*藤袴 -thoroughwort-*
☆次回イベント予定☆ ★2017.8.20.SCC関西23 ふじおりさくら(ゴーストハント)★
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「こん、の……あんぽんたーんっ!」
麻衣が、ナルの胸倉を掴んだ手を乱暴に揺する。
「なんっで、あんたはそういつも……いっつもそうなのよー!」
がくがくと、ソファに座ったまま締め上げられるナルの体が揺れた。揺すられる度、締まっていく襟元に、少しずつ息苦しさを感じたナルだったが、あくまでも涼しい顔で静かに告げる。
「麻衣、苦しい。締まるから手を離せ」
「やかましいわ、このバカチンがー!」
喧々囂々。暫く終わりそうもないこの喧騒を、二人の男女がぼんやりと眺めていた。
「……なぁ?」
「……何よ?」
「あの二人、確か付き合ってるんじゃなかったっけか?」
「そうね」
答えた綾子が口元にカップを運ぶ。ストローを咥えたまま、頬杖をついていた滝川が、
「なんかさー……」
「何?」
「もっとこう、さー。いちゃいちゃっていうか、うっとりうはうはピンク色でもいいんじゃないかって、思っちゃうわけよ、俺としては」
「ぶ。何それ! て言うか、あんたの思うそのピンク色ってどんなのよ?」
むしろ、それを聞きたいと、綾子は思った。
「ん? そうだな、例えばー…………」
綾子の問いで、滝川が空想に耽り始めた。やがて、眉間を押さえて、くっと辛そうに顔を歪めた。どうやら、いらぬ妄想にまで手を出してしまったらしい。打ちひしがれて、肩を震わせる滝川に、
「……ばか?」
綾子がとどめを刺した。娘もおバカなら、父親は更にその上をいく大バカ者だ。そして、何とか立ち直った滝川は、
「じゃぁ、お前! あれ見て何色を連想するよ?」
くいと顎で二人を示した。その方向を見た綾子は、
「確かに……ピンクではありえないわね。むしろ、闘牛の赤……」
言ってから、こほんとひとつ咳をついて誤魔化した。目の前で繰り広げられているのは、喧嘩する程仲が良いでも、夫婦喧嘩は犬も食わないでもなく。むしろ本気のガチバトル。やる気のない闘牛士に、血気盛んな牛が襲い掛かっているようだった。
「しっかしまぁ……よく飽きないねぇ。つーか、またナルは何をやらかしたんだ?」
毎度繰り返される闘いを眺めながら、滝川がぼんやりと呟いた。
「さぁね? でも麻衣があれだけキレてるって事は、またとんでもない無茶でもしたんでしょうよ」
「……だなー」
でなければ、麻衣があんなに怒り狂う事は、まずない。はぁと、深い溜息を零した滝川に、
「あら。やっぱ妬けちゃう? ……お父さん?」
にんまりと綾子が笑う。そして、滝川は、うっせ! と返した。
「……あれ? 綾子とぼーさんは?」
二人がいない事にようやく気づいた麻衣が、辺りをきょろきょろと見回す。まだぐいぐいと締めてくる麻衣の手首を掴んで、
「……さっき帰った」
気付かなかったのかと、ナルが鬱陶しそうに答えた。
「えー!? 久しぶりに会えたのにー! もう、ナルのせいだからね!」
「どうして僕のせいになるんだ。それと、いい加減離せ」
「あっ!」
手首を掴む手に力を入れて、ナルが麻衣の手を無理矢理引き剥がした。まだ怒りがおさまらない麻衣は、恨めしそうにナルを睨みつけた。その姿は、まるで逆毛を立てた猫のようだった。ナルは、溜息を吐いてから、
「…………分かった。僕が悪かった」
