*藤袴 -thoroughwort-*
☆次回イベント予定☆ ★2017.8.20.SCC関西23 ふじおりさくら(ゴーストハント)★
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どうしてボクはここにいるんだろう?
あたたかいベッド
キレイにそうじされセイリされたへや
ボクを “ナル” とよんで、はなしかけ、わらうヒトたち
そしてためらいもなく、ボクにふれるヒト
どれもボクのキオクにはない
ジーン
なんかい呼びかけてもヘンジはなかった
まえに、いちどだけジーンのことをきいてみたことがある
そうしたらマイが泣きそうなカオをするから、それいじょうきけなかった
タブンそういうことなんだとボクはリカイした
「ナル?」
月明かりだけが照らす薄暗い闇の中、ベッドに腰掛け窓の外を眺める子供が居た。
突然5歳まで小さくなってしまったナル。
その横顔がとても5歳には見えなくて、急に襲われた不安に何も考えず名前を呼んだ。
「マイ?」
瞬きをして振り返ったナルは、麻衣を見て首を傾げた。
背後から漏れる人工の明かりが麻衣の表情を隠してはいるが、笑ってはいない。
「どうかしたのか?」
「なんでもないよ。紅茶淹れたんだけど飲む?」
ナルの言葉に、ようやく麻衣は反応し首を横に振った。
ベッドサイドのテーブルにトレイを置き、床に座り込む麻衣。
その表情にいつもの笑顔は無い。
カップを受取りながらナルはそんな麻衣を観察していた。
「....月を、見てたの?」
「べつに」
「そう」
ぽつり小さく零された麻衣の疑問。
返った答えに短く頷き、今度は麻衣が窓の外に浮かぶ月を見る。
「...........帰りたい?」
麻衣は “どこに” とは言わなかったしナルも訊かなかった。
ただその顔に浮かぶのは悲しみ....否、寂しさだろうか?
「ボクはここにいる」
ナルの言葉に麻衣が “はっ” とした様に振り返る。
かち合ったのは強い瞳。
「ボクはここにいる」
今度は、しっかりと麻衣と視線を合わせて言い切るナル。
麻衣の視界が一気に白くぼやける。
「うぅ...っ」
慌てて拭うが一度溢れそうになった涙は急には治まってはくれない。
カップを置きベッドから立ち上がったナルは、床に座り込む麻衣をその小さな胸に抱き締める。
「ぼくはだいじょうぶだ。泣くな、マイ」
ポンポンと宥めるように叩かれる頭。
「...っ、ご、め...ん」
「ボクは、たぶん知ってる.......なんで、いないのか」
静かに紡がれたナルの言葉に麻衣の身体が強張る。
それは、紛れもない肯定の証。
「....な....る」
呆然と顔を上げる麻衣にさらにナルは言葉を重ねる。
「サミシイのか? ときかれてもワカラナイとしか言えない。いつもトナリにいることがアタリマエだったから...」
「な..んで、判っ....たの?」
「なんど呼びかけてもヘンジがない」
その言葉に、果てしない後悔が麻衣の胸に渦巻く。
言えなくて...言えなくて...どうしても言えなくて、誤摩化した。
それはエゴだ。ナルが悲しむなんて理由は麻衣が勝手に作り上げたエゴだ。
周りに訊けなかったナルは自ら確かめてしまった。
否、確かめさせてしまった。
ゴメンナサイ
新たな涙が麻衣の瞳から流れ出す。
ゴメンナサイ
ゴメンナサイ
ゴメンナサイ
もうその言葉しか麻衣の頭には浮かんで来ない。
そんな麻衣から身体を離したナルは、そっと肩に手を置く。
「マイ」
ナルが呼びかけると僅かに麻衣の顔が上向く。
「マイがそばにいてくれるんだろう?」
そう言ったナルは麻衣のオデコに “ちゅ” っと軽いキスを贈る。
「泣くな、マイ。ボクはここにいる」
end
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