2011/11/13 (Sun) Cynthiaの守護 ５

※猟奇的な表現が入りますので苦手な方はご注意下さい※

ぁ．．．．赤、い．．．


何だ．．．．．コレ、は．．．．



ピチョン．．．．．ピチョン．．．．と滴の落ちる音がする
薄暗い空間の中、その暗さにやっと慣れてきた瞳に写ったのは、赤

大きめな倉庫の冷たい床一面に広がっていたのは、かつて人であったモノ
子供も．．．　大人も．．．　男も．．．　女も．．．　
一切関係なくバラバラに刻まれ放置されている

先ほどから聞こえるのは無造作に積み上げられた身体から落ちる血の音

どれが誰の腕で、どれが誰の脚なのか、判別がつかない
ただひとつ判るのは、どの顔も恐怖に染まり絶命していること


カランっ．．．　と乾いた音を立てて何かが落ちた
用意した中でも一番小さいナイフ
それは “僕” の手から地面に吸い寄せられるように落ちていった

もう必要ない

だってもう切るモノがないから
愉悦の笑みが “僕” の顔に浮かぶ

実に愉しかった
あの恐怖に叫ぶ子供
我先にと逃げようとする男
十字を切り神へ祈る老人
涙を流し命乞いした女


．．．．警察って奴は無粋でいけない
“僕” が先程までの光景を反芻している最中だというのに

仕方が無い．．．．．　最期の仕上げだ
そう言って “僕” はベルトに差込んだままのサバイバルナイフを抜いた

“僕” は君たちなんかに捕まらないよ
あぁ、悔しがる君たちの顔、実に愉快だ！！

そして “僕” はゆっくりと、しかし確実にサバイバルナイフを喉に突き立てた


「っ！！！」




ドクドクドクドクドクドク
心臓が早鐘を打つように激しく鼓動を刻んでいる。
はぁっ．．はぁ．．と浅く息を吐き震える指先を胸元で握り締める。
瞳を閉じれば先程の光景が鮮明に脳裏に浮かぶ。頭を大きく振り襲う衝動を頭から追い出す。
はぁぁっ、と大きく息を吐き出すと少し落着いた。
そして誰がの声が聞こえる事に気付いた。


「素晴らしい！」
「次はこれを視てくれないか？
「否、先にこっちを」
「それよりこっちはどうだ？」
数人の男たちの声が聞こえる。ここは研究室だろうか？ 窓はなく薄暗い電球が僅かに周囲を照らしている。
男たちは全員白衣を着、机の上には様々な品が並んでいる。
時計、指輪、髪留め、おもちゃ、片方だけの靴、破れた衣類、引き千切られた人形．．．．．そして血の付いたナイフ。

“サイコメトリー”

その単語が頭に浮かんだ。
震えそうになる身体を叱咤して視線を男たちの後方へずらせば、革張りの大きな椅子に10歳くらいの子供が座っていた。
顔色は悪く、呼吸も浅い。噛み締められた唇と全てを凍えさせるような瞳が痛い。
「．．．．．ナル」
視界が白くぼやけそうになるが手で拭いやり過ごす。
私はこれを最後まで見なければいけない。
「では次はコレにしよう」
「頼んだよ、オリヴァー」
愉しそうに笑いながら男が差し出したのは靴。ナルの表情は動かない。
否、僅かに眉を顰めんがらも静かにその靴に手を伸ばす。触れた瞬間、苦悶に歪む顔。ギリリと合わされた奥歯。
そして額に浮かぶのは脂汗だろう。
「．．．っ．．．．．はぁ」
靴から手を放し僅かに息を吐いたナルに即座に研究員からの質問が飛ぶ。
「どうだったね？」
「．．．．．死んでいる。殺されてから車に乗せられ、家からさほど離れていない墓地に埋められた」
先程より一段と顔色の悪くなったナル。もう、限界なのだ。しかし尚も男たちは次に何を視せるのか相談している。