両手を軽く上げて、降参のポーズを取った。
「ぜんっぜん! 悪いなんて思ってないくせにー!」
だが、それは逆効果だったようで、麻衣の怒りの炎に油を注いでしまった。がおうと吼える麻衣に、ナルは額を押さえる。このままでは堂々巡りだし、いい加減静かにして貰いたい。
「……麻衣」
ナルは、麻衣の手首を掴んで素早く自分の懐に引き寄せると、攫うように接吻けた。その、思いもよらない早業に、麻衣の両目が見開かれる。そして、咄嗟にどんと胸を押して、ナルの腕から逃げた麻衣が、
「なっ、ななななななな、何すんのよっ!」
「何って……キスだろ?」
首まで真っ赤になる麻衣に、ナルがさらりと答えた。麻衣が、唇をごしごしと制服の袖で拭う。その行動に、むっとして眉を顰めるナルに、
「おのれ……不意打ちとは卑怯な! て言うか、こんな事じゃ絶対誤魔化されないんだからねっ!」
びしっと指を突きつけて、威勢よく麻衣が言い放つ。しかし、赤く染まった頬が、既にナルに懐柔されかかっているのを物語っていた。
「…………へぇ?」
きらりと、ナルの目に楽しそうな光が宿る。ソファから立ち上がって、がしっと麻衣の首に左腕を巻き付けた。
「ぐぇ! く、苦しい、ナル! ギブ、ギブ!」
ナルの腕を叩く、麻衣の体をずるずると引きずって、ナルが所長室へ向かう。麻衣を部屋の中に押し込めて、ナルがドアに鍵をかけた。そして、壁に追い詰めた麻衣の顔の横に、とんと手を置いた。
「な、何でございまショウ、所長サマ……?」
顔を引き攣らせて、強張った笑顔を作る麻衣とは対照的に、ナルがふっと不敵な笑みを浮かべる。そして、
「僕の部下は随分と優秀なようで、なかなか誤魔化されてくれないんですよ、谷山さん」
にっこりと偽りの微笑みを浮かべるナルに、今の状況も忘れて麻衣は、やっぱり誤魔化す気だったんかい! と心の中で突っ込んだ。そして、
「ですから……」
「へ?」
「その優秀な部下でも、確実に誤魔化せる方法を今から試そうと思いまして……」
「はい?」
きれいな笑顔は一瞬で引っ込めて、ナルは、いつもの意地の悪い笑みを浮かべる。その笑顔を貼り付けたまま、傾いたナルの顔が、ゆっくりと麻衣に降りてくる。そして、ナルを見上げる麻衣の顔が翳る。逃げようにも、既に追い詰められていて、どうしようもない。麻衣は、ぴたりと壁に背中をくっ付けたまま、近付くナルの顔を、冷や汗を浮かべて凝視した。瞳に、じんわりと涙が浮かんだ。そして、
「ひ……ひぇ、ぇ……ぎぃぇぁぁぁぁぁぁぁぁぁ~~~っ!?」
所長室から、麻衣の絶叫が聞こえた。
糖度の足りない、あるバカップルの、そんな日常の1コマ……。
― 合掌 ―
■ はる様より (悪☆オンで/ナル麻衣)'09.9.19
<例えるならそれは赤>
『キマグレダーリン』の はる様より “うっかり出来ちゃった” と
言われたナル麻衣を頂いてきました☆
タイトルが浮かばないから闇に葬られそうだった素敵作品に僭越ながら
朽葉がタイトルを付けさせて頂きました(ぺこり)
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観葉植物で埋まったマンションの一室。
その緑の部屋に、荒んだ空気を漂わせる者が一人……。
「ちょっと、麻衣。あんた、もういい加減にしときなさい……」
リビングに置かれたテーブルの上には麻衣が空けたチューハイの空き缶が転がっていた。アルコールに弱い麻衣の許容量はそろそろ限界の筈で、地獄を見るのは自分なのにと、綾子は呆れながら麻衣を止めたのだが……。
