*藤袴 -thoroughwort-*
☆次回イベント予定☆ ★2017.8.20.SCC関西23 ふじおりさくら(ゴーストハント)★
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そんな事は昔っから日常茶飯事だった。戦争での英雄はそれだけ沢山の人を殺したという事なのだから。
だから人から怨まれる事も憎まれる事も恐れられる事も慣れたものだった。
君はそんなモノに慣れるなと怒ったけど................あぁ......いま、無性に君に逢いたいかもしれない。
いつもの如くバターンっと勢い良く開けられた執務室の扉。
よー無能大佐ちゃんと仕事してっかー?と上官を上官とも思わない暴言を投げつける見慣れた子供の姿。
対する大人気無い大人は大きな執務机に陣取って皮肉な笑みと言葉を返し14も歳の離れた少年と同レベルの口喧嘩を繰り広げる。
それがいつもの東方司令部の風景だ。しかし今日はその光景を目にする事はなかった。
元よりその部屋にはロイ・マスタング大佐しか居なかった事もあるが、蝶番が軋む程の勢いで扉を開けた子供.......
否、エドワードがロイの顔を見た瞬間、投げかける予定の言葉を呑み込んだのだ。
いつに無いエドワードの様子に「鋼の?」と呼び掛けると同時にロイは不思議そうに首を傾けた。
ロイのその態度に瞳を鋭く細めたエドワードは次の瞬間「はぁ....」と小さく溜め息を吐いた。
「久々に逢った恋人の顔を見た第一声が溜め息とは相変わらず君はつれないね」
少しの本気と皮肉を篭めたロイの言葉にもエドワードは構わず、後ろ手に扉を閉めると顰めっ面のまま足を進めた。
目の前の男が発する目に見えない細い緊張の糸を切らないようにエドワードはゆっくりと近づくとロイの前で足を止めた。
「アンタさ自分の顔、鏡で見て来いよ。ひっでぇ顔してんぜ?」
「君は人の顔を見るなり酷いな。これでも街のお嬢さん方には素敵と頬を染められる顔なんだがね?」
「ふん、俺にそんな取って付けたような変な顔が通じると思ってんのか?笑いたくない時に笑うなって言ったのはアンタだだろ?それに、俺の前で取り繕うなんて許さねぇ」
視線を逸らす事なく断言された言葉にロイは僅かに目を見張った。
そしていつもと変わらないように見せかけていた笑顔という名の仮面を降ろした。
「...............驚いたな。中尉や少尉たちですら気付かなかったのに」
「違うだろ」
「.......あぁ、そうだな。彼らはきっと気付かないフリをしてくれていたのだろうな」
部下に気ぃ使わしてるようじゃぁまだまだだな大佐殿?とエドワードが言えば、なぁに部下が気を使ってくれる位に慕われているという事さとロイが返す。
いつもの軽口。しかしロイの心にいつものような余裕は感じられなかった。
この僅かな会話で恋人の精神状態を正確に見て取ったエドワードはくるりと踵を返すと勢いよくソファーに座った。
そしてぽふぽふと自分の隣りを叩きながらロイを呼んだ。
「.........アンタもう喋んなくて良いからこっち来いよ」
「はがねの?」
「いいから黙ってこっちに来やがれ無能」
優しいとは言い難いエドワードの呼び掛けだが、その有無を言わせない声に導かれるようにロイは立ち上がった。
コツ......コツ......とゆっくりとした足取りでソファーに座るエドワードの前に立ったロイの指先が、まるで許しを請うかのように
エドワードの頬に向かって伸ばされた。
「鋼の」という吐息のような呼び掛けと同時に頬に触れる指先は冷たく優しい。
何を隠そうエドワードはこの手が結構好きだった。
決してキレイだとは言い難い手だと知っている。
いつだったか目の前の男は「血に染まった手だ」と自嘲気味に評していた。
それでも自分を深い闇の中から引き上げてくれた力強い手だ。
希望という名の光を与え、時に厳しく、時に優しく差し伸べてくれる掛け替えの無い手だ。
確かに沢山の血に染まっているかもしれない、でもそれ以上に誰かを守って救ってきた手だと思う。
そんな事を考えている内にロイの瞳に変化が現れた。最初に見えた全てを拒絶するかのような色はもう感じられない。
やがて感触を確かめるように触れていた指先が滑り、掌が頬全体を覆う様に当てられる。
冷えきっていた大きな手にエドワードの体温が移り温まった頃、全てを吐き出すかのような吐息が零れた。
それまで黙ってロイを見ていたエドワードは再び自分の隣りをぽふぽふと叩いた。
つまり、隣りに座れと。
ドサリとソファーに腰を降ろしたロイは背凭れに頭を預け静かに瞳を閉じた。
そしてもう一度深く息を吐いたロイの頭を包み込むようにエドワードの腕が回された。
「俺はいつもアンタの側に居てやれるわけじゃないけどさ、近くに居る時くらい支えさせろよ」
「.................君は、たまにイヤになるくらい格好良いね」
「当たり前だ。俺を誰だと思ってやがる」
膝に乗上げたような体勢のままふんぞり返って宣言するエドワードにロイが少しだけ笑った。
それは作られたものでも皮肉を篭めたものでもなく、ただ思わず浮かんだ穏やかな笑みだった。
普段はまったくつれない癖に、こんな時だけ優しいなんてズルイじゃないか。
これ以上惚れたら一体どうしてくれるんだ。
ロイはそんな恨み言を呟きながら、どうやら今日はめいいっぱい甘やかしてくれるらしい恋人の肩口に顔を埋めその小さな身体を両手で抱き締めた。
もう大丈夫だと笑えた。
この稀有な黄金が腕の中にある限り、私が光を見失う事はないのだから。
end
ねこめ様、お誕生日おめでとうございます★
いつも素敵で可愛いイラストに癒され、キュン死にしそうになってますvvv
ささやかながらお誕生日のお祝いを捧げさせて頂きます。お気に召して頂ければ幸いです。
糖質高めのロイエド...........あま、い....でしょうか?
エドさんが男前で格好良すぎた所為であんまり甘くない気も........すいません。
返品可ですのでもっと甘いのが良いわって事があれば遠慮なくどうぞ☆
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