」
「わかった」
なるべく顔を見られないよう、俯いたままメモを受け取る。
「ま・・・」
「じゃあ、手当てのために頑張ります、所長!!」
努めて明るい声を出し、避けるかのようにナルから距離を取った。
仕事に集中すれば、余計な事を考えずに済む。
泣きたくはなかった。
彼に非はないのだから。
ただ自分が空回っただけ。
もう、慣れた。
手近にある書類を取ろうと伸ばした手は目的の物に届く前に、横から伸びてきた別の手に掴まれた。
「なにがあった?」
「どうして?」
「なぜ僕の顔を見ない」
「なんでもないって」
掘り返さないで。
刺激しないで。
この荒れ狂う醜い感情に気付かないで。
「麻衣」
強めの口調での呼びかけ。
顎を持ち上げられ、無理矢理視線を合わせられる。
じわりと視界が滲んだ。
「なぜ泣く?」
「ナルには関係ない」
「言え」
「断る」
「言え」
「いだだだだだっ!!」
頬を強く挟まれて悲鳴を上げる。
何が悲しくて、誕生日に恋人からこんな仕打ちを受けねばならないのだ。
「麻衣」
「もう、今日は何の日!!」
「は?」
「わかんないなら、この話はこれでおしまい!!離して!!」
腕を振りほどこうとするが男の力には敵わず。
それ所かますます力を込められ、麻衣は痛みに顔を顰めた。
「ナル!!」
「気に入らない」
「はあ?」
「その顔、気に入らない」
「すみませんね!!産まれてずっとこの顔ですよーだ!!」
悪態をつき、いっそ脛を蹴ってやろうかと右足を上げた瞬間、見越したかのように腕を引かれ、麻衣はバランスを崩した。
辿り着いた先はナルの腕の中で、逃げないよう腰に腕を回され麻衣は歯噛みする。
「忘れていたから怒っているのか?」
耳元で囁かれた言葉に、麻衣は呆然とナルを見上げた。
「え・・・?」
「誕生日、忘れていたから怒ってるんだろう?」
「知って・・・たの?誕生日・・・」
「毎年派手にぼーさん達が祝っていたからな。今、思い出した」
「別に怒ってないよ。自分自身に嫌気が差しただけ。ナルは悪くない」
「けれど、こっちでは恋人の誕生日は派手に祝ってやらなければいけないのだろう?それが彼氏としての使命だと聞いたぞ」
「誰に!?」
「安原さん」
何て事を。
全くのでたらめを信じきっているではないか。
「悪い、何の用意もしていない」
「別にいいよ。思い出してくれただけで十分」
心からの笑顔を向けてやる。
その言葉に嘘はなかった。
思い出されないまま、時が過ぎていくと思っていたのだから。
しかしナルは微妙な表情で思案し始めた。
「ナ、ナル?」
至近距離でのその表情は殺人的な破壊力を持つ。
離される事のない腕に戸惑い、麻衣はナルを見上げた。
「何の用意もしていない。けど、これだけはやれる」
「な・・・」
距離を一気に縮めて、ナルの唇が触れた。
柔らかく温かい感触に麻衣は目を見開く。
「お前を想う気持ち。僕の全て、お前にやろう」
「・・・・返せって言っても返さないよ?」
「もちろん」
「絶対返さないんだからね?」
「ああ」
「・・・・・・・ありがとう。最高のプレゼントだ」
ナルの胸に顔を埋め、涙声で麻衣がポツリと呟く。
髪を優しく撫でるナルの表情はどこか安堵しているかのようだった。
end
■ 水杏りん様より(フリー強奪/ナル麻衣)'09.7.2
<愛する記念日>
『夢幻の檻』の水杏りん様よりフリーを強奪しちゃいましたー♪
ぬふふふ。甘いよ〜vv 誕生日忘れててもナルってだけで甘いよ〜(笑)
安原さんグッジョブ!!!水杏りん様、ありがとうございましたー☆
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