「……ん、ん~~」
綾子の目の前で、麻衣は手にした缶の中身をくぴりと更に飲み込む。
「……あんたね…………人の話聞いてないでしょ?」
対する綾子は、冷えた透明なグラスを傾ける。麻衣が飲めば一口で落ちるであろう高い度数の酒を、容易く飲み下した。辛口のすっきりとした喉越しを楽しみながら、テーブルの上に置いた透き通った瓶に手を伸ばす。
女性的な印象を受ける細身のフォルムに、銀の箔押しが施された白いラベル。その楚々とした姿に反して、高いアルコール度を誇る。綾子のお気に入りの一つであるこの日本酒。普通の店では取り扱っていない上に期間限定で、出会って以来、毎年蔵元に訪れるか取り寄せるかして、毎年手に入れる一品だった。
今年は都合がつかずに蔵元に行けなかったのが大層悔やまれる。
手にした既に半分以上は空いた瓶のラベルを、綾子はじっと眺めた。
視界の隅で、麻衣の上体が揺れる。あっと思う間もなく、テーブルに突っ伏す麻衣に、
「ちょっと、だいじょ……」
「……なんかさぁ~」
綾子と麻衣の声が重なった。
「携帯と恋愛って似てるよね~……」
「………………はい?」
予想外の発言に思わず聞き返した綾子の前で、麻衣は空になった缶を爪で弾いて遊んでいる。テーブルの上を見れば、目を離した隙に空き缶がひとつ増えていた。手遊びに飽きた麻衣は、コンビニの袋から新しい缶を取り出して、
「あ! ちょっと……!」
綾子が止める間もなく、開けたばかりの缶に口を付ける。
「だってさ~、携帯って相手が取ってくれなかったら会話成立しないし。これが恋愛だったらカップル不成立!」
「メールって手段があるでしょうが」
「それだって一方的なもんじゃない! ……相手が返事くれなかったら、ただの片恋ー!」
「じゃぁ……留守で……」
「相手からの返事待ち!!!」
「………………」
びしっと指を突きつけて、滑らかに返って来る麻衣の回答に(しかも留守電は最後まで言わせて貰えなかった)、綾子は地雷を踏む覚悟を決めて、恐る恐る口を開いた。
「…………つまり」
「ん、ん~?」
「………………奴からのリターンが無い、と?」
その言葉に、麻衣の体がぴくりと反応する。
「ふ、ふふふ……ふ、ふふふふふふ」
手にした缶がテーブルにぶつかって、カタカタと音を立てる。その異様さに、やっぱり言うんじゃなかったー! と覚悟を決めた筈の綾子が早速後悔しているその前で、
「そりゃぁね、忙しいのは私だって分かってる、分かってますよ! でも、でもよ? 10回……いや2、30回中の1回位かけ直すか、あっちからかけてくれたってバチは当たらないんじゃないっ!?」
麻衣が、がおうと吠え始めた。
――やばい、来る……!
危険が迫っている事を察知した綾子は、そろそろと少し離れた場所にあるソファへと避難する。
「いっくら忙しいつったって限度ってもんがあるでしょー! しかも、しかもよ? たまぁ~に連絡がついたと思ったら、第一声が何の用だ? ってのはどうなのよ! 用がなきゃかけちゃいけないわけ!? あんの、あんの…………心霊オタクがぁーーー!!!!!」
ダン! とテーブルに両の拳を力一杯叩き込んで肩で息をする麻衣を眺めながら、綾子は美貌の少年の澄ました顔を思い浮かべる。思えば、突然やって来て、飲ませろ! と言った麻衣の形相には鬼気迫るものがあった……ような気がする。
――何やってくれちゃってんのよ、ナルー!!
