*藤袴 -thoroughwort-*
☆次回イベント予定☆ ★2017.8.20.SCC関西23 ふじおりさくら(ゴーストハント)★
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「なぁ」
「何だね?」
「.........なぁってば」
「だから何だね?」
パラリ、パラリと捲られる書類の音が響く室内で会話とも言えないようなやり取りが行われている。
既に数回繰り返されたその会話はエドワードの機嫌を悪くするに十分だった。
自宅に書類を持ち帰らねばならぬ程に忙しいことは知っていた。
立続けに起こったテロでずっと司令部に詰めていて家にも一週間以上帰れていないと聞いたのが今朝のこと。
それでも恋人である自分と共に居る時間を増やす為に自宅に仕事を持ち帰ることを条件に帰宅の許可を取り付けたことも知っている。
帰りの車の中でも、デリバリーした食事の最中も、書類を片手に持っていたのはそれほど早く終わらせたいからだ。
そして今も書斎ではなくリビングのテーブルで書類を見ているのだってエドワードが一人にならないようにと気遣ってのことだ。
それは知っているし理解もしている。
しかしだ、自宅に居るというに一向に自分に向けられる事のない瞳にエドワードはいい加減焦れていた。
勝手だという事も、我侭だという事も、全てを承知している。
イーストシティーに帰って来たのが数ヶ月振りなのは自分の生活の所為。
その間の連絡といえば月一回の定期報告の電話のみ。
もちろん軍の回線は盗聴の恐れがあるので迂闊な会話は憚られる。
しようと思えばできたロイの自宅への連絡をしなかったのはエドワードの選択だ。
だから自業自得。
そう理解しているからこそ今朝から何一つ文句を言う事なくロイの隣りで過ごしている。
あと数枚........いや十数枚の書類にサインし終わればロイの意識はエドワードに向くであろう。
でももういい加減無理だ。
その時、何かがエドワードの中で切れた。
「大佐」
聞こえないように小さくひそめた声でロイを呼び立ち上がるエドワード。
真剣に書類に向かっているロイは気付かない。
足音も気配も殺さずごく自然にエドワードはロイの側に寄ると両手を大きく振り上げた。
ばんっっっっっっ!!!!
突如上がった盛大な音と振動にロイは思わず身を引いた。
一体なにが.......と書類から少し視線をずらせば、そのすぐ横にあるのはエドワードの両手。
ゆっくりと顔を上げてゆけば無表情な恋人の顔。
しまった、放っておきすぎた。
そう理解したロイが万年筆を置き立ち上がろうとした瞬間、エドワードがロイの胸ぐらを攫むと勢い良く引寄せた。
「いい加減、俺を見ろ」
ガンっと睨み付けながらそういうと目を見開いたまま驚きで固まっている男をもう一度引寄せた。
「驚いたな............でもたまには良いかもしれないな」
「何が?」
有に数十秒は呆然と固まっていたロイがようやく絞り出したのはそんな言葉だった。
ロイを驚かせて少し機嫌の良くなったエドワードがそれに首を傾ける。
「こんな風に君が私を求めてくれるというならば少しくらい仕事が忙しくても良いかなと」
「..................俺はヤダ」
再びムッとした表情になったエドワードに笑って今度はロイがゆくりと身を屈めた。
やっぱりたまには良いなと心の中で思いながら.......
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