*藤袴 -thoroughwort-*
☆次回イベント予定☆ ★2017.8.20.SCC関西23 ふじおりさくら(ゴーストハント)★
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恋したくなるお題(配布)より「一目惚れの恋のお題」
コンコンコン。
書斎の前、いつもはしないノックをしてみたら、返事が返ってきてビックリした。
絶対気付かないと思ってたから、扉の前で動きが止まってしまった。
「麻衣?」
「……お茶、飲む?」
訝むナルの声に、ようやくドアの隙間から顔半分覗かせたあたしは、少し躊躇いながら訊ねる。
普段はこんな事聞いたりしない。
というか、聞かずにお茶を淹れて一緒に飲もうと居座る。
チラリと向けられた視線には、訝む色が滲み出ていて、ドクリと心臓が弾む。
「今日は暑いし、アイスティーにしようかなーとか思ったんだけど、ナルは熱い方が良いのかなーとか思ってね!………い、要らなかったら」
「麻衣」
「……な、なに?」
視線を彷徨わせながら言い訳するあたしは、酷く滑稽で、なんだか泣きたくなる。
音のない時間が、とても長く感じた。
「お茶。僕の分はホットで」
ようやく返った答えに、あたしは猛ダッシュでキッチンへ逃げた。
絶対変に思われた。
ううううう、でもさ。
今日の日付か変わる時、一緒に居たいなーとか思っちゃったんだもん。
ナルが覚えてる訳ないから、せめて誕生日を迎えたその瞬間に隣りに居てくれたらなーって……。
今、すっごく忙しいのは知ってるから、邪魔はしたくない。
そーっとそれとなく、気付かれない様にって挑んだのに、大失態だ。
紅茶の抽出時間、自己嫌悪で蹲ってたあたし。
ぐるぐる考えてたから、まさか見られてたなんて思わなかった。
「麻衣」
呆れを含んだ声に、あたしは飛び上がった。
「にゃ、にゃる!?」
「………人の名前を勝手に変えるな」
一人であわあわしている、あたしを後目に、ナルが近付いてくる。
そして、用意途中のポットに手を伸ばした。
「……あたしが淹れてたんだけど」
「このままだと、不味い紅茶を出されそうだったもので」
ナルの言葉にあたしは詰まる。
確かに、ナルの言う通りで、カップに注がれるお茶はいつもより濃い。
あうあうあう。
再び自己嫌悪に陥りそうだったあたしの前に、カップが一つ差出される。
「?」
首を傾けながら受け取れば、ふわりと漂う甘い香り。
あれ?注がれた紅茶の色に、瞬けば「飲めば」と声が掛かる。
素っ気ない声に導かれるように、こくり一口飲み干せば、広がるのはミルクと蜂蜜の甘味。
「おいしい」
「当然だ。僕が淹れたんだからな」
ぽつりと呟けば、返る不遜な言葉。
その、らしさにあたしの肩から力が抜けた。
「ようやく笑ったな」
「え?」
「お前は、言いたい事を我慢すると行動も顔も不自然に歪む。どうせバレるんだから、最初から言えば良い」
「…………」
「正直なのが唯一の取り柄だろう」
「……ひどい」
「事実だ」
うぬぬぬと唸っていたら、パコンっと軽い物で頭を叩かれた。
痛い。非難の目で見上げれば、目の前に迫る黒。
唇に触れた温かく、柔らかな感触に固まった麻衣が意識を取り戻した時には、ナルは既にキッチンの扉の前だった。
「Happy birthday Mai. You mean the long for me. 」
扉を閉める瞬間、言葉と共に向けられた、ナルらしい笑みに、麻衣は真っ赤になった。
しばらく放心していた麻衣は、ふと自らの手の中に残された小さな箱を見る。
素っ気ないその箱だけが、先ほどの光景が夢でなかった事を教えてくれた。
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