二人の間に何かある度に被害を被るのは自分達なのだ。
ナルへの恨みを込めて、心の中で絶叫する綾子だった。
「でも……」
荒い呼吸を繰り返す麻衣をソファの上から眺めていた綾子が、グラスを傾けながら呟く。
「そんな事は百も承知でしょうが」
「う!」
言葉を詰まらせる麻衣に、綾子が更に続ける。
「無駄に顔いいし……て言うかそうよ! そこらの女より色白できめ細かいってどうなのよ、腹立つわー……」
「集中したら寝ないし!」
「……ナルシストだし。ま、今更だけど」
「ご飯だってちゃんと食べてるかどうか怪しいもんだし!」
「…………性格アレで、喋ったかと思ったら悪口雑言ばっかり」
「集中しちゃうのはナルだから仕方ないにしても、ちゃんと休まないと体壊すに決まってるのにー!」
バカヤロー! と天井を仰ぐ麻衣に、
「………………麻衣」
「なに?」
「あんた……怒るか心配するかどっちかにしたら?」
「う……ぐっ!」
言葉を詰まらせる麻衣に、綾子は、はぁと溜息を零して、
「まぁ、実際よくあんな一癖も二癖もある相手を好きでいられるわって感心はするけど?」
「そんな! ナルだっていいとこあるじゃんよー」
「例えば?」
「え? えーと……ほら、意外と潔いじゃない!」
「ああ、ぼーさん達に謝ったってアレね。……それは人として当然の事でしょうが」
「だってナルだよ!?」
「……あんたね」
褒めるかけなすかどっちかにしろと言われて、麻衣はまた言葉を詰まらせた。そして、
「はぁ~~」
深い溜息を零してテーブルに頬を当てる。
「なぁーんであんな奴がいいんだろー」
「ほんとにね~」
「そこは、そんな事ないわよって慰めてくれる所なんじゃ……」
「それはお生憎様。私、嘘はつかない主義だから」
言いながら、綾子はグラスに瓶を傾ける。
「いじわる~」
「はいはい。まぁでも……仕方ないんじゃない?」
好きなんだから、と続ける。頭では分かっていても心が付いていかない。それが人を好きになるという事だ。グラスを空にして、綾子が麻衣をちらり盗み見ると、麻衣が静かな寝息を繰り返していた。それを見て、
「ま、せいぜい青い春を楽しみなさい」
綾子はくすりと笑みを浮かべた。
もっと荒れようものなら無理矢理強い酒でも飲ませて落とそうかと真剣に考えていた綾子だった。知らずの内に我が身の暴走で危機を免れたことを麻衣は知らない。
きっと明日は地獄を見る事になるだろうと、深い眠りの中にいる麻衣を眺める綾子は思う。
「ま、それも自業自得だわね」
呟いた綾子は、ソファから立ち上がると麻衣にかけてやる毛布を取りに客室へ向かった。滅多に使わないせいで奥に仕舞い込んだ毛布を取り出すのに苦戦していると、
「…………ん?」
聞き慣れない音が聞こえた気がした。毛布を抱えた綾子がリビングに戻ると、フローリングに投げっ放しの麻衣の鞄から携帯の着信音が曲を奏でていた。
「……ああ、これ」
その緩やかに流れるバラードは、恋をする少女の幸福と切なさを歌ったもので、女子高生を中心に人気のある女性シンガーのヒット曲。もしかしたら麻衣は、その歌詞に自分を投影しているのかもしれない。きっと本人は無意識に違いないが、随分とかわいい所があるものだと、綾子は笑みを零す。そして、
「麻衣……麻衣、電話鳴ってるわよ?」
「ん、ぅ~ん……」
「ちょっと……起きなさいって、麻衣!」
何度揺すっても起きない麻衣に業を煮やした綾子が、麻衣の頬を引っ張る。それでも、麻衣は起きなかった。そして、やがて静かになった麻衣の携帯に、
「あ~ぁ……」
綾子は、残念そうな声を漏らして髪をかき上げた。過去に麻衣の携帯から聞いた事のあるものとは明らかに違うこの着信音。きっと彼専用に指定しているのに違いない。
――今かけ直せば繋がる筈だけど。
だが、そこまでしてやる義理は全くない。
「ま、いっか。……起きないほうが悪いんだしね……」
軽く溜息をついてから、綾子は麻衣に毛布をかけてやる。
例え後になって感謝されても、無理矢理起こす事の方が綾子としては心に重い。綾子の中で、ナルと麻衣、二人を天秤にかければ圧倒的に麻衣に傾く。
きっと、朝目覚めた麻衣は不在着信を見て、悲鳴を上げるだろう。そして、何故起こさなかったのだと半泣きになるに違いない。折り返し電話をしても、きっと今度はナルが繋がらない。
「ったく……飲めもしないのにヤケ酒なんて、分不相応な真似するからよ!」
これも身から出たサビと言うやつだ。綾子は麻衣の鼻をむにゅっと摘んでから、くすりと笑みを零して、
「まぁせいぜい頑張りなさい」
テーブルですやすやと眠る麻衣を振り返り、リビングの電気を消す。そして、そっと自分の寝室へと向かった。
麻衣の雄叫びが轟くのは、もうあと数時間の事。
― アーメン ―
■ はる様より (悪☆オンで/ナル麻衣)'09.12.6
<酔心地>
再び『キマグレダーリン』の はる様よりウッカリナル麻衣を頂きました〜
うふふふvv BL書き様からノーマルを貰う♪ こんな綾子姉(母)さん大好きです!!
