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*藤袴 -thoroughwort-*

☆次回イベント予定☆                                                ★2017.8.20.SCC関西23 ふじおりさくら(ゴーストハント)★                  

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「誰を連れて行っても良いのですか?」
「えぇ、今させている仕事はありません。全員でも構いませんよ」
「まぁ...ありがとうございます。でもさすがにそれは宿に収まらないので.....でもお言葉に甘えて何人かお借り致します。見に行っても構いませんか?」
「あちらにですか?」
「えぇ。使用人の世話をさせるとはいえ、わたくしの目に入るでしょう?なら自分で選びたいと思うのですが、ダメでしょうか?」
「確かに目端にしか映らぬとはいえ気に入らない者は置きたくありませんな。あまり綺麗な所ではありませんが、ご案内致しましょう」
「よろしくお願いします」

内心の怒りを悟らせる事なくお嬢さんはアンファンソレール卿との会話を終わらせた。
ホントお疲れ様です。
あとで美味しい紅茶とお菓子持って行きますから、もーちょっと耐えて下さいね〜。


「足元にお気を付け下さい」
「.....ここは暗いんですね」
「申し訳ありません。斜面を利用して建てられたもので採光があまり良く無いのです」
「そうなんですか。何だか不思議な造りですね....あの扉は?」
「え? あぁ、あれは門番の詰め所です。使用人しか居ないとはいえ警備は必要ですから」
「では、あちらは?」
「あれは勝手口です。外出許可を取った者が所用で出かける際に使用します。わざわざ邸を通ってゆくより街に近いのです。あぁ、着きました」
薄暗い階段をアンファンソレール卿の案内で降りて行った俺たち。
お嬢さんはごく自然に必要な情報をきっちり訊いて下さるので非常に有り難い。
これで詰め所と裏口は簡単に押さえられた。
「こちらが使用人用の広間です。全員集まるように通達しておきましたので、ごゆっくりご覧下さい」
「ありがとうございます」
恭しく頭を下げたアンファンソレール卿は悦に入った笑みを浮かべた。
嫌な顔しやがる。
そう思った時、バタバタという慌ただしい足音と「旦那様!! 旦那様!!」という叫び声が聞こえた。

「何だ騒がしい! お客様に失礼であろう!!」
「も、申し訳ございません。しかし緊急にお耳に....」
「黙れ!! 大変お見苦しい所を御見せし申し訳ありません、ベンカー卿。少し席を外さねばならぬようです」
「こちらこそお忙しい所、お相手ありがとうございました。お仕事でしょう? どうぞわたくしの事はお気になさらずお戻り下さい。場所は判りましたのであとは自分で参ります」
「そうですか? 本当に申し訳ない.....何か不明な事がございましたら回りの者にお尋ね下さい」
「では私がご案内を....」
「あ、あの! ヒッツベルガー卿にもお手紙が....」
「何?仕方が無い.....ベンカー卿、申し訳ありませんが」
「どうぞお気遣いなく」
慌てて邸の方に帰ってゆくアンファンソレール卿とヒッツベルガー卿を笑顔で見送られるお嬢さん。
ここへ来てから一番の笑顔ですね....気持ちは判りますが。
「アンファンソレール卿もお忙しそうですし、早く選んで帰りましょう」
「はい、お嬢様。わたくしもお手伝いさせて頂きます」
「うん、お願いねギニー」
「ではご案内させて頂きます!」
にっこりと微笑みあうお嬢さんと軍曹殿に向かって門番がビシっと敬礼した。
ガチャリと広間の扉を開けた門番は中の人たちに向かって大声で叫ぶ。

「静かに!! こちらは旦那様の御客様でベンカー卿 ルーシェ様と仰られる。皆、失礼の無いようにと旦那様からの御言葉だ!!」
「ご案内ありがとうございました。皆さんもお仕事が有りましょう?勝手に見させて頂きますので、ここまでで結構です」
「否、しかし....」
「結構です。1時間半ほど掛かるかと思いますがどうぞお気遣いなく」
「.....そうですか? で、では、何かございましたら御呼び下さい」
「えぇ、ありがとうございました」

お嬢さんがにこやかに、しかし反論は許さぬよう退出を促した。
というかあの微笑みで「結構です」って言われて逆らえる奴なんぞ居ないだろう、うん。



これでこの場には我々しか居ない。
去ってゆく門番たちの足音と気配を確認しお嬢さんに頷く。
「もう大丈夫ですよ、お嬢さん。近くに警備兵はいません」
「ありがとうスケさん。ギニー、時間がないけどお願いね」
「はい、早急に」
さて、とお嬢さんが振り返ると、そこに居た人々は一斉に頭を垂れた....こりゃぁまた、お嬢さんの機嫌が悪くなりそうだ。
しばらく無言だったお嬢さん。
なんと声を掛けようか迷っていたようだが大きな溜め息と共に口を開いた。
「はぁぁ....えーっと、私の声は聴こえますか? 聴こえてたら顔を上げて下さい」
大きくはないが、ハッキリとしたお嬢さんの声に躊躇いがちに顔が上がる。
「....そこの人は?」
「も、申し訳ございません! 直ぐに起こしますので!!」
「体調悪いの?」
「あ、あの...」
微動だにしない一角に気付かれたお嬢さんが心配そうにお尋ねになれば、近くに居た男は言い難そうに言葉を濁す。
その様子に眉を顰めたお嬢さんに軍曹殿が頷かれる。
「ギニー」
「はい! すみません、失礼致します。お顔を拝見させて下さいね...あら、あまり顔色が良くありませんね、いつからです?」
白衣の悪魔もといお嬢さん命名、白衣の天使の如く治療を開始した軍装殿はさて置き、俺はお嬢さんが見付けられた別の怪我人の元へゆく。





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