*藤袴 -thoroughwort-*
☆次回イベント予定☆ ★2017.8.20.SCC関西23 ふじおりさくら(ゴーストハント)★
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きっかけの恋のお題
06. 同じスピードで
とくん………とくん………
緩やかに刻まれる音は、ナルの心に深い安堵をもたらした。
母親に抱き締められた記憶はないが、赤ん坊が母親に抱かれると泣き止む理由が少し理解できた。
「……ナル?」
寝たの?と訊ねる声が、優しく髪を撫でる手が、そして何よりもその温もりが、こんなにも愛おしく感じる日がくるとは思いもしなかった。
片割れが聞いたらきっと「どうしたのナル!?もしかして熱でもあるの!?」と大騒ぎしそうだ。
「なんか楽しいことでもあったの?」
「…………なぜ?」
何の前振りもなく聞かれた言葉に、ナルは瞳を瞬いた。
どう考えても思い当たる節がない。
「だって今、笑ってたでしょ?」
「………………」
鳩が豆鉄砲くらったとはこんな時に使うんだっただろうか?
言葉を脳内で反芻して、瞬きを繰り返す自分なんて滅多にない。
「笑っ……て、いたか?」
「うん。なんか諦めの苦笑っぽかったけど、嫌な感じじゃなかったから、ご機嫌なのかなーって。違うの?」
「どうだろうな?」
「あたしが質問してるんだけどなー」
質問に疑問で返したナルに、麻衣は笑いつつもその頬を突っつく。
「別にはぐらかしてるわけじゃない」
少し嫌そうに麻衣の指を避けると、その伸びてきた手を握り込む。
2人だけで完結していた世界。
マーティンとルエラは、そんな僕らに寄り添うように世界を広げてくれた。
それでも僕らは2人だったと思う。
兄は世界を広げてはいたが、それでも深くは広げていなかったように思う。
僕の方は言うまでもなく。
研究のために必要ならば愛想笑いでもなんでもしてやるが、それ以上は無駄だと思っていた。
否、今でも思っている。
そんな僕が、研究を一時止めてまでその温もりを感じていたいと思うなど、まったく想像もしなかった。
朝ご飯用意しようか?
早摘みのダージリンもあるんだよ。
そんな麻衣の声が聞こえる。
寝るの?
くすくすと笑いながら僕の髪を撫でる手。
「もう少し、このままで」
抱き締める腕をそのままに囁けば、綴じた瞼の先で麻衣が笑ったのが見えた気がした。
恋したくなるお題( http://members2.jcom.home.ne.jp/seiku-hinata/)
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