はる様ありがとうございました!!!
※無断転写は絶対にお辞め下さい!
■ ハイゴ様より (軍服/GH男衆)'09.12.23
<軍服>
ぐんぷくーーーーーーーーーーー!!! 興奮が醒めよりません(笑←言葉遣いも変だw)
『HISA』のハイゴレイ様より悪霊メンバーの軍服モードを頂戴致しました。
見せて頂いた瞬間に絶叫したら下さいました♪ ハイゴ様ありがとうございます!!!バタァーーン!!
「—————。」
「…ナルのばぁーかーっ!あんぽんたん!」
「ま、麻衣!?」
怒鳴りながら所長室から飛び出してきたた少女は怒りのせいか真っ赤な顔をして、驚いて固まっている俺達に
目もくれず自分のデスクで荷物をまとめると怖い顔のまま退社の挨拶をして事務所を出て行った。
もちろん、正規の退社時間だし、退社の挨拶のために所長に行っていたのだが…。
「…まぁーた喧嘩かぁ…。」
「追い掛けなくて大丈夫でしょうか?」
「うーん。」
「所長も相変わらずですねー。」
たくさんの人で賑わう街中でふと、目についた姿。
「…麻衣?」
流行りの店のきらびやかなショーウインドーを眺める横顔。
と、二人組の学生らしき男たちが何やら話ながら彼女に近付いて行く。
麻衣も手を振り返しているとこを見ると知り合いだろう。
(…待ち合わせ?)
楽しそうに笑っている麻衣は事務所で見せる姿と違いどこか別人みたいだ。
何とはなしにその姿を見ていた俺は麻衣が彼らに手を振って歩き出したのに気付いて思わず声をかけた。
「おーい!麻衣ーっ!」
思いの外大きな声に驚いたように振り向いた麻衣は直ぐに笑って近付いてきた。
「ぼーさん!びっくりしたよー。どしたの?」
「いや、ちょっと野暮用があってさ…麻衣こそ何してんだぁ?」
「ん?買い物…友達の誕生日プレゼント…。」
「ふうん。一人か?時間あんなら付き合わないか?ちーっと時間開いたんだ。おごってやっからさ?」
「わぁーいいの?」
「おう。」
時間的に食事のがいいだろうと入った洋食屋でハンバーグドリアをハフハフ言いながら食べている麻衣は
いつも通りで、事務所でのナルとのやり合いもたわいないいつものつっつき合いだったのだろう。
それよりも…。
「麻衣さっき一緒にいたの友達か?」
食後のデザートのシャーベットを食べていた麻衣になんとはなしに聞いてみた。
「ん?さっき?」
「ほら、俺が声かけるまえ、麻衣と仲良く話てたろ?」
「ああ、見てたの?うんクラスの子だよ。映画見てたんだって…カラオケ行くからって誘ってくれたの。」
「…へ、へー。行かなかったんだ…。」
「うん。今日ナルとバトったからさぁパーッと歌うのもよかったんだけどさぁ…。さすがに女子アタシ一人じゃねー。」
「そりゃそーだ。うんうん!」
(奴らはしごく残念そうだったがなぁ…。)
「…前に綾子にスッゴク怒られたんだぁ…心配しすぎだよねぇ。クラスメートなんだしさぁ…。」
「麻衣…男なんて油断ならんぞ!いかんいかん!」
「……でもさぁ…さっきのぼーさんのだって普通にナンパみたいだったじゃん。」
「………ま、まぁそういわれればそうだけどさぁ…。」
「いたいけな女子高生をナンパするいけないお・じ・さ・んだよー」
「おじさんはひどいぞ!せめてお兄さんで…。」
「だってぇ、パパぁ…。」
「……パパってよけい怪しいだろ!」
「はははは…。」
色恋沙汰の絡まないこの少女とのこんな会話はとても楽しい。
まぁ娘と言うより妹って感じか…。
「麻衣も普通にあんな顔してんだな…。」
「何が?」
「女子高生。」
「…当たり前じゃん。アタシはピチピチの女子高生なんだよぉ!」
「ははは、ごもっともでございます。」
