*藤袴 -thoroughwort-*
☆次回イベント予定☆ ★2017.8.20.SCC関西23 ふじおりさくら(ゴーストハント)★
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恋したくなるお題(配布)より「狂気の恋」
「お疲れなんですから、今日はもうお休み下さい」
少し強めの声が部屋に響く。
それは自分の身体を思えばこその言葉だが、土方はそれを受け入れる訳にはいかない。
「この書が終わったら休むと言っている」
「それは先ほどの山を片付けられた時にお聞きしました」
「休まないとは言っていない。終われば寝るから、お前は先に休め」
「嫌です!」
どちらも譲らぬ言い合いは、空気に緊張を孕む。
「同じことを仰った昨日、土方さんは寝ておられませんでした」
「それは………今日は必ず休む」
千鶴の言い分に、見に覚えがあった土方は一瞬答えに詰まった。
「信じられません。そんなに眠らぬと仰るのでしたら、私にも考えがあります」
もう何度したか分からぬ会話に、業を煮やした千鶴は、土方を睨み付けると、その身を渾身の力で押し倒し、その身体に乗上げた。
突然のことに土方は目を見開いた。
所詮男と女。
普段の千鶴の腕力では土方には叶わないことは分かっていた。
しかし、今日こそは必ずと誓っていた千鶴は、躊躇うことなく鬼の力を解放したのであった。
膝に乗上げられたため後方に傾いた身体を腕1本で支え、目の前の身体を退けようと肩を押し返す。
しかし鬼の血が色濃く出ている千鶴は、男の力でも簡単には押し返せなかった。
そんな土方の抵抗を見、千鶴は唇を合わせたまま薄く笑う。
普段の姿から想像も付かない女の笑みを浮かべた千鶴に、土方の抵抗の腕が緩んだ。
それに笑みを深めた千鶴は、僅かに唇を放した。
小さく漏れた息はどちらの物か。
男である自分とは違うか、さついた唇を潤すように舐めた千鶴は、薄く開いた唇の間から舌を滑り込ませる。
割り込まされた小さな舌はゆっくり、しかし確実に土方の舌を搦め取る。
目を開ける事さえできず、小性であり女である千鶴に翻弄される土方。
情けないと心の内で叱咤するも、身体は言う事を聞かない。
ようやく唇を離された時には、僅かに息が上がっていた。
ほっとしたのも束の間、千鶴は濡れた唇を土方の首筋に埋めた。
「ち、づるっ!」
やっと絞り出した声は、部下に聞かせられない程掠れていた。
「眠れぬと仰るのならば……お手伝いさせて頂きますが?」
対する千鶴は落着いた声音で土方に訊ねる。
「手……伝い?」
聞いてはならぬとは思えど、知らぬままには返事はできない。
小さく訊ね返せば、艶やかな笑みが返される。
そして小さな手が置かれた場所に、土方は目を剥いた。
「なっ!」
目の前の男の驚愕を判っているであろうに、千鶴は何も言う事なくゆるりと手を動かし始めた。
つづきません(笑)
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【お題配布元:VOID 様】URL : http://theme.milt.nobody.jp/index.html
「泣くな千鶴」
吐息のような声が千鶴の人耳を打つ。
舞い散る桜の花びらの下、白無垢に身を包んだ花嫁が静かに佇む。
つい先ほど祝言をあげたばかりだというのに、夫となる男は少し悲しそうな瞳で己の花嫁を見つめていた。
「泣くな千鶴」
繰り返される優しい声音に、懸命に息を整えようとする花嫁。
しかし、溢れ出た雫は視界を覆いつくし、彼の人がどんな表情をしているのかさえ分からない。
花嫁の頬に添えられた大きな手が、宥めるように動く。
その温もりに、その優しさに、千鶴はようやく真っ直ぐに前を見た。
「千鶴」
緩やかに細められた目が、深い愛情を伝える。
赤くなった目元を撫で身を屈めた土方は、そっと口付けを落とす。
「千鶴」
「……はい」
普段は気丈な千鶴の声が、震えている。
「すまん」
「いえ」
土方に言えるのは、その一言しかない。
握り締められた掌を、小さな千鶴の両の手が包み込む。
「わたし、雪村千鶴は………夫、土方歳三と出逢えて、しあわせです」
心からの言葉に、土方の方が揺れる。
「あいし、あい……される、ことが……で、きて………ほん…とうに、しあわせです」
涙を耐えられたのは、ほんの僅かな時だけであった。
切れ切れになりながらも、後悔などしていないと想いの丈を千鶴は伝える。
どうか最期までお傍に……。
声にすることのできなかった想いを、過たずに汲み取った土方は、ただ目の前の温もりを強く抱き締めた。
遠くない未来、自分は逝く。
愛した者を残し、愛した記憶を残し、愛した心を残し。
悔いが無いとは言えない。
ずっと共に居たかった。
もっと色んな事をしてやりたかった。
そしてずっと笑顔でいさせてやりたかった。
しかし、何度考えても、あの時これ以外の選択は有り得なかった。
新選組副長 土方歳三。
鬼と呼ばれし男の歩んだ道に、一切の後悔は無し。
「傷跡を自覚した朝」恋したくなるお題(配布)より「忘れられない君へのお題」
袴の紐をきつく締め、大きく息を吐き出す。
障子の向こう側から射込む光は、今日も良い天気だということを伝えてくる。
「今日の食事当番は斎藤さんだから先に洗濯をしてしまおう」
うんうんと、誰も見ていないのにも関わらず、態とらしく言葉を紡ぎ己に行動を促す。
そうでもしないと心が沈んで動けなくなってしまいそうなのだ。
先日、吉原見たあの光景が頭から離れない。
着飾り紅を差し、磨き上げたその美貌で男達を虜にする女たち。
他の誰の隣りにそんな女性が居ても何とも思わなかったのに、彼の人の隣りに居るのを見た瞬間、千鶴の胸に衝撃が走った。
男装して小性などをしている自分には到底敵わない。
そんな事が思い浮かんでしまった事が、千鶴を更に愕然とさせた。
まさか………
どれだけ自問しようとも答えは明白で、血の気が引いた。
もしも自分がこんな想いを抱いていることが知れたら、きっともうここにさえ居られない。
かの女性たちは、どれほど切望しても“ここ”には来られないのだ。
せめて、彼の人の記憶の片隅に残るような自分でありたい。
だから今日も、千鶴は己を偽って笑う。
愛しいと、大切だという想いが伝わらぬよう、全ての心を眠りに置いて。
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