事務所にいる麻衣しか知らないから…彼女が普通の高校生だということをつい忘れてしまう。
高校生の頃なんて煩い親や教師の目を盗んで、ただただ毎日面白いこと、楽しいことばっかりおっかけてたよなぁ…。
「パァパ?」
「……麻衣。人前でパパはやめて…意味が代わっちゃうから…。」
「アハハ…ごめーん。」
事務所にいる麻衣…。
確かにまだ学生アルバイトではあるけれど、働いて生計をたてていて…。
友達といる麻衣は学生時代を楽しんでいる普通の十代の子供らしくて…。
「やっぱり俺みたく年上と一緒にいる時とは違うよなぁ…。」
「ん?何?」
「麻衣は可愛いなぁ…。」
「なに言ってんのー?さっきお酒飲んだっけ!?」
「これからまだ仕事あんのよ。おじさんは。」
「頑張ってーっ!パパv」
友達といる時は友達との…。
事務所にいる時には事務所での…。
「…娘に美味いもんくわしちゃるためにパパは頑張ってお仕事しょっかねー!」
いつものようにがしっと首を抱えて頭をグシグシとかきまぜてやる。
「ヤメテヨー!!もう!髪がぐちゃぐちゃになっちゃうじゃんかぁ!」
真っ赤になって頬を膨らませて睨む姿もかわいくて、ついついまたやっちまうんだなぁ。
「麻衣帰るだろ?駅まで送るな。」
「ありがとう。今日はごちそうさまでした!」
「おう!」
「元気もりもり明日も所長に負けないようガンバロー!」
「ハハハ…。頑張れ。」
「おやすみなさーい!バイバーイ!」
ぶんぶん手を振って駅の中に消えていく姿。
(ははは、それ残されたほうが照れ臭いんだけどなぁ…。)
「さてパパは、ベース弾きのお仕事行きますか…。」
俺には俺の麻衣との付き合い方がある…。
スキンシップもそのひとつ。
(麻衣のクラスメートの男子にはちっと真似できないだろー?へへへ。)
「…そういやアレもあいつらなりの付き合い方なのかねー。」
今日の事務所でのナルと麻衣とのやり合いもなかなかに年相応で…彼らなりのコミュニケーションなんだろうな。
「…仲がいいんだか悪いんだか……今んとこ姉弟喧嘩みたいだけどな……。」
(美味いもんでパワーアップしたことだし、明日のバトルは激しそうだなぁvvv。)
end
■ 美桜子さまより(誕プレ/ほのぼの父娘デート)'10.3.7
<マイガール>
えへへv 美桜子さんから誕生日プレゼント貰っちゃいました♪
「ほのぼの父娘デート」ってリクさせて頂いたらこんな可愛いお話が!!
美桜子さんありがとうございましたー☆
みゃう、と幼児特有の高く甘い声が鳴く。
鳴き声に反応しない飼い主に再度鳴いてみるも、やはり何も返ってこない。
構って欲しい遊び盛りの五歳児は痺れを切らして、ついには飼い主の膝によじ登った。
ぺちぺちと小さな掌で頬を叩いて、大きな飴色の目で見上げてくる。
取り寄せたばかりの本を堪能していたナルは眉を寄せつつ、ぱたりと閉じた。
テーブルの上に本を置き、子猫を見やる。
「何だ」
子猫が何をしたいのか分かっているくせに、あえて問う。
子猫、麻衣はにこにこと笑顔のまま、口を開く。
「あ、そぼ!」
辿々しいながらも、言葉を発した麻衣の頭を撫でてやる。
喋ることに不慣れだったため、まだきちんと喋れないが、当初より随分とましになった。
拾ってきたリンの元から強制的に連れ帰り、言葉を教え始めると子供ゆえかどんどん吸収していった。
一緒にいた麻衣の兄である法生(十歳)は普通に話せたので、以前は麻衣の分も法生が話していたのだろう。
兄の過保護は、兄妹の境遇を考えると当然のものだった。
「本を読み終わるまで待て」
「やっ」
「遊びたいなら、隣に行けば良いだろう」
ナルとリンは同じ階の隣同士に住んでいる。
リンの部屋には法生もいるし、退屈はしない。
しかし麻衣はぶんぶんと首を横に振って拒否した。
「なる、が、いい!」
「僕と遊んで楽しいとは思えないが」
「たのし、もん!」
「そうか」
言葉だけで頷いてナルは麻衣を膝から下ろして立ち上がった。
テレビの横にある棚に置いてある、遊び道具を手にする。
細いプラスチックの棒に結んだゴムに付いた、ふさふさの毛玉。
いわゆる猫じゃらしだ。
猫じゃらしを麻衣の前に垂らし、両横へ動かす。
麻衣は目で追い、何往復かすると毛玉に手を伸ばした。
だが掴む前に毛玉は上へ避け、また掴もうとすれば今度は横に逃げる。
本能で毛玉を追いかけ始めた麻衣に対し、ナルはソファーに座り、片手で猫じゃらしを操作しながら
もう片方で本を開いた。
文字を追いながら、毛玉を捕まえられる前に避けてしまう。
どちらにも意識を向けていないと到底出来ないことだが、ナルは簡単そうにやってしまっている。
これがリンなら自分のことはさっさと切り上げて、法生の気がすむまで遊ぶだろう。
ああ見えて、リンは法生に物凄く甘い。
ぺらりとページをめくり、見慣れた横文字を頭の中に詰め込んでいく。
傍では毛玉を捕まえようと麻衣がぴょこぴょこ跳ねていて、必死で手を伸ばすも毛玉は麻衣の小さな
手をすり抜けていくばかり。
なかなか捕まえられないのと、読書をしているナルに気付き、麻衣は頬を膨らませた。
ナルはというと本に思考を落としていたため、そんな麻衣には気付かない。
猫じゃらしを持つ手が動いていたのは無意識と反射的らしい。
だからナルは、気付くのが遅れた。
このままでは毛玉も捕まえられない、ナルは本を読んでいてちゃんと遊んでくれない、と思った麻衣が
強行手段に出たのに。
「みゃあっ!」
床を蹴って勢いよくナルの膝にダイブした。
ナルは、突然のことに思わず固まった。
その隙に手の動きが止まってゴムの先で揺れている毛玉を掴み、ナルの本は閉じてソファーに落とした。
床やテーブルではなく、ソファーというところが麻衣なりの気遣いだ。
柔らかいソファーなら本を傷付ける心配はない。
「つかま、た!」
捕まえた、と輝かんばかりの表情で、握った毛玉をナルの目の前に持ってくる。
ナルはようやく硬直が解け、危ないだろうと叱ろうとして、やめた。
恐らく片手間に遊んでいた自分が悪いのだ。
それに本に集中して少し麻衣を焦らし過ぎた。
始めからちゃんと遊びに集中していれば良かっただけの話だ。
よくやったな、と麻衣の柔らかな髪を撫でると、ぴくぴくと同色の耳が動く。
嬉しげに無邪気な笑顔を浮かべる麻衣に、絶対に手放すなど出来ないなと改めて思った。
end
■ 月羽さまより (誕プレ/ナル麻衣にゃんこ話)'10.3.11
<こねこの生活>
月羽さんから誕生日プレゼントを貰っちゃいましたー☆
リクありますか?と聞いて下さったので、猫の日に書かれてた超可愛い子猫の
お話の続編をお願いしてみたら、快く書いて下さいましたvvv
月羽さんありがとうございましたーー
※林さんが滝ネコ(兄)と麻衣ネコ(妹)を拾うお話は月羽さんのお宅に^^〃
メインは林滝のBLサイトさん(一部ナル麻衣)です。ご理解の上ご訪問下さいね。
画像クリックで拡大表示されます
■ ハイゴ様より (絵茶/ナル麻衣漫画)'10.3.27
<たまにはこんな日も...>
ハイゴ様の素敵漫画はご堪能頂けましたでしょうか?
何とですね、朽葉が書いた小話を元に、ハイゴさんが漫画を描いて下さいました!!
この漫画の元となりました朽葉の駄文はこちら
最後になりましたが、素敵漫画をお描き下さいましたハイゴ様
どうもありがとうございました!!
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